革は千差万別、一つとして同じものがありません。革選びは本当に難しくて、革一枚選ぶのにも、かなりの時間がかかります。流行っているとか、有名だとかでは選ばず、必ず自分の目で確認して直接話を伺ったり(コロナ渦以前の話ですが)、やり取りをすることを重視しています。表面が硬くてゴツ過ぎる革や光をテカテカ反射するような革は避けました。品質・外観・素材感において、ニュートラルな感覚で使って頂ける革。そして使う人を目立たせるモノではなく、馴染むモノになるように、素材から徹底して選んでいます。
デザインや設計にあたり、大事にしたのはこの3つです。・あまり沢山の材料で構成しないこと。・部品の数は出来るだけ控え目にすること。・機能として必要な部分以外は、なるべく素材や材料に手を加えないこと。使い手の装いや雰囲気を妨げるような装飾性を無くすことで、バッグと使い手が接する境目が自然に馴染んでくるように心がけました。
「バッグの中身の視点から」書類をお渡したり、頂いたり。バッグに書類を出し入れする時は、A4クリアファイルだったり封筒とセットになっている事が多いと思います。更に、そのA4クリアファイルを封筒に入れる場合は角A4封筒に、冊子や枚数の多い印刷物や厚みのある物を封入する際は角2封筒に入れるそうです。ちなみにそれぞれのサイズは、、、・A4サイズの用紙⇒29.7×21cm・A4クリアファイル(日本の文具メーカー)のサイズ⇒30.7×22.0cm・角A4封筒のサイズ⇒22.8×31.2cm・角2封筒⇒24.0×33.2cmA4用紙を1枚でも、出し入れする場合はA4クリアファイルか角A4封筒に入れられていると思います。最低でもバッグの横幅は32cmは必要です。ただし、実際は冊子や枚数がある書類がけっこう多いと思います。そうなってくると角2封筒に入ってくるわけで、バッグの横幅は最低でも34cmになります。そして、最近増えてきたのがタブレットやパソコンの持ち出しです。私は15インチ以上のノートPCも持っているのですが、大きくて重たいので持ち運び用には使っておらず、もっぱら据置きとして使っています。重さの問題もあるので、モバイル用途としても使えるギリギリの上限が14インチサイズになると思います。ちなみに14インチパソコンの横幅が約32~33.5cmが多いようです。そうなると角2封筒と同じくらいの横幅が必要になってきます。現実的な書類やパソコンの取り回し、それにケースやカバー装着の可能性も考えると、ある程度の余裕が必要なので横幅は36cm以上にしようと考えました。「座って膝の上にバッグを置いた時の視点から」頻繁に座る幅が狭い椅子の代表と言えば電車やバスの座席ではないでしょうか。実はこういう公共の乗り物の一人分の座席幅って基準があるそうです。実は、43cmが多いらしいのです。「設計のための人体寸法データ集」(通商産業省生命工学工業技術研究所)によると、95%の男性の臀部の長さは37.7センチ以内に収まって、95%の女性の臀部の長さは39.9センチに収まる。つまり、シート幅は43センチあれば十分ということらしいです。現実は、混み合っている車内だと一人分で余裕を持っての43cm幅は難しそうですが、必要以上にバッグが大きいとやっぱり狭い公共の乗り物の中で、人に当たったり取り回しが良くなかったりします。そういったことから40cm以下にすることにしました。ということで、横幅は36~40cmになったのですが、横幅を長くするとバランスを取る為に縦幅を変更しなければならなくなります。そうすると、たった数cmでバッグが一回り大きくなってしまいます。バッグの存在感が大きくなると毎日使うのにバランスが悪くなってしまうのと、大きくなったぶん重くなってしまうので、必要十分なサイズを満たし、それでいて取り回しの良い慨寸36cmに決定しました!色々な方にとって使い回ししやすく仕上げましたので、是非使って頂きたいです!!
もちろん、様々なブランドが機能性に配慮したバッグを作っていますので、そういった機能面にも気を付けながら、私達はとことん毎日の使い回しにこだわりました。14インチまでのPCやA4の書類もすっぽり入りますが、アタッシュケースのように、かどばって、ごつく見えるようなことはありません。設計段階で、バッグとしての構造や作りを犠牲にすること無く、ソフトな雰囲気になるようにパターンを描きました。材料には、どのようなシーンにも対応できるように色味や光沢感・シボ目のナチュラルなイタリアのタンナーMASTROTTO社の牛革を使用。派手ではありませんが上品で落ち着いた表情に仕上がっています。またレザーそのものが、素材としての上質感を醸し出すのに加え、エイジングが可能な唯一無二の素材なので、ほんの少し簡単なメンテナンスをしてあげるだけで、長く使って頂けるのも大きな利点です。
ただでさえ荷物は持ちたくないのに重くてゴツイバッグ。機能性はあるけどビジネスシーンにはラフ過ぎるバッグ。仕事上がりからのレストランや習い事・お出迎えなどには使いづらいバッグ。ニューノーマルな生活や働き方が広まって、ある程度は自由な装いが認められるようになってはいるけれど、やっぱり身だしなみは気になるという人が多いと思います。だからといって、その都度に家に帰って服装に合わせて、荷物を入れ替えるのも非現実的です。そこで、きちんと見えるけど堅苦しくない、コーディネートや使うシーンを悩む必要がなく、どこへでも出かけられて、手軽に使える使い心地。そんな現代のライフスタイルにマッチするバッグこそ必要だと思いました。