2014/03/06 22:56
今回の作品に大きな影響を受けた作品が、宮沢賢治の「虔十(けんじゅう)公園林」という短編です。
昔、ある村の農家に、いつも笑っている虔十という少し頭の弱い少年がいました。
虔十は、ある時、学校のそばの荒れ地に杉を植えたいと言い出します。両親は、初めての虔十のお願いなので、苗を買ってあげます。
村の人々は、あんな土地に杉が育つはずがない、と馬鹿にしますが、虔十は構わず毎日、水をやります。
杉の苗は少しだけ伸び、いつのまにか子供達の遊び場になりました。
やがて虔十はチブスで死んでしまいます。戦争が起こり、町は大きくなりましたが、学校のそばの林だけは子供達の遊び場になってます。
虔十が死んで二十年たってから、村から出てアメリカの教授になった博士が講演に来ました。そして、立派な杉林を見て、昔いた虔十のことを思い出します。
「ああ、全く誰が賢く、誰が賢くないかはわかりません」
博士の提案で、この林を「虔十公園林」と名付けて、保存することにします。村出身で偉くなった人から、たくさんのお金が集まり、虔十のうちの人たちは、喜んで泣きました。
それから、この公園林を訪れた人々に、本当の幸いが何だかを教えるのでした。
新潮文庫「銀河鉄道の夜」に収められています。短いので、是非一度、読んでみて下さい。