徹底的な対話を基本とする労働者協同組合が、市場という昔ながらの共同体の中でシェア型書店を運営するという。初めてその話を伺ったときはとてもワクワクした一方、実はモヤモヤした気持ちもぬぐえなかった。「対話?」 SNSでも現実でも、目にするのは対立と分断ばかり。「市場?」 どこもかしこも大型商業施設に押されて寂れていってるじゃないか。「書店?」 本よりもインターネット上の言説が信じられてしまう今の時代に?本と同じく紙媒体を中心とし、先行き厳しい新聞業界に身を置く私としては、ついつい悲観してしまう。いや、しかし、だからこそ、だからこそ、期待したいのだ。対話を重んじ、共同性を見直し、多角的に知と向き合う場所を。対等な人間関係に基づく丁寧な議論によって切り開かれていく未来を。正直、書いていてこそばゆくなるような理想だ。そしておそらくは多くの人が効率や生産性の名の下に、諦めてしまった生き方なのではないだろうか。日本において、沖縄ほど「対話」の必要性が叫ばれている土地はないだろう。その一方で、「対話なんて無意味だ」という空気をこれほど強く感じる土地もない。そんな沖縄にできるシェア型書店にはどんな人たちが集い、どんな本が並ぶのだろうか。労働者協同組合の運営メンバーはこの店をどう育てていくのだろうか。この場所は沖縄にどんな化学変化をもたらしてくれるのだろうか。 大きすぎるかもしれない期待を寄せて、応援していきたい。
私の実家は「ミニスーパー ハヤシヤ」という地域のコンビニのような場所でした。店にはテレビが置いてあり、小さなベンチもあって、買物のあと、お年寄りが休んでいったり、近所の人とおしゃべりしたり、夏には野球の中継を一緒に見るような店でした。そこで店番をしながら育ったこともあり、今回、栄町に小さな共同書店ができること、そして自分も個人として「ミニ書店」を開けることを、大変うれしく思います。インターネットのない90年代のド田舎で育った私に、本は世界への関心を開いてくれました。その後、文学部に進み、留学し、演劇について学び、今は劇場で働きながら、ドイツ語翻訳者をしています。子どもの頃から、店で人の話を聞くことが好きで、その延長に読書がありました。高校生になって本を知ったときに驚いたのは、数百年、数千年前の、遠いどこかの誰かの話さえも聞くことができるということでした。自分とは異なる誰かの声を聞くことは、芸術の楽しみの根本であると同時に、地域で、世界でともに生きること、つまり政治の基礎でもあると思います。この共同書店のあり方と、本を読み、誰かに手渡す日々のいとなみが、人が互いに声を聞き合う世の中へとつながることを信じて、自分なりの参加をしたいと思っています。
ちょっと強引だけど、書店巡りは昆虫採集と似ている。探している本(虫)を求めて、ここぞという書店(森)にわけ入っていく。そのために遠くまで足を運ぶことも厭わない。そこに探している対象が「いる」とは限らない。一方で、思いもよらぬ出会いがある。そして一期一会…探検心をくすぐる場所が新しく那覇に生まれることをうれしく思う。末永く続くよう、心から応援しています。
本棚制作の動画を公開しました。栄町共同書店がだんだんと形になっていきます!栄町共同書店のSNSからご覧ください。https://x.com/sakaemachi_bc/status/1826551482176733397https://www.instagram.com/reel/C-95YKkPpki/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==
8月20日付沖縄タイムス朝刊に、栄町共同書店が掲載されました!ぜひお読みください。https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1418413?utm_source=twitter&utm_medium=Social&utm_campaign=20240820080946