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この作品は大好きで、何度も見ている。 オープニングから、川の流れ。ソラリスは、海だ。回想の故郷では、家の中でも水がしたたり落ちている。この監督は、理屈ではなく水があると落ち着くのだろう。 潜在意識が物質化するという原作者スタニスラフ・レムのアイディアは素晴らしい。特に、自分が惹かれるのは、死んだ妻が現れるというモチーフだ。ヒッチコックの「めまい」にも似た男の哀しい性がたまらない。 この作品は"映画"についての物語だ、という批評を読んだが、面白いと思った。ヒッチコックは、「裏窓」で、映画とは覗きだ、と描いていたが、ソラリスのスクリーンに映し出すのは、自分の心で、フィクションを現実といつのまにか混同している観客は、主人公というわけだ。 後年、スティーブン・ソダーバーグが、ジョージ・クルーニー主演でリメイクしているが、確かに主演男優は、ジョージ・クルーニーに似ている。 "罪悪感"がテーマだと思う。タルコフスキーは、SFをやりたいわけではなく、宇宙空間という特殊な場所で、人間心理を描き尽くしたかったのだと思う。 黒澤明監督は、この映画の撮影中モス・フィルムの招待で、偶然ソ連にいたらしい。 「(前略)私は、この作品を、夜遅く、モスクワの試写室で見たのだが、見ているうちに、地球へ早く帰りたい、という気持ちで胸苦しくなった。科学の進歩は、人間を一体どこへ連れて行ってしまうのだろう。その、空恐ろしい気持ちをこの映画は見事に掴んで見せている。(中略)タルコフスキーは難解だという人が多いが、私はそうは思わない。タルコフスキーの感性が並はずれて鋭いだけだ。(後略)」 — 黒澤明・1977年5月13日朝日新聞夕刊より 観る度に、違う発見がある、間違いなく名作だ。
水を美しく撮りたいので観始めた"水の魔術師"タルコフスキーの三作目。初見。モノクロ(一部カラー)。戦争映画の次は、壮大な歴史劇だった。 実在した画家の一代記。オープニングから、川と雨で始まり、ラストも雨の川と馬だった。川の流れは、葦の揺れで表現し、雨の降らし方は美しい。 内容は、"芸術家の使命"がテーマだと思われる。後半の鐘作りの指揮を取る若者に自分を投影していた。まだ若く自信もないのに、はったりでスタッフを怒鳴りつけ鐘を完成させると、地べたに倒れ込んでしまう。そして、鳴り響く鐘の音は、庶民の心に平安をもたらす。 新作を撮る前に、「七人の侍」と「雨月物語」を必ず観るというだけあって、タタール人の襲撃のシーンは、「七人の侍」の夜盗の村襲撃のシーンを彷彿とさせる。 イメージフォーラム1987・3月増刊 No.80 追悼・増補版「タルコフスキー、好きッ!」に、タルコフスキーのこんな文章を見つけました。 水— この地上でもっとも美しいもの「たしかに私の映画のなかには、たくさんの水が出て来ます。水や河や小川が、私に非常に多くのことを語りかけてくるのです。私はこういう水がたいへん好きです。(中略) ロシアでは、イタリアよりもはるかに多く、大量の水を見ることができます。私は水が物として好きなのです。なによりも水は、謎めいた物質です。御存知のように、水はH2Oという単純な分子ひとつで構成されています。しかしこのことでさえたいして重要ではありません。問題は水がとてもダイナミックだしいうことです。水は動きを、深さを、変化や色彩を、反映を伝えます。これは地上でもっとも美しいもののひとつです。水よりも美しいものは、存在しません。水のなかにその姿を映しだすことのなかった現象は、自然のなかにはひとつとして存在しません・・・おそらく、水を示すためにひとつの側面だけを取り出すことは、正しくないでしょう。私には水のない映画など、考えることができません。」 本当に水が好きなようだ。ロシアの大自然で育ったから、自然の中で人間を描くという視点を失わないのだろう。
タルコフスキーの「僕の村は戦場だった」(1962年)、初見。白黒映画。 戦争孤児の少年が、軍隊の偵察任務に協力する物語。長編第一作にしては、大作だ。 戦争映画が嫌いなせいもあるが、あまり心動かされなかった。 川、井戸、海など、水を使った演出では、水面に映る風景、水の反射する光が顔に当たるなどの方法を取っていた。 火、鏡、森なども良く使うようだ。 白樺の林のシーンが、素晴らしかった。
茅拭き屋根の民家を探して、津南町・秋山郷をロケハンして来た。 やはり、特別に保存してある資料館位しか残っていないようだ。人が住んでいる家は、ガラス窓や現代的な匂いがしている。当たり前の事だが。 秋山郷は、ロケ地としては素晴らしいところだったが、あまりにも山奥で、途中雪崩でガードレールが壊れた細い断崖絶壁の道を通らねばならず、冬期ロケ隊が入るにはかなり危険に思われた。