2020/10/15 18:00

アダチ版画研究所社長の中山周(なかやまめぐり)さんに、伝統の木版画による復刻浮世絵について伺いました。前回「其の一」の続きです。

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Q.アダチ版画研究所さんの浮世絵は、どのように復刻されるのですか?

まずは基本的に良いオリジナルに当たることです。

私どもの版木は、現存しているオリジナルのアウトラインを原稿にしています。昔は、ほとんどオリジナルを直接見ることができなかったので、苦労が多かったようですです。白黒の資料をもとにしたり、模写のプロに頼んだり。

今でこそインターネット上で色々な美術館の所蔵作品を簡単に見ることができますが、戦後しばらくまではほとんどが海外の販売用カタログなどを資料としていました。オリジナルを見るという機会が貴重だったと聞いています。ひとつでも多くの良質のオリジナルに当たれるかどうかが、再現の肝になるわけです。


Q.鮮やかな色はどのように再現されているのでしょう?

やはり複数のオリジナルを参考にして、絵師と版元の意向が反映されているといわれる初摺(しょずり)を想定し、その色を基本にするようにしています。長年多くのオリジナルに触れてきた安達がディレクターとしてこれと思う色を決めて、摺師(すりし)に指示をしています。

どんな再現をするかは、あくまで復刻する人の考え方によるのです。

私どもの復刻版は、売り物ですから、今のお客さんがどんな色味を好むのか、なども大切にしています。今現在は、初摺のように摺りたての鮮やかさを再現するよう目指していますが、時代によっては、あえてオリジナル風(古色風)にしたこともあったようです。


Q.本作にも登場する写楽の「宮城野」の特徴を教えてください。

東洲斎写楽「中山富三郎の宮城野」

「中山富三郎の宮城野」は版木3枚、9回摺りで、摺られています。やはり役者絵の性質上、摺り数は少ない方ですが、シンプルなだけに技術的に難しいこともありますね。

写楽の特徴は、記号化されているところです。目の描き方ひとつとっても簡略化されていますよね。他の人が描いた役者絵と並べると雰囲気は似ているけれども、役者さんの個性的なところを捉えて誇張して描いています。その点が魅力でもありますが、描かれたご本人は、気分はあまり良くなかったかもしれませんね。

そして、役者絵というのは人気の歌舞伎役者さんのブロマイド的役割がありますから、風刺的な写楽の絵は人気がなかったようです。好きな役者さんのブロマイドは、美しく描いたものであってほしいですからね。数もあまり残っていない、ということから見ても、当時それほどたくさんは摺られなかったということでしょう。

映画『宮城野』本編より(協力:アダチ版画研究所)


Q.復刻浮世絵の制作にはどのくらいの時間がかかかるのですか?

1枚の浮世絵が完成するまでは、一度に50枚とか100枚とか枚数にもよりますが、写楽ですと、だいたい4,5日かかります。職人さんの腕によるところもあるので、個人差はもちろんありますが。

和紙の中に水性の絵の具を馬連で摺り込むことで発色させるという点が、他の印刷と決定的に違うところですね。この木版独特の素材と技術で生まれた軽やかな鮮やかさが、明治以降西洋の人々を魅了したのではないでしょうか。

ショールームには伝統木版画の制作工程の展示も
さらに、オンラインで浮世絵を摺る様子を見られるチャンス!
★10/16(金)19時~ アダチ版画の職人による摺実演が生配信!
『浮世絵専門の太田記念美術館を巡り 葛飾北斎の作品を摺ってみる』
詳しくはこちらをご覧ください。

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今回、アダチ版画研究所さんを通じて浮世絵への理解が深まり、文化的な背景や伝統の技術を守り伝えていく価値や魅力を、さらに感じることができました。もっともっと奥が深いことも!

世界中のまだ浮世絵を知らない方にも、映画『宮城野』を通じて日本独自の伝統文化を知っていただくきっかけになって欲しい! とインターナショナル版制作への思いを新たにしました。


本プロジェクトのリターンのうち、復刻浮世絵が含まれるコースは以下4つです。
【I.「写楽の浮世絵ライト」コース】30,000円(額装なし)
【J.「写楽の浮世絵」コース】50,000円(特製奥付をつけたオリジナル額装で)
【K.「写楽の浮世絵プレミアム」コース】100,000円(特製奥付をつけたオリジナル額装で)
【L.「山﨑達璽プレミアム」コース】100,000円(特製奥付をつけたオリジナル額装で)

【K.「写楽の浮世絵プレミアム」コース】には、山﨑監督と一緒にアダチ版画研究所の目白ショールームを見学&茶話会で浮世絵談義をするスペシャルな機会もありますよ!


もっと知りたい方は……
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