支援者の数がみごとなぐらい少ないため考えたあげくのトリッキーなタイトルですが、本当の話なので紹介させてください。新型こけしにさらに興味を持っていただけると幸いです。全日本こけしコンクール五十年誌(宮城県白石市)「全日本こけしコンクールのあゆみ~ほほえみの年輪をかさねて五十年~」が出典元で、その要旨を述べます。伝統こけしは、江戸時代末期の19世紀に東北各地で生産されるようになった木地人形のことで、産地ごとに特徴のある様式が確立していった。ひらがなで「こけし」との名称に統一されたのは昭和15年のこと。それまでは産地によって独自の呼び方があった。こげす・きぼこ・きぼっこ・でくのぼう、など。このときは「伝統」の呼称はまだ使われておらず、戦後の昭和20年代に新型こけしが出現したときに新型と区別するため「旧型こけし」と呼ばれた。当時、旧型こけしは作ってもほとんど売れないため、弥治郎や遠刈田など伝統系の木地挽たちの多くは新型こけしの白生地を白石の業者に納入する状態が続いていた。こんな話も。白石町(現在の白石市)では、昭和16年ごろから八城鉄園が制作したこけしは、新型・旧型の区別がされる以前の時代のこけしであったため「鉄園型」と言われる独自の位置づけがなされた。さらに、鉄園型こけしは昭和31年の年賀お年玉5円切手にこけし切手として採用されるなど、全日本こけしコンクール開催への熱気がみなぎっていた。写真は2代目鉄園と称した浜津千代子工人の作品で、なぜか我が家にあるこけし。切手の写真は日本郵便趣味協会のホームページから引用しました。1956年は私の生まれた年でもありご縁を感じています。ついに昭和34年に、全日本こけしコンクール第1回は白石市内のこけし業者と役員が全面的に協力して企画し運営に当たることで実現した。当初このコンクールは白石の新型こけし業を新興させ、その普及を主な目的として開催されたのである。このときは新型こけしが主流で出品作品はほとんどが新型こけしであった。旧型こけしはまだ顧みられることもなかったので、旧型こけし工人は世相を反映させた流行の名を付け、新型こけしとして出品していた。そしていよいよ昭和36年第3回のときに次の3部種が創設された。第1部:伝統こけし(旧型こけし)第2部:新型こけし(市場価値のあるもの)第3部:創作こけし(芸術的価値のある一品制作もの)このときに41人の旧型こけし工人を無審査級扱いすることが決定され、「伝統こけし」の普及・発達・保護に尽くすことが宣言されて、伝統こけしの出展数が増加し、その後の伝統こけしブームが到来する契機となった。その後も旧型こけしの名称は並行してしばらく使われていたが、伝統こけしのブームが続いたことから、第23回の昭和56年に「伝統こけし」の名称にすべて変わったのである。さらには、伝統的工芸品として宮城県の「宮城伝統こけし」が経済産業省から認定されたのは昭和56年6月22日のことである。さて、このように「伝統こけし」は「新型こけし」の後追いで生まれ定着した呼び名であることをお分かりいただけましたでしょうか。「新型こけし」があったから「伝統こけし」が着目されたのではないかと考えるようになり、「新型こけし」は「伝統こけし」の立役者であったと思う次第です。であればこそ、今の時代にもう一度「新型こけし」を磨き輝かせ、「伝統こけし」と共に継続させていきたいと強く願う次第です。オリジナル新作こけしは完成度をあげて仕上がってきています。この制作をお願いしています佐々木こけし工房の新型こけしの歴史については次回の活動報告で紹介したいと思います。
リターンの新作こけし3種類が登場するまでのストーリーを紹介します。~~~ キャッツこけからのインスパイア ~~~キャッツこけしをよくよく見ていて気付いたのは、伝統こけしをリスペクトしながらオリジナルを追及して造ったところが随所にあるということです。この写真のキャッツこけしのモデルとなった猫の名前はマンカストラップです。特徴をひとつひとつ見ていきましょう。・胴体薄墨の模様が体全体に施されています。それも一様に塗らずに濃淡をつけ変化をもたせることでミュージカル『キャッツ』の衣装を表現しているところが秀逸です。この薄墨模様は偶然性をもって描くことができるので何体も作らないと再現できないのだそうです。