こんにちは つむらです。
原始感覚クラファン最後の土日。満を持してメッセージいただきました。
代表杉原信幸さんです。
現在杉原さんはマレーシアに行っており今年の原始感覚美術祭には直接赴けないとのことですが、それができるほどに原始感覚美術祭自体に芯ができたのだと思います。
それではどうぞ
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NPO法人原始感覚舎代表の杉原信幸です。
わたしは長野市の母方の実家で生まれ、東京の阿佐ヶ谷で育ち、東京の暮らしになじめなかったために、夏休みに過ごす、父方の祖父が長野県大町市木崎湖畔に建てた合宿所クラブレイクサイドと、冬休みを過ごした祖母のやっていたスキー宿エーデルワイスの白馬の雪の森の記憶と母方の祖父が連れて行ってくれた道なき森の中の茸採りと根曲がり竹採りが、子どもの頃のリアルな記憶として残っています。
父が短大の教授を退職し、パプア・ニューギニアの食人族や台湾原住民の探検を行った食生態学者・探検家の西丸震哉さんの記念館をクラブレイクサイドの2棟のうち1棟を立て直し、始めるのに合わせ、その空間デザインを行いました。残った1棟をアトリエに改装し、大学院修了を気に、東京から長野に拠点を移し、まったくの手探りで友人の作家たちと2010年に「湖畔の原始感覚美術展」を開催してから、12年目の「信濃の国 原始感覚美術祭2021-水のたまゆら」を昨年行い、コロナ禍でありながら、コロナ禍に抑圧されたものを解き放つような素晴らしい干支巡りの12年間の中でも1,2の素晴らしい祭りになったと思います。
そして、13年目の今年は、文化庁の新進芸術家海外研修員に選ばれ、現在マレーシア、インドネシア、シンガポールに滞在して先住民のリサーチを行っています。本当は昨年の原始感覚美術祭が終わり次第の9月に、1年間の海外研修に出発し、一時帰国が認められないため、8月の原始感覚美術祭の本番には帰国する予定だったのですが、コロナ禍のため、国境が閉鎖され、今年の3月31日にようやく出発することができたので、オンラインでの作品発表を考えていますが、13年目の今年初めて原始感覚美術祭を始めたわたしが不在での開催となります。滞在作家として参加し、地元女性と結婚して大町に暮らしている淺井真至が今年のアーティスティックディレクターでの開催です。
原始感覚美術祭は、有料のパスポート制から伝統的な祭りの祝儀・ドネーションでの開催に切り替え、それまで、絵や彫刻を作っていた作家が自らの面を作り、即興の舞を行うことで、身体性を回復していくという原始感覚獅子舞が主軸となり、大町市の祭りの文化である山車を作家たちが自作し、木崎湖を一周するという儀式を行い、灯し続けた火を蓮の葉にのせて流すという水しずめの儀を行うことで、祭りが終わるという祭りの形が浮かび上がっています。毎年やったことないおもしろいことがやりたいという革新性と、これはまたやりたいという伝統性の軋みのなかで、わたしたちが都市生活で失ってしまった祭りの身体性を蘇らせている試みのように思います。それは都市の近代のアートが個というものに集約していったのとは逆の、土地に縛られないコミュニティによる祭りの再生という新たな形の試みであり、そこに集うすべての人が祭りをつくるメンバーであり、あらゆる形の表現者であることを思い出すことができる場を生み出すことという方向が見えてきています。集ったメンバーによって自由に祭りは、形を変え成長していく。そこには原始感覚という即興性だけがあり、応答する今によって、祭りは紡がれ、人は紡がれていきます。今、メンバーから村という言葉が出てきているのがおもしろいです。面が生まれて、舞が生まれて、祭りが生まれて、村が生まれる。わたしたちが失ってしまったものを遡るようにして蘇らせているようです。それは昨年から始まった香川、広島、青森、名古屋、静岡、京都で行われた原始感覚舎の巡業公演が、一座のような運動を生み出したようです。
予算に関してはわたしが助成金申請を毎年行ってきましたが、今回若手の3人の女性作家中心にクラウドファンディングを行い、予算を集めてくれています。これにはとても感謝しています。男性中心の権力がはびこる日本において命を育む女性が力をもって活躍する場というのも原始感覚美術祭の目指すところです。ぜひ、受け継ぐという伝統となるような新たな祭りの誕生を応援ください。よろしくお願いします。
文化庁新進芸術家海外研修員の先住民リサーチ
https://www.instagram.com/nobuyukisugihara/
青森-縄文巡礼
https://www.youtube.com/watch?v=jQ43e3eIv_w&t=635s
広島-One Dream
https://www.youtube.com/watch?v=r38T6_CY3GA
名古屋-ファン・デ・ナゴヤ
https://www.youtube.com/watch?v=ZRdHJfGtOUs&t=1649s
静岡-無人駅の芸術祭