第3回 ハチミツご購入者配信レポート
HANAPの橋澤です。
お盆を過ぎて、養蜂作業も気持ちよく出来る涼しい日が増えてきました。
最近は、虫の声もセミなどの夏の声からコオロギや鈴虫などの秋の声に変わって、秋が近くなってきたなと思います。
秋は、養蜂家にとって最も大切な季節だと思っています。
なぜなら、秋にミツバチを元気に増やせるかどうかで、冬越しが上手くいくか否かが決まります。冬越しが上手くいけば、来春を良い状態で迎えられて、春にたくさんのハチミツを採れるようになります。
そのために、秋に増えてくる天敵のスズメバチから守ってあげたり、ミツバチに寄生するダニをしっかりコントロールしたりすることが必須になります。
来年のために、今から手を抜かずにしっかりとミツバチのお世話をしていきます。
もう一つ、ご報告があります。
実は先日、初めてのTV取材を受けさせて頂きました。
千葉テレビの「てくてく散歩」という15分番組に少し出演させて頂きます。
放送は、9月2日22:00~22:15です。
河邑ミクさんと森本サイダーさんという芸人さんに、少しだけ養蜂体験とHANAPのハチミツを試食して頂きました。
千葉県外の方も、YouTube「チバテレ公式チャンネル」で約1か月間は見れるそうですので、良かったらご覧ください。
それでは、今回もHANAPのハチミツ生産の近況をレポートさせて頂きます。
また、ハチミツって体に良いと聞いたことがある人は多いと思いますが、学術的にどんな効果が知られているか、少しご紹介したいと思います。
そして、ミツバチの生態は、女王バチの一生についてお話したいと思います。
【ハチミツの生産レポート】
-8月-
8月に入って大多喜町にある蜂場では、たくさんのハチミツが採れました。
大多喜町の蜂場は、里山の中にあります。雑木林の中には、「カラスザンショウ」というミカン科の木が自生しています。海辺の長生村や一宮町ではあまり見かけないのですが、夏の花が少ない時期の貴重な蜜源になってくれる植物です。
カラスザンショウのハチミツは、コクのあるとても濃厚な柑橘系の風味と山椒のピリピリする後味が特徴で、とっても美味しいハチミツです。
カラスザンショウは、地域によっては「アオバラ」とも呼ばれ、アオバラハチミツとして売られていることもあります。
この時期の大多喜町の蜜源は、カラスザンショウ以外には殆どないので、8月のOTAKI HONEYは、ほぼカラスザンショウのハチミツだと思います。
風味がとてもしっかりしているので、カクテルなどに入れても面白いかなと思います。
ぜひ、食べ比べセットにも入れてお楽しみ頂きたい逸品です。
千葉県の外房という数十キロ圏内の環境でも、場所によってハチミツが採れる量も違いますし、風味も全く違うハチミツが採れます。だからこそ、ハチミツはその土地の自然環境をそのまま表す食材として、地域の特産品になりやすいと思います。
蜜源の花の種類で販売されることが多いですが、その土地と季節のハチミツという楽しみ方がもっと増えると面白いなと思っています。
もう一つ、8月に素敵な出会いがありました。
長生村には、遊休農地を活用して、無農薬でひまわりを栽培し、ひまわり油を作っている方たちがいらっしゃいます。
そんなひまわり畑の一角にも、私たちのミツバチの巣箱を置かせて頂くことになりました。
ひまわりのハチミツがどれだけ採れるかはまだ分かりませんが、ひまわりの受粉のお手伝いは多少できると思います。
こうやって地域の方との繋がりが自然と増えるのも、養蜂を始めて本当に良かったと思います。
長生村のひまわり油は、ふるさと納税の返礼品にもなっています。
https://www.furusato-tax.jp/product/detail/12423/5333704
【ハチミツの健康機能について】
ハチミツは、お砂糖よりも体に良いと聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?
