入眠時、深部体温が下がることで入眠が促されます。前回は冬の低温の環境下で気を付けることを紹介しました。今回は、温度の高い夏に睡眠に与える影響について少しお話したいと思います。 冬は手足が冷えてることで熱が放散できないとお話しましたが、手足の温度が上昇している夏も環境温が高いと熱は放散しにくくなります。その理由の一つに、温度勾配がないから熱の移動がないこと。もう一つは、日本が高温多湿であり、発汗しても汗が蒸散しにくく(無効発汗)、熱を蒸散しにくい特徴があるからです。その時の寝床内の湿度が80%まで上昇することもあります。良質な睡眠をとるための理想は50~60%です。 無効発汗は夜間の熱中症のリスクを上昇させ、不快感を増強させ、体動も増加します。 体動が多いと浅い睡眠が増え、中途覚醒が増加するといわれています。 高温環境下では温度を下げるだけではなく、湿度を下げることが睡眠改善につながります。快適な室温になるよう、寝室の温度を睡眠前から下げておくことが必要になります。 夏の理想の睡眠環境は、室温26℃前後、相対湿度50~60%です。エアコンの気流が直接あたると必要以上の体温低下をおこしたり、設定温度が低すぎると感覚刺激になり、中途覚醒や睡眠が浅くなる可能性もありますので、エアコンを仕様する際は適度な設定を心がけるようにしましょう。
冬は環境温の低下により、睡眠へ大きな影響を与え、他の季節より入眠までの時間が長期化する傾向があります。 前回、睡眠中は末梢の血管が拡張し、手足より放熱して体温を下げることで入眠を促進するとお話ししました。この体温低下が少ないと眠りにつきにくくなったり、睡眠が浅くなったりします。 冬に体温低下が少なくなる理由として、①寝具が冷えていたり、手足が冷えていて、入床したときの冷感が刺激になり、末梢の血管が収縮し、手足からの放熱が妨げられること。②保温しようと寝具や衣服を必要以上に重ね、睡眠中の体温調節のための体動が妨げられること。布団が分厚いため、熱を放散しづらく、寝床内の温度・湿度が上がり、体温が低下しにくいこと。③睡眠中に持続的に電気毛布などを使用し加温していて、睡眠中に体温低下が妨げられること。などがあります。 冬は体温調節を妨げないよう、温熱環境を整える必要があります。 身体が冷えることによる、入眠の妨げには、あらかじめ寝具を暖めておくことが効果的です。そのまま使用し続けると寝床内は夏のような温熱環境となり、正常な体温低下を妨げ、入眠を妨げるだけではなく睡眠も浅くなってしまいますので、寝床内の加温は就寝時までにして睡眠中はスイッチを切っておくことが推奨されています。 寝具や衣服が多いと、体動や寝返りが妨げられます。体動や寝返りは、身体の特定の部分が圧迫されるのを防いでいるだけではなく、水分や熱の発散を調節し、体温を調整するという役割もあります。なので、寝具や衣服により体動が妨げられると、身体に不調がでるだけではなく、体温調節にも影響を与えてしまいます。 寝具の熱は掛け布団だけではなく、敷布団からも放散されるため、掛け布団だけではなく、敷布団を厚くして床からの冷気が伝わらないようにするなどの工夫が有効になります。 さらに、強い低温環境では、寝具ではなく、部屋自体の室温も適温に保つことが重要になります。快適な睡眠を得るためには、室温は16℃以上、湿度は50~60%以上が望まれており、睡眠環境の調整が必要になります。 入眠時に電気毛布などの寝床内を暖めておくことは効果的であるが、その後使用し続けると正常な体温低下が妨げられます。加温は寝る前までにするか、タイマーを使用し、電源が切れるようにすると睡眠の質が上がります。 湯たんぽなどのゆっくりと温度が低下するものを使用するのも効果的です。 あとは入眠前にお風呂に入るのも効果的です。身体が温かい状態で寝床内に入ると、手足が温かいだけではなく、睡眠中の体温低下の落差が大きくなるため、質のよい睡眠が得られやすくなります。 まだまだ寒い時期は続きますので、以上のことをぜひ参考にしてみてください。