なので新作こけしでは木材の自然な模様を活かしてみることにしました。・形伝統こけしの鳴子こけしの形をモチーフにして首回りや胴体の形状を削り出していますが、特に裾の部分は過剰と思われるぐらいに広げていることでミュージカル『キャッツ』の躍動感が醸し出されています。この安定感は特徴として残したいと思いました。・顔の表情ミュージカル『キャッツ』の役者さんのメイクを忠実に再現しています。特に大きな耳やかつら部分は『キャッツ』のイメージそのままであり、観劇された方はよくお分かりかと思います。このリアリティさは保ちたいと考えました。・彩色マンカストラップがどの猫になるのか推測すると、ミュージカル『キャッツ』で演じられている役割や衣装からアメリカンショートヘアーではないかと思います。このこけしでは黒一色にして鳴子こけしの花柄模様を施すことで気品を持たせていると感じました。そして日本猫の中でその性格に合うのは同系色の猫だろうと結論づけたのです。このようにして最初の試作品はサバトラから始めることにしました。~~~ Catsストーリー(原作T.S.エリオット他)からのインスパイア ~~~ Catsについてよく知りたいと思い次の3冊の本を読みました。「キャッツ ポッサムおじさんの猫とつきあう方法」 「キャッツ ポッサムおじさんの実用猫百科」 「猫たちの舞踏会(エリオットとミュージカルキャッツ)」マンカストラップの役割や性格を詳しく書いているのはミュージカルCatsの解説をしている「猫たちの舞踏会」です。とても参考になりました。そして、どの本も猫の性格や行動について興味深く描かれていますが、特に原作が子供向けに書かれていたことを知るにいたり、オリジナル新作こけしは子供の手にも馴染むサイズにして、いつでも遊んでもらえるようにしたいと思いました。さらには、猫の性格は毛並みの種類によって違っていることを知るようになり、「サバトラ」以外の日本猫のこけしも作ろうと思い「チャトラ」と「キジトラ」にチャレンジすることにしたのです。「チャトラ」は甘えん坊さん、「キジトラ」はツンデレさん、そして、「サバトラ」は正義派を、それぞれの個性としました。このオリジナル新作こけしはどこまで表現できているのか、その特徴や出来栄えについて引き続き活動報告をしていきたいと思っていますが、本当はぜひとも現物を見てもらいたいです。そしてどのように受け入れてもらえるか、お客様にお逢いして直接お話を聞かせて戴ける機会を設けますので、この後もお伝えしていければと考えております。
これまで多くの方々にご覧戴き嬉しいです。ですが、支援まではもう一歩届いていない感じがあり、おそらく支援金額が響いていないと思い、こけし工人の環境にご理解を戴ければ思い報告することにします。道の駅で売られている佐々木こけし工房の新型こけしの写真です(中央の赤いこけし) 値札が付いているので拡大して見えれば今回のクラウドファンディングと比較できると思います。でもこの価格が適正かどうかを判断されるのは、この先に書いた報告を読んでからにして戴きたいのです。私は社会人になってから、定年を迎えるまでの30年以上、ずっとほぼ毎日やってた業務があります。それは、製造にかかるお金、いわゆる製造原価の計算です。人件費や諸経費はもちろんのこと、材料は1銭単位から、設備は数十億単位まで扱いました。だから今ではいくらで造れるのか、大抵のものを推し量ることが出来ます。店頭で売られているこけしの値段はあまりにも安過ぎます。工芸品と言われるのに何故なのでしょうか。こけし、この歴史ある手工芸品にふさわしい価値を正しく知ってもらいたいです。ある有名な工人の次のような言葉から、こけしって1000円でもいいんじゃないのとは思わないで下さい。それは、「1日に造れるこけしの本数は50」と回答したことにあります。この言葉が一人歩きして問屋さんは一本500円で買おうとしているのではないかと考えられるのです。工人に詳しく話を聞きました。50は、朝6時から夜中24時までの18時間働いて可能な数でした。では、1日8時間働いて20ぐらいは出来るだろうというのも違っています。