実際に、民間療法として、風邪のひき始めには、ハチミツを舐めるとか、大根のハチミツ浸け
を食べて乗り切るなど、今でも実践されている方も多いようです。
民間療法としてだけでなく、厚生労働省の定める「日本薬局方」でもハチミツは医薬品として登録されています。
東洋医学の世界でも、ハチミツは生薬の一つとして扱われてきました。
日本だけでなく世界中でハチミツは、民間療法として、または、お医者さんに処方される薬として現在も利用されています。
ハチミツの歴史は古く、スペインにある人類最古の洞窟壁画(約8,000年前)の一つにも、人がハチの巣からハチミツを採る様子が描かれています。
古代文明では、ハチミツは神々の食べ物であったり、万能薬として登場したりすることもあります。
『旧約聖書』では、兵士がハチミツを食べて疲労回復する話が出ており、中国の最古の薬学書である『神農本草経』では、痛み止め、解毒効果など多くの効用が書かれています。
もちろん現代の医学において、ハチミツは万能薬ではありません。
それでも、ハチミツには素晴らしい健康機能が、学術的にもたくさん臨床報告があります。
その一例を少し、簡単にご紹介させて頂きます。
創傷の治癒剤
P・モラン博士(ニュージーランド)は、ハチミツが創傷治癒効果を有する天然の抗菌剤であることを示しています。その主なメカニズムは、ハチミツが体の液体と反応して過酸化水素を作り、細菌にとって不快な環境を作るためです。
天然の咳止め
WHOでもハチミツを効果的な咳止めとして活用することを推奨しています。特に、急性の小児喘息に80%以上の改善が認められています。
腸内環境を整え便秘解消
ハチミツに含まれるオリゴ糖が乳酸菌やビフィズス菌の成長を促進します。
口腔ケア
ハチミツの抗菌力の高さは唾液と混ざることで効果が高まるという研究があります。
二日酔いの軽減
ハチミツ中の果糖は、肝臓のアルコール分解作用を促して血液中のアルコール濃度を下げます。また、ナイアシンは、二日酔いの原因物質であるアセトアルデヒドを分解する作用があります。
睡眠障害の改善
就寝前にハチミツを摂取することで、肝臓のグリコーゲン供給を補充し、脳が燃料の危機探索を誘発するのを防ぎます。また、脳内メラトニンの放出を促すため安眠効果が高まります。
他にも多岐にわたる効果が報告されています。
ハチミツで、不治の病が治るわけではありませんし、体の不調が何でも治るわけではありません。過大評価してはいけませんが、「美味しい良薬」として、もっと多くの方に、日常の体調管理に天然のハチミツを活用してもらえたら嬉しいです。
【ミツバチの生態③】
今回の主人公は、女王バチです。
女王という言葉から、何万匹もの働きバチを従えて、生まれながらの権力者として君臨しているように思われているかもしれませんね。
しかし、女王バチは、決して楽な暮らしをしているわけではない、といより、働きバチたちよりも過酷な一生を送っているのではないかと思います。
女王バチは、生まれながらにして女王バチとなるのではなく、王台と呼ばれる特別な部屋に産み付けれられた卵が、ローヤルゼリーを大量に与えられることで、女王バチになります。
5月~6月、ミツバチの繫殖シーズンには、一つの群にたくさんの王台が作られます。
この王台から新たな女王バチが誕生してくる前に、この群にいる女王バチは、半分の働きバチと共に、新たな巣を作りに出かけていきます。これを「分蜂」といいます。
つまり、母親は、住み慣れた家と財産の半分を娘のために残し、自分は新天地へと旅立ちます。
人間の場合、子供が成長すると子供が家から出て独立していくことが多いと思いますが、ミツバチは反対ですね。
働きバチの仕事もそうですが、ミツバチの場合、年長者がより危険やリスクを冒すことで、若い世代を守っていくようです。
