分析結果の速報です!
今回当プロジェクトでは、ノスタルジーを喚起する廃校デザインとして、視覚、味覚、聴覚のそれぞれの観点から「学校風景の映写(視覚)」「学校給食をベースとするメニューの提供(味覚)」「懐かしい楽器を使ったBGMの演奏(聴覚)」を考えました。
そしてそれらのノスタルジックデザインを施した廃校カフェを実験的に営業し、訪れた方々を対象に行ったアンケート調査のデータを分析することで、それらのデザインを施した廃校カフェに訪れるために人々が追加的に支払っても良いと思う金額(上がっても良いと思う旅行費用)を計測しました。
分析においては、得られたサンプルを小学校時に通っていた校舎が木造であった人とそうでなかった人に分割し、その違いが支払意思額やその他の回答に与える影響を見極めることに取り組みました。
ノスタルジーマーケティングの分類に従えば、小学校時の校舎が木造であった人は「個人的ノスタルジー」、木造以外であった人は「歴史的ノスタルジー」を感じる人に分類されます。
得られた主要な結果は以下の通りです。
1.ノスタルジックデザインの中で最も高く評価されたのは「学校給食をベースとするメニューの提供(味覚)」であり、その支払意思額は1783円となった。次いで「懐かしい楽器を使ったBGMの演奏(聴覚)」に対する支払意思額が1327円となり、「学校風景の映写(視覚の観点からノスタルジーを喚起するデザイン)」は平均的には人々の効用に有意な影響を与えなかった。
2.効用への作用の観点から「学校給食をベースとするメニューの提供」と「懐かしい楽器を使ったBGMの演奏」が組み合わさることで生じうる相乗効果の計測を試みたが、その効果は検出されなかった。
3.木造校舎にノスタルジーを感じる人として、5段階評価で「4」あるいは「5」を付けた人(「5」が「とても強くノスタルジーを感じる」)の割合は約90%に上り、その値は小学校時に通っていた校舎が木造であった人(個人的ノスタルジーを感じる人)とそうでなかった人(歴史的ノスタルジーを感じる人)との間で差が見られなかった。
4.「学校給食をベースとするメニューの提供」に対する支払意思額は、小学校時の校舎が木造以外であった人が2270円、小学校時の校舎が木造であった人が1090円となり、木造校舎に歴史的ノスタルジーを感じる人の方が個人的ノスタルジーを感じる人よりもそのノスタルジックデザインを高く評価することが示された。
5.「学校風景の映写」は平均的には人々の効用に作用しないことが示されたが、小学校時の校舎が木造であった人とそうでなかった人に分類すると、そのデザインに対する支払意思額は、小学校時の校舎が木造であった人が-641円、木造以外であった人が638円となり、平均的にはそれらが相殺されていることが示された。
今回の研究により、木造廃校カフェにおいてノスタルジーを喚起するデザインをより高く評価するのは、木造校舎を「懐かしむ」人(個人的ノスタルジーを感じる人)よりも「憧れる」人(歴史的ノスタルジーを感じる人)であることが示されました。
これは当ゼミが作成したパンフレットの表紙に示した仮説「郷愁誘う木造校舎に憧憬する」を支持する結果だと言えます。
詳細につきましては、また後日報告書が完成次第、分析部分をホームページに掲載いたします。今しばらくお待ちください。
この度は喫茶ランチルーム様はじめ、質美笑楽講の皆様には大変お世話になりました。
パンフレットの作成にご協力いただいた各店舗の皆様、クラウドファンディングにご支援いただいた皆様にも改めて厚くお礼申し上げます。