こんにちは、PLANETS編集部の石堂実花です。
雑誌『モノノメ』の由来のひとつは「ものの目」です。その名のとおり、本誌の連載陣には「モノ」についてじっくりと語る対談や、編集部が注目したおいしいものについて書き下ろすエッセイなど、世界を別の視点で捉え直すことができるような、あるいはそのきっかけとなるようなコンテンツが揃っています。
今回ご紹介するのはそんな連載企画のひとつ「絵本のはなしはながくなる」です。この連載は「いろいろな人に、絵本を紹介してもらう」という、非常にシンプルな企画です。「絵本」というと子供向けの読みものという印象が強いかも知れませんが、大人になった今だからこそ、また新たな視点を得ることができる絵本もたくさんあります。前号では小説家・川上弘美さんに「不思議な日常に出会える絵本」2冊についてインタビューしました。まだ未読の方はぜひ読んでみてください!
2回目となる今回は、近藤那央さんに好きな絵本についてインタビューしました。
近藤那央さんは、現在シリコンバレーで活動しているロボットクリエイターです。主に「愛玩ロボット」、「コミュニケーションロボット」と言われる分野で、「いきものらしいロボット」をテーマに創作活動をしています。
▲ご自身の作品「ネオアニマ.にゅう!にゅう!にゅう!」と近藤さん
近藤さんがロボットクリエイターを志すきっかけは、9歳の頃までさかのぼります。子供の頃に亀と犬型ロボット「aibo」を飼っていた体験から、「なぜaiboよりも亀の方が愛おしいと思えるのだろう?」と疑問を抱き、「生き物らしさとはなにか」を追求しはじめるようになりました。工業高校3年生ではチーム「TRYBOTS」を結成、創作したペンギン型ロボット「もるぺん!」は、科学館やテック系のイベントにデモ出展を行い、多くのメディアで取り上げられました。
慶応大学入学後は、自らが創作する「いきものらしいロボット」を「ネオアニマ」と名付けた創作活動を開始。最初のネオアニマ「にゅう」は「いきものらしさ」を「呼吸」ととらえ、常に上下に動くことで、まるで生きているかのような、不思議な愛着の湧くロボットを創作しました。
作品のひとつ「ネオアニマ.にゅう!にゅう!にゅう!」では、それぞれ独自の動きをする「にゅう」を群で展示することで、ロボット同士の「社会性」をテーマに表現しています。ここまで多くのタオル的な物体がうねうねと動いているのはかなりシュールな光景で、クラゲを見ているような、なんともいえない気持ちになります。
このようにロボットクリエイターとして活躍するかたわら、アイドル活動をしていたりと多彩な活動をされていた近藤さんですが、2018年、結婚を機にアメリカ・シリコンバレーへと旅立ちました。PLANETSでは雑誌『PLANETS vol.10』で渡米直前の近藤さんにインタビューしました。また、このインタビューをきっかけに、webマガジン「Daily PLANETS」でも連載「ネオアニマ」をご担当いただき、ご自身のクリエイター活動の記録を綴ってもらっています。
▲『PLANETS vol.10』より
さて、今回はそんな近藤さんに好きな絵本について訊いてみたのですが、はじめにヒアリングした際にひときわ興味を惹かれたのが「なんか、おばけが水疱瘡になっちゃう絵本」。さっそく検索してたどり着いたのがこちらの絵本『おばけびょうきになる』でした。
この絵本、このように絵柄は大変可愛らしいのですが、読むとつぎつぎと繰り広げられる破天荒な展開に「そんな話になる!?」と驚くこと間違いなしの、少し変わった本です。
おばけなのに、なぜかびょうきになってしまう主人公。みんな笑っていてゆるい雰囲気なのに、なぜか薄暗い背景。ページをめくるたびにその独特のセンスにどっぷり浸ることのできる体験は、絵本ならではです。
近藤さんに選んでいただいたもう一冊は『ウアモウとふしぎのわくせい』です。
アーティスト・高木綾子氏がロンドンの大学に在学中に生み出した「ウアモウ」はフィギュア、絵本、アニメーションなど多岐にわたるメディアで制作・販売され、国内外で人気のあるキャラクターです。この絵本では、そんなウアモウが色鮮やかな「宇宙」へ飛び出すお話が描かれています。
インタビュー当日はAmazonで揃えたというこの2冊の絵本を手に、絵本と出会った子供の頃の思い出や現在のクリエイター活動に結びついている点などをじっくりと語っていただきました。彼女の独特の人柄とそのセンスの源を発見できるような、非常に面白いインタビューとなりました。絵本を先に読むもよし、インタビューを先に読むもよしです。ぜひ誌面でご確認ください。
余談ですが、筆者と近藤さんが初めて知り合ったのはおよそ7年前のこと。とある風呂場で(!)シャンプーで頭をもこもこにした近藤さんから「はじめましてだよね? わたし近藤!これからよろしくね!! 」とまぶしい笑顔で(もちろん裸で)挨拶され、圧倒されたのを覚えています。今回のインタビューでも時折「人間があまり好きじゃなくて、コミュ障なんだよね」というお話をされていましたが、「いや、そんなことはないでしょう!」というのが筆者の本音です。あの輝かしい笑顔でシリコンバレーで頑張っている彼女を、今後も陰ながら応援していきたいと思っています。
「モノノメ #2」のクラウドファンディングはこちらにて実施中です。
※昨夜、準備中の本記事を誤投稿してしまいました。メール通知を受け取られた方には、たいへん申し訳ございませんでした。改めて正式に投稿いたします。