私は美容師としての経験を活かし、闘病中の方へのアピアランスケアや介護の必要な方への訪問理美容を行ってきました。
病気の方や要介護状態の方と関わっていく中で見えてきたのは、当事者やそのまわりの方々が必要としているのは、治療の枠を超えた、もっと多面的なケアであるということ。
そして、実際にそうしたケアの担い手がいるにもかかわらず、当事者の方たちにはその情報が届いていないという現実でした。
実は、私自身もかつて生死の淵をさまよい、闘病を余儀なくされた経験があります。
意識を取り戻した後に待ち受けていたのは、今抱える痛みや辛さだけではなく、戸惑いや後悔、不安といった大きな心の揺らぎでした。
「死んじゃうかもしれない。怖い。」
「仕事は続けられるの…?」
「今までと同じように生活できるのかな…」
「治療は辛いだろうか…」
「まわりに迷惑をかけてしまう…」
ただでさえ身体が辛くて苦しい状況なのに、考えなければならないこと、対処しなくてはならない問題が一気に目の前に降ってきたんです。
その膨大さに、絶望的な気持ちになりました。
何より辛かったのは、自分の本音を誰にも言えなかったこと。
身近な人だからこそ、言えないこともある。お医者さんだからこそ、聞けないこともある。
誰にもいえずに気持ちを抱え続け、苦しくて孤独だったことを、今でも覚えています。
どうにか病気を克服した私は、「闘病の経験と美容師の経歴を生かし、美容を通して人を元気にできないか?」と考え、現在の仕事を始めることにしました。