2021/11/13 08:30

おはようございます。

「みらいの学校プロジェクト」の趣旨にご賛同、ご支援いただき、ありがとうございます。

日々学校問題について発信、情報収集、研究していると、本当にやらなければならない事はたくさんあると感じますが、一つづつ丁寧に取り上げて、声を上げ、諦めずに改善を求めていけば、必ず成果につながると感じています。


さて、先日、ランドセルの重荷問題について、「5キロのお米を手に持って帰る人いますか」とコメントをつけて以下の記事をSNSでシェアしたところ、多くの反響がありました。

【通学「肩もげそう」9キロのリュック、猫背や肩凝り…「置き勉」進まず、姿勢や成長へ心配の保護者】

記事冒頭は、小学校3年生の児童が、ランドセルの重荷が原因で肩を痛めて整骨院に通い、通院中は教科書等すべて学校に置かせてもらうが、治るとまた持ち帰りになり、治ってはまた痛めるの繰り返しだという話です。


ランドセルに教科書を入れると小学1年生で約5kg、それに水筒やリコーダーなど加わると、プラス500〜1kgになります。

アメリカの小児科学会やカイロプラクティック協会等の研究では、子どもの健康を損ねない重さとして「体重の10%」という数字が出されています。それ以上を超えないようにするべきであり、それを超えると、首や肩、腰の痛みを引き起こすなど、子どもの健康が損われると指摘しています。
予防医学や理学療法的にも、成長期は無理な負荷をかけないほうがいいというのが共通の見解です。

小学校1~3年生の平均体重は、20~25kg。
子どもの健康を損ねない重さは、2~2.5kgまでということになります。

子どもの文化に詳しい大正大学の白土健教授が、小学1~3年生の子どもたち20人が背負う実際のランドセルの重さを調べたところ、平均7.7kg。中には、重いランドセルの他に、3.6kgのサブバッグを手にする私立小学校2年生の女の子もいたそうです。(引用はこちら

2014年、カリフォルニア州では小学生向けのバックパックの重量を制限する法案を可決し、そのガイドラインでは、『子どもに体重の10%以上の重さのバックパックを持たせないようにする』としているそうです。


日本:  体重の50%近くの荷物を持ち、毎日徒歩で登下校
アメリカ:体重10%程度の荷物を持ち、通学は主にスクールバスか保護者の送迎


ランドセルがここまで重くなった理由は、教科書です。
2011年度から実施された「脱ゆとり教育」で学習指導要領が大きく改定されたことから、ページ数が増加、そしてより見やすく、わかりやすくする目的で大型化しました。

ランドセル・教科書重荷問題は2018年6月に国会でも取り上げられました。これだけ教科書が重量化しているにも関わらず、学校に教科書を置いて帰るいわゆる「置き勉」を長年の慣習で禁止する学校が多く、各学校の自主的な対応では限界があり、置き勉の容認について政府が統一的な指針を策定すべき、と指摘されました。

そして9月、文部科学省は各地の教育委員会などに「児童生徒の携行品に係る配慮について」という事務連絡を出し、国として正式に「置き勉」を容認しました。これにより、ランドセル重荷問題は解決し、子どもたちの身体への負担は解消されると期待されました。

ところが、その通知から3年以上たった現在、まだ半数近い学校は「置き勉」を認めていないという実態があるようです。

その理由↓

・次の日の学習を用意する習慣をつけるため(忘れ物をしない習慣づけ)
・自宅学習の習慣をつけるため
・荒れた学校などでの生活指導として
・教科書を置いて帰ることは良くないという昔からのイメージ
・盗難、いたずら防止のため
・置いておく場所がない、管理ができない など


成長期の子どもの身体への負担が懸念され、多くの子が肩や背中に痛みを感じ、整骨院に通う子もいる実態が分かっています。それでも、「上記理由のほうが優先されるべきであり、全教科書持ち帰り以外に方法はない」のでしょうか。

置き勉が認められないなら、ランドセルをもっと軽くする、運び方を工夫する、という対応方法も聞かれますが、「子どもの負担軽減のため国も認めている置き勉を、なぜ学校は認めないのか」という問題は重大です。
「文科省の通知を知らなかった」という教師もいるようです。児童生徒の健康に関わる通知が、一部では職員に通知されていない実態もあるようです。


そして先日、こんな言葉を初めて知りました。→「ランドセル症候群」

「ランドセル症候群」とは、自分の身体に合わない重さや大きさのランドセルを背負ったまま、長時間通学することによる心身の不調を表す言葉。小さな体で3キロ以上の重さがある通学カバンを背負って通学することによる筋肉痛や肩こり、腰痛などの身体異常だけではなく、通学自体が憂鬱に感じるなど気持ちの面にまで影響を及ぼす状態をいう。(引用元:深刻な小学生の「ランドセル症候群」重さで心身に不調 識者は「置き勉」を推奨、ダメならカバンに工夫を)

小学生だけではありません。中学生でも、毎日の教科書の持ち帰りに加えてお弁当や部活用具などもあり、身体的負担が心理的負担が変わり、不登校になったケースがあります。

置き勉禁止による重荷問題も、不登校の要因に・・・


5kgのお米を手に持って帰りますか?
社会人の通勤バッグは平均2~3kgで、小学1年生の荷物よりずっと軽いのです。


大人は、自分の裁量で、荷物が重くなれば取捨選択して軽くしたり、キャリーカートや車や配送を使ったりします。
大人が当然やっているそのような基本的な方法も、子どもたちは自由にできず、毎日背負わなければなりません。

身体の負担・故障だけではなく、登校することへの心理的負担も増す教科書重荷問題。
一番大切なのは「子どもたちの心身の健康」だということは確かなはずです。このことさえ押さえれば、この問題をはじめ、多くの学校問題が解決されるはずなのです。