数十年に一度と言われる大洪水がカンボジア各地で発生しています。9月末から立て続けにベトナムへ台風が上陸していて、その影響でカンボジアも大雨となりました。バッタンバン市内も浸水被害が出てテラ・ルネッサンスの事務所周辺も浸水しましたが、幸い、事務所の中までは水は入ってきませんでした。
↑浸水したプレア・プット村で水が引くのを待つ村人たち
タイ国境のカムリエン郡でも、ロカブッス村の村人たちから洪水被害が報告されました。タイで洪水対策で貯水用の門を開けて水を放流したために、カンボジアに向かって流れる川を通じて一気に大量の水が流入し、ロカブッス村で氾濫したのです。
10月9日の午前中に村を訪問したときにはまだ浸水被害は出ていませんでしたが、バッタンバン市内へ戻ってきた夕方に、副村長さんからその様子を撮った動画が送られてきました。
↑浸水によって作物の一部が枯れてしまったロカブッス村のモデル・ファーム
ロカブッス村の小学校前のファーマーズ・マーケットやモデル・ファームは、腰ぐらいまでの水が押し寄せ、村人たちもより被害の少ない村人たちの家へ避難しました。
次の週、村人たちへ電話して被害の状況を確認しました。幸い対象地域では人命への被害はありませんでしたが、鶏やキャッサバなどの作物が大きな被害にあっていました。モデル・ファームも、ヘチマや茄子、瓜などが被害に遭い、ファーマーズ・マーケットの前の土砂や砂利は流されてしまいました。
↑洪水の水の勢いでヤギ小屋は傾いたが、無事だったヤギの様子を見る村人
一方で、ヤギや牛、また鶏に比べて泳げるアヒルの被害は比較的少ない状況でした。換金作物であるキャッサバやトウモロコシは壊滅的な被害を受け、単一の換金作物の栽培だけに依存することの危険性を、村人たちもようやく気づき始めたようです。すでに、買取価格の下落や今年初めの水不足などの問題で多額の借金を抱えた村人たちがいるなかで、今回の洪水はとどめを刺したようです。
また、現地政府からお米の配布などの緊急支援がありましたが、支援が届いておらず、食べるお米も仕事もない世帯へは、テラルネから支援をしました。
↑洪水で浸水してしまったキャッサバ畑
これまで、新型コロナウイルスの発生前から、タイへの出稼ぎや日雇い労働以外の、村のなかで収入が得られる方法を考えてきました。それが農地を持たない貧困層でもできる家畜の飼育で、複数の収入源を得ることでした。そしてこの洪水によって成果を見ることが出来ました。村人たちからも洪水の後に相次いで家畜銀行からの家畜の貸し出しのリクエストがありました。
換金作物が悪いわけではありませんが、換金作物だけに依存することは、非常にリスクがあります。また、出稼ぎや日雇い労働の仕事もコロナ禍では難しいです。一方で、家畜の値段(豚、ヤギ、鶏など)は上がっておりいい収入になるだけでなく、もし売れなかった場合でも、自分たちで食べて支出を減らすこともできます。食べることは生きていくために不可欠であり、どちらの場合でもメリットがあります。
2016年から家畜銀行(豚、やぎ、アヒル、鶏、牛)を開始し、カムリエン郡全体ではこれまでに178世帯(地雷被害者などの障害者世帯、貧困層世帯)に家畜を貸し出し、これによる収入は合計539万円以上になっています。
(報告:江角泰)