(前回の記事 映画を撮るまでの道のり part2からの続き)
さあ、いよいよオーディションだ。オーディション開催日が近付くにつれて不安は募っていきました。「監督なんだから迷走したらだめだろう」「そもそも、選ぶなんてどんだけ偉いんだよ?」
そんなことを自問自答しながら、1つのヒントが浮かびあがりました。「そうだ、オーディション、ひいては僕が今回の現場で大切にしたいことに目を向ければいいんだ。」
そう考えると二つの大切にしたいことがわかってきました。
「自分自身含め、関わった人が楽しかったと思える」
「作品を通じて、テーマである家族ということについて向き合う覚悟のある人」
何事もそうかもしれませんが、多様な要素が物事を複雑にしている。自分なりの解に近いものは、意外とシンプルだったりしたりするのかもしれません。
二つの大切にしたいことを決めた僕は、オーディションの内容の一部にこんなものを入れました。
「家族との葛藤というテーマで、5分以上の独演(一人芝居)をしてください」
後々、キャストの方からは「あの宿題は非常に難しかった」というフィードバックを頂きましたが(笑)、このオーディションを実施することで、俳優さんが家族というものに対してどういう捉え方をされているのか、今までの経験から家族との葛藤というものが言葉や所作にどのように反映されているのか。
いざオーディションを開催すると非常に演技力の高い方もいらっしゃいました。一方で、演技力ではなく私が大切にしたい2つのことを本当に大切にされているか。私は、その視点を持って色々な方とオーディションという形を通じてご縁を頂きました。
そのような変遷を経て、今回の作品でご縁を頂いたのがご出演頂いた4人の俳優さんでした。俳優さんとの出会いというのは、言葉で表せない何か「直感的」なものと偶然によってもたらせるものだと感じたのです。
不思議なことですが、台本を書く中で主人公はショートカットというような設定が出来上がっていきます。その中で、ご縁を頂く俳優さんでご出演頂いた方は、僕が一方的に「一目惚れ」して、なおかつ大切にしたい2つのことを大切にされている方でした。
さぁ、俳優さんは決まった。いざ準備万端と思いきや…まだやっていないことがありました。それはカット割り(絵コンテ)を作ることでした。
さほど絵がうまくない僕が、絵コンテなんて書けるものなのか…。
この続きは、また次回に。