睡眠環境と一概に言いますが、具体的には、寝室の環境と、寝床内の環境が相まって構成されています。 寝室環境の三大要素は温湿度、音、光になります。今回は寝室・寝床どちらにも関係する、温度について取り上げたいと思います。 下の図は私たちの一日の深部体温(皮膚の温度ではなく、心臓や脳などの身体の深部の温度) のサイクルになります。 私たちの体温は一日中一定ではなく、1日の中でサイクルがあります(概日リズム)。日中は、交感神経が優位になり、深部体温や血圧は上がり、覚醒度が上昇、活動が向上します。 夕方から夜にかけてが最も高く、就寝前の時間になると、深部体温を下げ、覚醒度は低下し、眠る準備をします。眠る頃になると副交感神経が優位になり、体温は急激に低下し、それに伴い眠りにつきやすくなります。 体温を下げるためには手足の末梢の血管が拡張し(手足は表面積が広いので、熱放散しやすい)、血流を増加させ、熱放散を起こします。その時手足の温度は少し上昇します。 朝方体温は最低温度に達し、起床に向け、また上昇し始めます。 このような体温変化が毎日きちんと発生していれば寝つきがよくなって深い眠りを得やすくなります。逆に、深部体温の正常な低下が阻害されると、なかなか眠りにつけなかったり、眠りが浅くなったりしてしまいます。 冬は手足が冷えているので、末梢の血管拡張がおこりにくく、夏は手足の皮膚温が上昇していても、環境温との差が少なく熱放散がしづらい環境にあります。睡眠の質を上げるため、睡眠環境を調整することが重要となります。 次回以降、夏と冬の温度に関する睡眠環境についてお話しますので、更新されましたら読んでみてください。
アルコールには中枢神経の抑制作用があり、たしかに寝つき自体はよくなります。しかし、量が多くなると発揚効果から覚醒をもたらし、睡眠中にさまざまな悪影響を及ぼします。①アルコールが体内で分解されるとアセトアルデヒドという物質が生成されます。アセトアルデヒドは末梢の血管拡張作用をもち、むくみが発生します。鼻腔や咽頭でも血管拡張、むくみが発生します。これにより上気道が閉塞しやすくなります。②アルコールは筋弛緩作用があり、上気道の抵抗が増えます。これも呼吸レスの原因となり、いびきの原因になります。③アセトアルデヒドには覚醒作用があるため、浅い睡眠が増え、中途覚醒・早期覚醒が増加し、睡眠の質が悪化します。④アルコールは利尿作用があり、さらに分解過程で水が使われるため、トイレ覚醒が増加します。 良好な睡眠のためには、寝るためのお酒、直前のお酒(寝酒)を避け、眠るためではなく、リラックスするための飲酒とすることや、就寝2・3時間前までには終えることが大事であると考えられます。 上の図はとある当社の社員(社長・・・?)の睡眠レポートの抜粋になります。 上は寝る前にたくさんお酒を飲んで寝た日で、下は寝る前のお酒を飲まなかった日のデータになります。睡眠時間は飲酒した日が5時間ぐらい、飲酒しなかった日は6時間弱と長くなっているのに一晩の呼吸レス回数は減っています。1時間当たりの平均呼吸レス回数を比べると、1時間に18回から7回と半分以下になっているのがわかります。 これを見て以来、夜の飲酒の時間を早めることにしたとか(^^)ちなみに、これは飲酒した日の姿勢と呼吸レスのグラフですが、 左が入眠、右が起床になります。呼吸レスのバーグラフは、呼吸レスが発生した時間に線が入ります。姿勢のバーは適度に色が変わっており、寝返りはちゃんとできてそうです。姿勢のバーの緑色が仰向けでいた時間になります。どの姿勢の時も呼吸レスの線が入っていますが、緑(仰向け)の時は止まることなく呼吸レスの波形が入っています。 横向きに寝やすい枕など最近は売られているので、こういうアイテムを導入すると、さらに呼吸レス回数は減ることが予想されます。 このようにウェルネー・スリープを使用することで、寝ている間の自分の見えなかった姿を見ることができますので、気になる方は是非ご検討いただけますと幸いです。
普段私たちが酸素を取り込もうと息を吸うと、空気は鼻(鼻腔)、喉(咽頭)を通り、喉頭、気管を通り、肺に入ります。喉頭よりも前が上気道、それより後が下気道といいます。 寝ている間の呼吸レスは、空気の通り道、上気道のどこかが無意識に塞がれていることによりおこる場合がほとんどです。 左は正常な呼吸ができている時で、右は舌が下に落ち込んで(舌根沈下)、上気道を完全に、または不完全に塞いでしまっている状態です。特に仰向けは横向きに比べて舌が落ち込みにくく、呼吸レスを発生させやすい体位になります。 上気道が塞がってしまう原因は、肥満による上気道周りの脂肪が多い、舌が大きい、軟口蓋が大きい、顎が小さい・後退している(東洋人に多い)、鼻中隔が曲がっているなどの解剖学的な理由以外にも、寝る前の飲酒や、睡眠薬の使用、鼻炎による鼻づまりをおこしているなどがあります。 寝る前のお酒はなぜよくないのでしょうか??次回、寝る前のお酒の影響について投稿しますので、ぜひ心あたりのある方は読んでみてください。