スポーツの語源には諸説あり。
その中でもsports = ex port
港から離れる=非日常という意味合いから言葉が生まれたという説があります。
卓越したアスリートが全力で戦う試合の非日常性。
そのプレーを見に多くの観衆が集まるのは古代ローマのコロッセオで剣闘士が戦っていた時代から今現在まで変わらなく続いています。
また普段とは違う場所で試合が行われる非日常性。
アメリカでは既存の競技フィールドではなく、全く違う環境やフィールドでプレーする試合が数多く存在します。大学バスケを例にとると例えば今年もArmed Forces Classic Gameとしてミシガン州立大学とゴンザカ大学が空母の上で公式戦を戦いました。
天候や風が競技に与える影響など日本だと、いろいろな意見が出るかもしれませんがそれもエンタテイメントとして楽しむ文化がアメリカにはあります。
アイスホッケーでは真冬の野球場で行う野外の試合、ウインタークラッシックが人気を博しています。寒さは甲子園ボウルの比ではないでしょう。その悪環境も非日常として楽しんでしまう。スポーツをエンタメとして楽しむ貪欲さは想像以上です。
アメリカンフットボールはニューヨークのポログラウンドをはじめとする野球場や他競技場で多くの試合を行ってきた歴史があります。
元々はダウンタウンの空き地を利用して作られたのが野球場。フィールドの形が画一的ではなく、今も様々な形状が存在するのはまさにその影響。
アメフトもそのフィールドにグリッドアイアンをはめこんで、試合を行ってきました。
60年代に入り、クルマ文化の中、エンタメも生活圏も郊外に移行する中で、より効率よくイベントを実施できるようにクッキーカッターと呼ばれる円形のスタンドに様々なフィールドに転換可能なマルチパーパス(多目的)スタジアムの建築がブームとなります。(日本ではZOZOマリンフィールドや横浜スタジアムがその影響を受けた球場といえます。)
人工芝が生まれたのもこの頃。スタジアムの利用効率は上がりますが画一化されたスタジアムでの試合に観衆が離れ始め、スポーツファシリティは次の進化を遂げていきます。
再びスポーツが街中に戻ってくるのは90年代後半。
治安改善、仕事、住居関係を含め、都心に人が戻ってきます。
その流れで再びダウンタウンの真ん中に昔ながらのデザインのボールパークが帰ってきます。野球に特化したスタジアムが主流となってきます。
またアメリカンフットボールもエンタメ性を高めた専用スタジアムが建設されることとなり、以前のようにアメリカンフットボールを野球場でプレーする機会が減ってきました。
コンテンツの新たな価値、非日常な価値を創造するために再び、近年、野球に特化した球場で年に一度、大学アメリカンフットボールのボウルゲームを行う事例が増えてきています。
現在、アメリカでボールパーク(野球場)で行われているカレッジボウルゲームですが以下に紹介する4つのボウルゲームが存在します。
●Pinstripe Bowl(ヤンキースタジアム)
ヤンキースタジアムでは85年前からアメリカンフットボールの試合が開催されており、2010年に球場がリノベーションされた年からACCとBIG12の二つのカンファレンスから招待されたチームが戦うピンストライプボウルが開催されています。今年は12月29日。ミネソタ大学とシラキュース大学が対戦します。シラキュース大には日本人の菅野 洋佑選手が参加しています!そちらも要チェックです。
ピンストライプボウルでは甲子園ボウルと同じようにホームベースから縦にバックスリーンにフィールドをとり、内野には甲子園ボウルと同じように天然芝がこの試合のために仮設で敷設されます。
こちらの動画。芝生の敷設のタイムラプスがご覧いただけます!
●Wasabi Fenway Bowl(フェンウェイパーク)
グリーンモンスターで有名なアメリカ屈指の歴史を誇るフェンウェイパークは1916年、当時のプロリーグAFLのボストン・ペイトリオッツ(現在のニューイングランド・ペイトリオッツ)がフランチャイズを置いたのをきっかけに近年も複数のアイビーリーグのレギュラーシーズンのホストとして試合が行われてきました。
Fewnway Bowl自体は2020年からスタートする予定でしたが、コロナで2回の中止を経て、今年12月17日にルイズビル大とシンシナティ大の対戦で行われルイズビルが24−7で勝利しています。
フィールドの転換の様子は2015年にノートルダム大の試合が行われた動画がyoutubeに残っています。以下のリンクから動画でご覧いただけます。
フェンウェイパークのフィールドコンバージョン
残り2つのベースボールパークで行われているボウルゲームもそれぞれサンディエゴ、アリゾナのMLB球団の現役ボールパークで行われていてそれぞれHoliday Bowl(1978年〜)、Gurranteed rate bowl (1996年〜)と上記の二つの著名球場でのボウルゲームよりも長い歴史を刻んで現存しています。
●Holiday Bowl (ペトコパーク)
●Guaranteed Rate Bowl(チェイスフィールド)
甲子園ボウルを甲子園球場でやり続ける意味。
甲子園球場で野球以外の球技の試合が出来るのは甲子園ボウルが唯一無二の存在であり、その非日常な環境で77回という長い歴史を刻んだボウルゲームを次世代に引き継いでいきたい。米国のボウルゲームと比較しても甲子園ボウルが如何に貴重な歴史を紡いできたか、その価値を継承する必要があります。
実は米国の4大ボウルもそのうちの3つが当初行われていたスタジアムから会場が変わっていますが「1世紀を超える歴史と伝統」を誇るローズボウルだけが開催球場を変えずに歴史を紡いでいます。
(コットンボウル73回目にAT&Tスタジアムへ移行、オレンジボウル60回目にハードロックスタジアムへ移行、シュガーボウル49回目にスーパードームへ移行。ローズボウルは年明けに109回目を迎える。)
甲子園ボウルが甲子園球場で紡いできた77回の歴史はローズボウルに次ぐ同一会場で継続されているボウルゲーム。貴重な存在なのです。
甲子園球場の大規模な改修以降、そのスタジアムのリソースを存分に使うためにフィールドを縦に置き、芝生を敷設するようになりましたが、今後も大会を続けていくには、芝生の再利用には私たちフットボール関係者も関心をもって有効に利用できる環境づくりが必要です。
甲子園ボウルを世界でも稀な長き歴史を誇るボウルゲームとするために。
まだまだみなさんのご協力が必要です。
クラウドファンディングに皆様のご協力をお願いしいたします。