相続税の節税と言われると『対策前の相続税の額』と『対策後の相続税の額』を比べて、相続税の額が減ることと思っていませんか?
実は、相続税が減ることは相続税の節税では無いんです。
しかしながら、世の中の人の殆どは『相続税の額が減った』から節税が成功したと思ってしまいます。
これは、一般の方のみでなく、税理士等の専門家の方々も間違えている大きなポイントです。
良く、不動産の相続税対策として、土地の有効活用が挙げられます。
しかしながら、土地は利用の仕方により、土地の価格自体を下げてしまいます。
土地の価格が下がることで相続税の額も下がるため、節税が成功したと思う人が居ますが、間違いです。
「土地の価格が下がった=持っている資産の額が減った」ということなのです。決して節税効果があった為に相続税が下がったということではありません。
例えば、配偶者+子供2人 の家族が3億円の遺産を相続する場合を想定します。
相続対策として 面積300m2(相続税評価額1億円)の 土地を駐車場にした場合とアパートにした場合 を想定します。
駐車場にした場合には、舗装や料金精算機等の初期投資費用が650万円掛かったとすれば、土地の評価額は変わらないので、毎月の駐車料金の収入がどれだけ入って来るかでビジネスをした方が良いかどうか決定できます。
例えば、以下の様な収益が見込めるのであれば、土地を有効活用したメリットがあります。
年間収益=20台x1回1,000円x365日=730万円
この様なビジネスモデルだと、初期投資が1年で回収できるという大変良いビジネスモデルとなります。
更に、土地は舗装しただけなので簡単に他の活用も考えることが可能です。
一方、初期投資費用に1億円掛けて アパートにした場合は、借地権割合=60%、借家権割合=30%、賃貸割合 =100%として計算すると、アパートにしただけで以下の様になります。
対策前の評価額=土地の評価額+預貯金(建設費)
=10,000万円+10,000万円
対策後の評価額=アパートの土地の評価額+建物の評価額
=8,200万円+4,900万円
=13,100万円
対策前後の差額=対策前ー対策後
=(20,000)ー(13,100)=6,900万円
この場合相続税の節税効果は2,070万円となます。
不動産の評価額が6,900万円下がったので、相続税としては2,070万円下がるが、本当に得したのでしょうか?
言葉を言い換えると、
資産を6,900万円 減らしたので、相続税が2,070万円 下がった。
つまり、4,830万円損したという事です。
それでも、アパート 経営が順調に稼働し、4,830万円 が3年~5年で回収できれば良いですが、そうでない場合には、徐々に建物が老朽化して維持費が高くなり、借り手も付かなくなってきます。
そうなるとアパート経営は単に財産を減らしただけという事になります。
上記の例を見て頂くと解る通り、土地の有効活用は非常に難しく、単に相続の知識のみで判断できるものではありません。
土地の有効活用は、一過性で考えるのではなく、人生を考えた長期的なスパンで投資を考えていく必要があります。
この考え方無しに単に相続税の節税のみを追いかけても逆に財産を大きく減らしてしまうことになってしまうのです。
今回は、駐車場経営と賃貸アパート経営の例を紹介しましたが、これは、あくまでも一例です。
良い相続対策とは、「対策前と後で相続税が減っていること」ではなく「純資産が減らないことが重要」です。一般的に、アパート経営をした場合に、アパートを建てた方が良いと言われる案件は1割以下であることを覚えておいて下さい。
敷地の広さや形、立地条件、資金回収計画等により、投資案件の良し悪しは決定します。
このため、駐車場経営が良くて、賃貸アパート経営が悪いということではありません。
土地の有効活用は、土地の形もそれぞれで違うし、立地条件のそれぞれ違うのです。
一つとして同じものはありませんので、自分で色々な要素を調査して色々なパターンをシミュレーションしてみることが非常に重要です。
税理士からアドバイスを受けた内容が、「相続税の節税対策ではなく、単に財産を減らしている」という事実があることをご理解下さい。
正しい相続対策を知って、正しい計算シミュレーションをおこなうことが、最適な相続税対策となります。
『簡単相続』はそんな不動産対策をシミュレーション可能なシステムです。