故郷喪失アンソロジー主催の藤井佯(ふじい・よう)です。
昨日、クラウドファンディングのページを公開しまして、さっそく目標金額の25%を達成いたしました!ありがとうございます。
4月30日までクラウドファンディングは実施されますので、引き続きよろしくお願いいたします!
「活動報告」ではこれから、掲載作品の紹介や、まえがき・あとがきの一部公開などを行っていこうと思っています。あわせてお楽しみください。
さて、今回は「そもそも藤井佯って誰やねん」という話についてと、個人で自主制作誌をつくることについての話をしようと思います。
藤井佯って、誰
すみません知名度などと程遠い場所で活動しているもので…。今回クラウドファンディングのページを見て「いや誰の何やねん」と思った方もいらっしゃるかもしれません。「藤井佯」責任編集の「故郷喪失アンソロジー」です。よろしくお願いします。
藤井佯(ふじい・よう)というのは、ふだん小説を書いていて、小説で金を稼ぎたいと夢見ている、いわばプロ志望のアマチュア小説家です。書くジャンルとしては主に純文学と奇想の間の子といった感じです。今回「故郷喪失アンソロジー」にはエッセイを寄せたのですが、ふだんはあまり書かないです。もっぱら小説を書いています。現在のところ短編が多いです。
歳は20代後半です。
実はブログがありまして、そこに「今までどんな作品を書いてきたか」とか「何が好きか」とかまとめています。自己紹介のときはいつも「鳥の神話を伝えます」と添えています。鳥が大大大好きです。なぜここまで鳥に惹かれるのかわからないのですが、鳥が好きなので鳥の登場する小説ばかり書いています。
たとえばこれ。pixiv主催の「第五回pixiv百合文芸小説コンテスト」に応募した作品(約9000字)なのですが、これは「ハシビロコウ(♀)とその飼育員の女性の奇想百合」を書きました。
たとえばこれは、「『鳩が造れること』を発見した二人の女子高生たちの話」です。大体1万字です。
あといくつか作品を紹介させてください。
これは、翻訳家/書評家である鯨井久志さん主催の「カモガワ奇想短編グランプリ」の最終候補に残った作品です。鳥だらけの惑星に調査員として降り立った「わたし」が、鳥の歌声の中のみに存在する知的生命体と遭遇し、惑星の過去の遍歴を伝え聞く話です。だいたい6千字くらいだったと思います。
その他、小説家/翻訳家である紅坂紫さんが運営されている、「紙×Instagram」でおくる新しいフラッシュフィクション専門週刊誌「CALLmagazine」に1000字のフラッシュフィクションを寄稿したこともあります。
……そんな感じで、ふだんは鳥の小説ばかり書いています。ではなぜ今回は「故郷喪失」だったのかといいますと、そちらも今の私にとっては大切なテーマだったから、と言うほかありません。私は、個人で小説を書くという活動と並行して、「集団で本をつくって出す」という活動をこれまで行ってきました。
2021年から2023年まで、文芸同人サークル「造鳩會」の主宰として、文芸誌『異界觀相』vol.1,vol.2をつくりました(通販では品切れとなっていますが、大阪・中崎町の書店『葉ね文庫』さんや、喫茶『マンサルド』に少しだけ在庫があるようです)。また、2023年に、「鳩」をテーマとしたアンソロジー『鳩のおとむらい』を発行しました(こちらも一部書店さまに在庫があります)。なんで「集団で本をつくって出す」ということに惹かれているのだろうと考えますが、こちらも明確な答えは出ず、ただ「好きだから」なのだと思います。
しかし、プロ志望であるがゆえに、公募に集中したいとは常々思っていまして(小説家って基本的に公募で賞とらないとデビューできないから)、でも「本をつくりたい」という熱はそんな事情とはお構いなしにやってくるんですよね。「故郷喪失アンソロジー」について着想を得たのは1月24日でした。日付まで覚えてます。その日はなぜか眠れず徹夜したのですが、ちょうど「●●県にまつわる文芸作品のアンソロジー」を募集している投稿を見ちゃったんですね。それで、私は出身が福岡県なんですけど、「さ、福岡県を舞台とした小説を書いてください!」と言われて、屈託なく書けるか?と考えこみました。いま私は地元である福岡を出て関東で活動しているわけですが、地元にはとても複雑な感情を持っていて、正直もう帰れないし帰りたくないなと思っています(詳しいことは故郷喪失アンソロジーに寄稿したエッセイに書いてあります)。それで、そういう人って実は多いんじゃないかなと思ったんですよね。そういう人たちのことを想像していたら、ふと「故郷喪失」という言葉が降りてきました。で、「あ、これは本にしなきゃダメだな」と思ったことがこのプロジェクトの発端になっています。
