Open Data Structures 翻訳プロジェクトのクラウドファンディングから約1年半、 書籍「みんなのデータ構造」の販売開始から約半年が経ちます。このプロジェクトの目標は、コンピュータサイエンスの本格的な入門書を、読みやすい日本語で、かつ無料でアクセスできるようにすることでした。本プロジェクトでは、この目標のもと、以下のような成果を挙げてきました。1. 翻訳の成果物およびソースコードを無償で公開しました * 書籍を公開しているウェブサイトはこれまで10000回以上閲覧されています * プロジェクトの GitHub レポジトリは98のスターを集めています2. クラウドファンディングでご支援頂いたお金を使い、技術書専門の出版社ラムダノート社に校正・校閲を依頼し、その成果物もすべて無償で公開しました * 51名の方から、合計約53万円のご支援をいただきました * 校正・校閲の結果、原稿は300箇所以上改善されました3. 紙で読みたい人、お金を払っても商業水準の見栄えで読みたい人にもリーチできるよう、書籍「みんなのデータ構造」を販売しました * ラムダノートのウェブサイトや Amazon などのオンラインの販路だけでなく、池袋ジュンク堂書店などの実店舗や技術書店などのイベントでも販売していますさらにこの度、2/9, 10に開催される日本情報オリンピック本戦の参加者全員にみんなのデータ構造を献本することにしました。日本情報オリンピック本戦は、予選を通過した高校生以下(高専生や中学生なども含みます)の学生が、アルゴリズムの設計・実装を競う大会です。今年は90名が本戦参加の権利を獲得しています。国際情報オリンピック日本代表の選考会でもあり、今後の日本を牽引するソフトウェアエンジニアが多く参加しているはずです。(ちなみに私は情報のものには出たことはありませんが、化学のものに出たことがあります。)みんなのデータ構造の内容は大学生初年度向けですが、情報オリンピック本戦に参加する意欲と素養のある学生なら、きっと読み通して糧にできると思っています。本プロジェクトの本来の趣旨から考えても、将来有望な若い人達に書籍をぜひ読んでもらいたいということで、今回の献本を決めました。この献本の原資は、クラウドファンディングで集めたお金の余剰と、書籍の印税です。さらに、私が購入し献本する形になるため、訳者価格でより多くの本を贈ることができます。来年度以降も、資金が続く限り、情報オリンピック本戦参加者への献本を続けたいと考えています。クラウドファンディングでご支援頂いた方々、書籍を購入して頂いた方々、GitHub に issue や PR を送ってくださった方々に支えられ、原稿の完成から書籍の販売、今回の献本まで至ることが出来ました。重ねてお礼申し上げます。本プロジェクトを、例えば以下の方法で支援することができます:)1. GitHub レポジトリ にスターを付ける * 励みにしています:)2. https://github.com/spinute/ods や https://github.com/LambdaNote/errata-opendatastructures-1-1 に issue を送る * 誤植は修正し、改善案は順次取り込み、原稿に反映します。PR ももちろん歓迎します3. ラムダノートのウェブサイトなどから本を買う * 印税は来年度以降も情報オリンピック参加者への献本資金にします
本クラウドファンディングをご支援いただきました皆様に、プロジェクトの経過報告をさせていただきます。 完成予定日 今、最後の見直しをしている段階で、7月中旬には完成版の PDF ファイルをウェブサイトで公開できる予定です。 校正・校閲作業の依頼先 クラウドファンディング実施時点では校正・校閲の依頼先は未定でしたが、最終的にはラムダノート社にお願いしました。 ラムダノートは 2015 年創業の新進気鋭の技術書出版社です。例えば代表の鹿野さんがこれまで作ってきた本を見れば、多くの素晴らしい本を作り続けていることをおわかりいただけるのではないかと思います。LaTeX で書かれた理論的な内容も含むコンピュータ科学・プログラミングの原稿を編集してもらうにあたり、技術書を専門とするラムダノート社に依頼できたことは幸いでした。 また、成果物の形式や料金などを相談していくうちに、ラムダノートから紙媒体での出版の提案をいただきました。クラウドファンディング支援者のみなさまにとっても満足してもらえるはずの内容にまとまったため、Open Data Structures の翻訳書をラムダノートから出版することにしました。詳しくは以下で説明させていただきます。 書籍の出版について Open Data Structures を出版することにした動機を説明します。 1. PDF だけでなく紙でも読める選択肢があることで、より多くの読者に届く2. 書籍化に向けた編集作業を経て、成果物のクオリティが上がる3. 訳者の印税相当を本書普及のための原資に充てられる 1つ目の点について 書籍出版後も、プロジェクトの成果物はオープンソースで公開し続けます。ただし、書籍版にはラムダノート社の保有するソースコードを一部使っています。この部分はオープンソースでは公開しませんが、オープンな部分だけを使って英語版の原著と同様の見栄えの PDF ファイルを生成できます。 書籍版とウェブサイトで無償公開する PDF ファイルの主な違いは見栄えです。書籍用にフォントや組版を変えるだけで、読みやすさがこれほども違うのかと訳者一同感動しました。皆様にも、ぜひ見比べていただきたいと思っています。 2つめの点について 編集作業の見積もりをしていただくと、常識校正や原文を参照しての編集(数ヶ月程度の作業)を予算内でお願いできるとのことでした。しかし、ラムダノートの本として出版するということなら、それに加えて図やレイアウトの調整などの作業まで、ラムダノート社負担でやってくれるというご提案をいただきました。 そのため、無償で公開する PDF ファイルにも、合計で300箇所以上の変更が加えられ、予算内で最大限に成果物のクオリティを高められたと思っています。 3つめの点について ラムダノート社と相談し、訳者の印税相当を本書の普及のための原資として使うことを計画しています。具体的にどのような形でこの資金を使うかは検討中ですが、本プロジェクトの趣旨に沿う形になるよう、引き続き翻訳者一同真摯に取り組みます。 -- 以上の利点を踏まえて、ラムダノート社から紙媒体での書籍を発行するための準備も進めています。 重ね重ねになりますが、本プロジェクトをご支援いただいた皆様に厚くお礼申し上げます。