さて、新しく産まれた(羽化した)女王バチは、のんびりとはしていられません。
ミツバチは、一つの群に女王バチは一匹だけという鉄の掟があるからです。
王台がいくつもあるということは、自分の後にも他の女王バチが産まれてきます。
そのため、産まれたばかりの女王バチの仕事は、他の王台を壊して回り、ライバルを産まれる前に殺していくことです。
しかし、産まれる前の王台を壊す前に、別の女王バチが産まれてきてしまうことがあります。
その場合には、どちらかが死ぬまで戦うことになります。
こうして、勝ち残った1匹だけがこの群を引き継ぐ新たな女王バチになることができるのです。
産まれてから約1週間、こうして無事に群を引き継いだ女王バチは、性成熟を迎えます。
産まれたばかりの女王バチは、まだ交尾をしていない処女の女王バチです。
働きバチや次の女王バチとなる娘たちを産むためには、オスバチと交尾をしなければいけません。
巣の中には、オスバチもいますが、同じ巣の中のオスバチとは交尾をしません。同じ母親の遺伝子を持つオスバチと近親交配を避けるためです。
そのため、交尾飛行という、女王バチの人生で一度きりの大仕事に出かけます。
産まれて初めて巣の外に出た処女の女王バチ。
勇気を出して、空に飛び立ちます。
外に出ても、オスバチと出会えなければ意味がありません。
そのため、オスバチとの出会いの確立を上げるため、オスバチと女王バチは、一日の中で同じ時間帯に交尾に出かけていきます。
交尾飛行に出かける時間は、遺伝子に刻まれていて、セイヨウミツバチの場合、午後2時頃にピークを迎えます。
このように約束の時間に飛び立つと、上空にオスバチが何匹も集まって女王バチが来るのを待っています。
そこに、近づいていくと、若い女王バチに気づいたオスバチたちは、我先に女王バチに交尾をしようと飛んできます。
見事、競争に勝って女王バチに追いついたオスバチは女王バチと交尾をします。
交尾を終えたオスバチは役目を終え、その場で死んでしまいます。
こうして、十数匹のオスバチと交尾をして、一生分の精子をお腹に貯えた女王バチは、自分の巣に戻ります。
もちろん、巣の外には肉食の昆虫やクモ、鳥など、捕食者がいっぱいいるので、全ての女王バチが無事に交尾を終えて巣に帰ってこれるわけではありません。
だから、ミツバチのお世話をしていて、無事に交尾を終えて巣に帰り産卵を開始した女王バチを見ると、嬉しくなって、「心配してたよ!よく頑張ったね!」と、いつも声をかけてしまいます。
無事に巣に帰ってこれた女王バチは、その後、分蜂する以外は、自ら巣から出ることはありません。巣の中にこもって、卵を産み続けるのが役割になります。
働きバチの寿命は短いので、群を維持し、発展させるためには、たくさんの働きバチを産み育てる必要があります。
多い時期には、一日に2,000個もの卵を産みます。自分の体重以上の量の卵を一日に産むことになるのです。
こうして、群が大きく成長し、巣が手狭になってくると、また王台を作り、娘のために巣を残して、自分は新天地に旅立ちます。
こうした生活を、2~3年繰り返します。
群にとって、とても重要で重労働な仕事を1匹だけで担っている女王バチ。
だから、働きバチたちから大事にされていることは間違いありませんが、年を取るなど何らかの要因で産卵する能力が低いと働きバチに判断されると、巣から追い出され、新たな女王バチを作り出そうとすることもあります。
巣から追い出された女王バチは、一人では生きていけないので、その一生を終えることになります。
だから、ミツバチの世界は、女王バチの独裁政権では決してなく、民衆(働きバチ)の意見で全てが決まる民主主義政治なのです。
次回は、高度な社会を築くミツバチがどうやってコミュニケーションを取っているのかを話したいと思います。