実はこの数が可能なのは、ロクロ作業は終わっていて、彩色と蝋を塗って頭と胴体を組み付けるだけの作業数だからです。こけし工人は、ロクロ作業の前に、木材の調達と乾燥、玉ドリ、荒削り、カンナ作り、轆䡎のメンテナンス、さらには、染料と筆の選択と調達の作業をしています。そして、注文を受けてからは梱包から発送までをこなしているのです。作業後の片付けも。一人で三役も四役も担当してると言えます。これに新作品の開発や、後継者の育成までやらなければ、こけし造りを続けることは叶いません。これらを正しく製造原価に反映するならば、こけしの適切な価格は3倍から4倍しても当たり前と言えるでしょう。こけし制作に敬意を込めて1本を1体と呼びたい、だからこそ1000円はせめて3000円であって欲しいのです。こけしを愛しているのであれば、将来も続けて欲しいと思うのであれば、それ相応の対価を払うべきであると考えるのが私の主張です。ほとんどの工人が副業しながらこけしを造るのが当たり前の環境になっている事をよくよく考えていただきたい。後継者の育成も公的な補助金有が前提となっている現実も知ってもらいたいです。(ご参考) 鳴子こけしの制作環境について・・・2003年の福島大学の論文より年間の販売額が1000万円を超えることができている大手の工房は温泉に直営店を持つ数件しかありません。最大でも2000万円のようです。おみやげとしては1000円~3000円程度が手頃であり、見込み生産の製品として在庫となる危険性が少なくなることもありこのサイズになっているようです。(著者注:これがすべてのこけしに適用されて現在も続けられているように思います)2000年は1991年と比較して客数が30%も減ってしまった。この危機感から地元では「こけしをただ物として買ってもらうだけでなく、その根底にある歴史や文化を理解したうえで買ってもらう」ことが必要、消費者が求めるストーリーを提供することが振興のために必要との結論になり、個別バラバラな対応では限界があることから産地内の結束を高める活動を始めようとなったのだそうです。
できたてのオリジナル新作こけし3体をメンバーにお披露目しました。初めに佐々木こけし工房に集まり制作状況を見てもらいました。そのあと弥治郎こけし村へ行き惟喬親王(これたかしんのう)神社をお参り。お昼はきちみ製麺の光庵で白石名物の温麺(うーめん)を食べて、大河原町の裏庭あとりえを訪問してÜ-OILを広葉樹林につかう良い方法を話し合いました。これまでにない塗料との組み合わせをどのように仕上げていけるか乞うご期待です。伝統こけしで主に使われている塗料は食紅などの染料なのですが、色の種類が少なく、退色が進みやすいなどの悩みがあるのだそうです。特に紫は消えていくのが早いので、明るい場所には置いておくことは推奨できません。佐々木功工人の新型こけしは別の塗料に換えて彩色されています。自分が自動車会社において技術者として経験したことのある色の選び方の難しさが思い出させれました。デザイナーが「カラスの濡れ羽のような光沢のある黒」を指定したことがありました。塗料メーカーは希望に合いそうな調合を試みますが、車体には鉄板もあれば樹脂も使われていています。さらには塗料を塗布する方向(横からか上からかなど)でも色見が微妙に変化をしてしまうので、均一性と再現性を保つのに工夫を重ね、妥協できるレベルまでもっていくのは大変な作業でした。今回のオリジナル新作こけしでもこれに似た過程を踏んでいます。まずはキャッツこけしの彩色で使われた「薄墨(うすずみ)」を試してみたのです。理想の色の濃さになるには何体も塗ってみなければなりませんでした。一品ものであればこれでも良いでしょうが、安定して量産するためには向きません。薄墨の品のある色を再現性よく表現するための手段として選んだのがÜ-OILです。この染料の良さは自然塗料であることです。功工人が何度も塗り方を工夫したことにより薄墨と同じように木目の模様(杢と呼びます)を鑑賞することが可能になりました。これまでは木肌が白いことで色見がよくなるため科学薬品で漂白されることも。しかしながら人体に良くないため使いたくはありません。木肌を守れて滑らかな感触も得られるÜ-OILの良さについてはこの後もお伝えしていければと考えております。