私たちが教育支援を行っていく上で大事にしていることは、「単なる物資支援に終わるのではなく、マインドセットを変えていくこと。その1つが「密猟をしないマインドセット」を育てることです。
では、なぜ彼らは今も「密猟」をしているのでしょうか。
現在私たちが支援を行っているニャンブリ村およびその周辺地域はセレンゲティ国立公園のとても近くに位置しています。そのため、動物たちが村を横切って大移動をする光景は日常のことであり、大前提として、彼らにとっては野生動物は珍しいものではなく、当たり前にある存在です。
そのような環境の中で、彼らはどの様に「密猟」を行うようになっていくのか。
初めは9歳~16歳ごろ。まずはウサギやガゼルなどの小さな動物を狩り始めるそうです。武器は使わず、犬を使って獲物が疲れるまで追いかけ捕まえます。そして、それらは家族の食料になるのです。
もう一段上の年代、17歳~大人に近づく年代になると、より大きな獲物を狙うようになります。というのも、今まで年上の青年たちや兄たちが狩りをしているのを見ているため、そのやり方を今度は自分たちもやってみたいと思うようになるのです。ヌーやトピ、ハートビースト、キリン、イランドなど、食肉用として、より大きな獲物を狙う兄たちの狩りに参加し始めます。
この時には犬ではなく、ワイヤーロープなどの武器を使うようになります。
大きな獲物の肉は乾燥させて村の人たちに売り、それがお金になるのです。
つまり、この頃から目的が商業目的に変わってきます。
そして、23歳になるころにはプロの密猟者となっていくそうです。こうなると、より高額で取引される希少動物の密猟に手を貸す人もでてきます。
「密猟」自体、決して許される行為ではありませんが、このようなプロセスを知ると、彼らにとっては幼いころから狩りが日常生活の一部にあることが分かります。
そのため、密猟をしている彼らの中に罪の意識はなく、むしろ誇りに感じていたり、地域社会の人々も村人に売る肉を持ち帰ってくる彼らを応援しているということも想像に難くありません。
また、生活のため・お金を得るための手段として密猟を選んでしまうこともあり得ることだと感じます。
「密猟」はやってはいけないことだと力で抑え込もうとしても、罪悪感もなく、生活のための手段となっている「密猟」をなくすことは難しいでしょう。
では、どうしたらなくせるのか。それに必要なのが教育だと私たちは考えています。幼いころから教育を受けることで視野が広がり、野生動物が私たちの世界にとっていかに大事かを知れば、やってはいけないことだと考えるようになるでしょう。
また、教育を受けることで様々なスキルを身に付ければ、将来の職業の選択肢の幅が広がり「密猟」以外の選択肢を選べるはずです。
そのための第一歩となるのが今回の教科書支援です。
本プロジェクトは現在、97名という多くの皆様に支援頂き、目標額の70%まで到達しています。本当にありがとうございます。
そして、まだまだ多くの支援を必要としています。引き続きご協力、よろしくお願いします。