個人で自主制作誌を出すということ
いや〜〜〜〜めっちゃ難しいです。自主制作誌って、売れたくて出すってことあんまりないと感じていて、基本的に「出さざるを得なかった」から出ているんだと思います。私はなんかその辺の感覚がバグっていて「公募をすると作品が集まる→集まるとどうなる→知らんのか、本ができる」という単純すぎる計算で、お金のことなど無視して、故郷喪失アンソロジーの公募を始めちゃったんですよね。で、公募をかけたら作品が集まるじゃないですか。じゃあもう本格的に本にしなきゃダメですよね。少なくとも公募に出してくださった方々は、多少なりともこのプロジェクトを「面白い」と感じてくれたから大事な作品を預けてくれたんだと思うんです。だったら、全力で応えるしかないですよね。私はこれまで何冊か本をつくってきているのでまだなんとかなるし、「本って出そうと思えば出るよ」と言えちゃうんですけど、実際に何も知らない状態から、衝動だけに突き動かされて「やばい、本つくらなきゃ!」ってなったときは大変だと思います。たとえば今回の「故郷喪失アンソロジー」では、どんなタスクがあるか見てみましょう。
・応募要項を過不足なくつくる。画像もあると尚良し
・自分の作品も書く。文章もしくは画像など素材を用意する
・関連しそうな参考図書を集めてきて読む
・応募フォームを過不足なくつくる
・応募作品を全部読んで審査する
・採用者に連絡する。一斉送信の場合は絶対bccで!
・採用者に必ず作品の感想を伝える(絶対!)
・(今回はクラファンしたので)クラウドファンディングの文言やリターンを考える
・クラウドファンディングに使用するサムネイル画像などを制作する(Illustratorを使っている)
・適宜クラウドファンディングでの活動報告や告知を行う
・装丁案を考える
・資金繰りを考える
・作品を組版していく(InDesignを使っている)
・参加者のみのdiscordサーバーをつくる
・discordで作品の校正やコメントを出す
・初校、再校、念校などの赤字を組版データに反映させる
・参加者に確認のためのゲラをお送りする
・本を置いてくれそう、置いてもらいたい書店さまのリストをつくる
・ZINEやリトルプレスを取り扱っている書店さまに営業をかける
・初版部数の決定
・印刷会社に見積もりの依頼や装丁についての問い合わせを送る
・印刷会社に入稿する
・本が届いたらリターンの送付を行う
・その他、リターンの「書き下ろし小説」「ブックガイド」「制作日誌」の組版を行う
・電子書籍化のための作業を行う
・参加者への献本と謝礼の送付・送金
・電子書籍を配信する
・書店さまへ商品の送付
・自家通販にて本の販売開始
・リターンの「コミッション」の小説を執筆する
……どうでしょうか。大変ですね。もちろん、本作りってこんなガッチリしたのばっかりじゃないですし、もっと気軽に始めることはできます。ただし、人を巻き込んである程度の規模でやろうと思うとこうなってきます。もう仕事ですよね。なんでこんな大変なのに本つくってるんだ、と言われると「気が変になっているから」としか言いようがないんですが、実際勢いでなんとかするみたいなことが多いです。というか、それでも届けたいから作ってるんですよね。だけど、自主制作誌ってま〜〜〜〜〜〜手に取ってもらえない。冒頭でも述べたように「誰の何?」状態なので。だから、こういう「活動報告」などを活用して「私が誰で、こういう考えのもとこの本はつくられています」ということをわざわざ表明しているわけです。文学フリマとかもう盛り上がりすぎてなんなんだという感じですけど、みんなどれくらい本売れてるんだろう。