日本では、江戸時代から「手ぬぐい」を配る習慣があったといわれ、歌舞伎役者や相撲の力士たちが上顧客へ、名前や家紋が入った手ぬぐいを贈ったことがはじまりといわれています。その後、商人たちも屋号などを入れた手ぬぐいを宣伝用として贈るようになり、その習慣は所沢でも見られました。
本プロジェクトで制作している手ぬぐいは、福島県いわき市にある「株式会社 起点」にオーダーしています。起点は、有機農業による綿花の栽培と、 オーガニックコットン製品の企画から製造、販売までを行う会社です。かねてより、手ぬぐいをつくることがあれば起点にお願いしたいと思っていました。なぜなら、彼らの取り組みを心から尊敬しているからです。
いわき市は、2012年から綿花栽培による被災地復興プロジェクトを進めています。東日本大震災によって壊滅的なダメージを受けた福島の農業を再生するため、塩害に強く、土壌の放射能移行係数が低い「綿花」を栽培。畑仕事を共に行うことで生まれる新しいコミュニティづくりにも力を入れています。
『環境にダメージを受けた福島だからこそ、環境に配慮した方法を選びたい』
(起点代表・酒井悠太氏のnoteより)
スタート時から一貫して有機農業にこだわり続ける起点は、福島綿のオーガニック認証取得に向けた独自プログラムや、いわきの風土にあった環境保全の研究を進めています。
『いつまでも震災の話を引っ張りたくはないのですが』と綴りながらも、ここに至る経緯には、東日本大震災が大きく影響しているのは事実。しかし、『福島の記憶に残る生業をつくる』を信念に掲げる商品は、どれも「震災支援」の匂いを感じさせない洗練されたデザインです。
この「支援」に甘えないものづくりという点にとても共感していて、酒井代表にお会いしたときにも「ですよね〜」の一言で、互いの考えが通じ合った気がします。私もクリエイターの端くれとして、「障がい福祉」のイメージを塗り替えるアイテムをつくりたいという気持ちは同じです。
いわきで栽培されているのは、日本古来から伝わる和綿「備中茶綿」。一般的な白綿ではなく、茶色い小粒な品種で、ほのかな生成り色が特徴。今回の手ぬぐいも、その生成り色を生かしてデザインしています。
生徒さんたちが描いたイラストに極力手を加えたくなかったため、表現できる線の太さや、印刷の仕方などについて、酒井さんにずいぶん問い合わせをしてしまいました。
私「すみません、細かいことばかりで。。」
酒井さん「いえいえ、些細なことが大事なこだわりなので、納得いくまでやりましょう」
今回の手ぬぐいには、インドとトルコのオーガニックコットンが95%、福島で有機栽培した備中茶綿が5%含まれています。製品化するにはまだまだ福島綿の量が足りないのが現状です。しかし、その5%に日本の美しい未来が大きく広がっています。本プロジェクトの手ぬぐいは、おかげさまで在庫20本をきりました。今後、増産の予定はありませんのでお見逃しなく。
株式会社 起点
http://kiten.organic/
代表取締役 酒井 悠太氏のnote
https://note.com/kiten_siome