写真家として、私の作家活動の柱は3つあって、そのひとつがモノクロスナッププラチナプリント作品です。他にポートレート作品群があり、そして、ボタニカルアート様式によるバラの写真作品があります。
バラの写真作品は、装飾的側面のあることが大きな強みで、今までに作品のバラをデザインに用いたマグカップ、キャンディポット、キーホルダー、トートバッグ、小物入れなどのグッズを制作販売してきましたが、一番良く出るのはポストカードです。ウェブ上でも販売していて、北海道から九州まで全国各地から注文が入ります。発送するときには、注文書の余白に、手書きでお礼などを書き添えていますが、ときどき、それに対して、お客さまの方からメールなどで返信をいただくことがあります。中には、かなり個人的な内容を書いてくださる方もいて、少し深い交流が生まれます。
「スーブニール・ド・アンネ・フランク」というバラのポストカードを複数回注文してくださったあるお客さまは、自分は闘病中で3年くらい寝込んでいるけれど、ポストカードの繊細なバラを見ると元気をもらえる。もっとたくさん注文したいから、必ずこの病気を乗り越えます…と、言ってくださいました。
また、他のお客さまは、自分にはバラ好きの友人がいるのだけれど、先日、その友人から、残りの命が長くないという話を聞いた。その友人を励ましたい。穏やかな日を過ごしてほしいということで、「青龍」という青いバラのポストカードをお求めいただきました。
自分の手を離れた写真作品が、こんなふうに、遠い地で、見知らぬ誰かの力になれることは奇跡です。そして、本当にありがたいことです。その作品を作って良かったと心から思います。本文に「一枚の写真が生きる力をもたらすことだってあります」と書きましたが、それは、このような体験に基づくものです。ですから、バラだけではなく、どんな写真作品を制作するときも、そして、世に送りだすときも、私は祈りをこめます。