あんまり知名度ない個人でやるなら10部売れたら万々歳とかの世界だと思いますよ。世の中あまりにも良い本が多いから、それに本以外のものとも闘わなきゃいけないから、本当に本って買われない。買われるのは奇跡です。私は幸い、TwitterやMastodonに小説を書いているフォロワーがたくさんいて、ありがたいことに仲良くしてもらっているので、こういう企画を立ち上げるとき、拡散を手伝ってくださったり、実際に支援してくださったりするのですが、ぶっちゃけるとそれ以外のツテを持っていません。完全にそれ頼りになっちゃってます。良い本なのはわかってる、でもそれを広く伝えるのは難しいんです。でも、売りたいですよね……。だから足掻いています。良い本なのは自分自身が誰よりも理解しているから、諦めたくないですよね。個人で本をつくっているひとって、多かれ少なかれみんなこうした葛藤のなかにいると思います。とにかく言葉を、アクションを重ねるしかないと思っています。もう頼れるものが熱い気持ちしかないんですよね。一人でもそれが届けば、些細な変化だろうが着実に何かが変わるのだと信じるしかない。なんだか私の信仰表明みたいになってしまいましたが、個人で本をつくるということはそういうことだと思っています。特に今回ってクラウドファンディングで、まだ本の中身ってわからないわけじゃないですか。それでも支援してくださった方というのは、この本のことを「面白い本だと信じて」くれたということなので、全力で応えたいです。故郷喪失アンソロジーは、本当に良い本なので、発行後はクチコミなどでじわじわと買われ続ける本になるんじゃないかと思っているのですが、やはりクラウドファンディング時点で買ってもらいたい。それはやはり、クラウドファンディングでの支援額に応じて初版部数を調整するからという実際的な問題もあるし、内容に自信があるからでもある。「故郷喪失アンソロジー」のもっとぶっちゃけた話しますね。この本って、フックがあまりないんです。もちろん「故郷喪失」という単語にピンと来てもらえるならそれが一番良いですし、その他「好きな作家が寄稿している」という興味の抱かれ方も嬉しいです。しかし、たとえばジャンルでいうとこの本は純文学なのかノンフィクションなのかSFなのかファンタジーなのか判然としません。だからまず「百合SFです!」みたいなわかりやすい売り方ができないわけですよね。だから、中身を判断してもらうしかない。だけど、読めば必ず伝わると信じています。というか、それしか私にできることがないです。今後、「活動報告」では、より詳細な各作品の内容紹介を行おうと考えています。それで少しでも「面白そうだな」と思ったら「買い」ですということを何度でも言いたい。「故郷喪失」という言葉ってめちゃくちゃ広いんですよね。地元に帰れないというレベルでの故郷喪失もあるし、住んでいる土地が被災して住めなくなったという場合も、絶対に忘れてはならないのが現在パレスチナで起こっていることなどもそうですよね。一方で、生まれながらにして漠然と喪失感を抱えているという感慨も「故郷喪失」に含まれると思うし、かつて存在したが今は存在しないもの、たとえばインターネット上の終了したサービスとか、だって「故郷喪失」になり得ます。今回、本当に多岐にわたる「故郷喪失」が集まっていて、この言葉に関心がある方には必ず何かしらの発見を得られるような本になっていると思います。だから、この文章を読んでいるあなたにしてもらいたいことを今から言いますね。少しでも関心があれば、リターンを覗いてみてください。あわよくば支援してください。そして、SNSでこの記事なりクラウドファンディングのことなりを拡散してください。あなたに関心がなくても、あなたのフォロワーには関心がある人がいるかもしれない。まず「こんな本が生まれようとしている」ということを知ってもらうことから始めないといけないんです。どんなに良い本でも知られないと埋もれてしまうのです。ぜひあなたの力が必要です。よろしくお願いいたします。
最後に
長々と語ってきたけど、結局言いたいことってこれだけだな。「故郷喪失アンソロジー、めっちゃいいよ!」「今読まれるべき作品が揃ってるよ!」「支援と拡散の協力よろしくね!」
よろしくお願いいたします。