昨夜遅くに帰宅して、この文章を書いています。9/9に出発してからだから、本当に5週間の大冒険だった感覚です。
ミラノ「Legacy3.11」展は、素直に大成功でした。根拠のない確信のみを胸に飛び込み、過大評価でなく、そのコンセプトから”Strictly DIY”な立て付け、それぞれの作品、映画、会場の構成まで、来場された多様な方々から感動、賛同をいただけました。
さらに今後の展開として、まさかの場所からお誘いを受けたり、打診があったり、画策したり、今回金銭面はすべて持ち出しで実現させてしまった状況から、ほんの少しでも挽回と継続の芽を持って帰れました。予想を超えた収穫、心より感謝です。
ただ、それで油断していたわけでもないのに、イタリアの洗礼とも言えることが起きたのが最終日でした。
もともと朝8時半の出発ということになっていました。前夜から、空港に行くにはバスか電車か議論はしていて、セントラルステーションまではタクシー、そこからバスが最も確実で安いだろうという話でした。僕は「7時半に出たら?」と言っていた手前、5時に起きて7時には荷造りを終えていました。
とはいえ、みんなが起きてきて詰め込んだ荷物を測ると10キロ以上オーバー。もしかしたらそれもお金でサクッと解決と決めておけばよかったものの、こだわりが発生してしまったのが運のつき。どうせ捨てるゴミもあったのと、行きよりも荷物が減って手荷物を一つ増やせるから、前日に潰したダンボールをゴミ捨て場から持って帰り、つくりなおしました。
基準の23キロ超は他のメンバーにもいたので、過重分をダンボールに詰めて全6つのうち5つの荷物を23キロに整え、どうしても1つは超過分を支払う前提で準備万端。そうして「晴れてるしタクシーも混まないよ!」という言葉で安心しつつ下に行くと、まずタクシーが捕まらない。地元のイタリア人が電話で直接呼んでも来ない。やっと2台が手配されると、今度はドライバーが「荷物をバックシートに置くのは嫌だ」とゴネはじめました。
石田純一みたいな、裸足で靴をはくタイプの優男で、バックシートは赤い皮。「なんだそれ」と怒る気も失せて、男子2人はトラムでセントラルステーションへ。
今思えば、この時点で荷造り、配車から荷積み交渉、そして渋滞の中のトラム移動という、すでに時間との勝負がはじまっていました。しかし残念ながら、その認識が当時に自分には皆無でした。むしろ「準備万端、オレたち抜かりナシ」くらいの思い込みだったのです。
空港につくと、カウンターはすでに長蛇の列。やっとたどり着くと、6つある僕らの荷物にネチネチと質問などがはじまります。途中、意味不明に同僚の女性とずっとモニターを見つめたりして、「だから重さは全部測ってきたって!」と言ってもそこはスルー。そうして、一つだけ支払い前提の超過荷物について「今ここで払うよ」と伝えると、「支払い場所はあっち」とのこと。でもなぜか「まだ、行ってはいけない」と言う。案の定、その支払いカウンターも行列で、そうこうして結局すべて終えた時、僕らが最後の一組でした。
さらに出国ゲートに行くと、そこも激混み。加えて手荷物を運ぶベルトコンベアーが止まり、さらにはフミキさんの荷物が引っかかる。
「水も刃物もないから、早く行かせてくれ」と思っていると、バッグから出されたのはジャムと貴重な梅エキス。エキスと言ってもほぼほぼ固形化していて、舐めると明らかに身体に染み渡る、ミラノ滞在期間中僕らの心身を守ってくれた漢方のような塊。それがダメだと持って行かれて、さらに時間の感覚を失う僕ら。
とにかく、朝から何一つスムーズにすすむことなく、やっと出国できてゲートに向かうと、いくら歩いてもゲートが見えません。マルペンサ空港の大きさは想像を軽く超えていて、お客など全然いないように見えるハイファッションのブランドショップが延々と続き、ゲートの姿すら見えてこない。
たぶんエアチャイナだから端っこの端にゲートが置かれ、日本ならアナウンスが入ったり、「どこどこ行きの〜様」と小走りのスチュワーデスさんに過去何度もお世話になっているけれど、それらも聞こえないし、見かけない。
途中、半ば汗だくで小走りで空港内を移動しながら、見かけた時計が出発時間を過ぎていて、一瞬最悪の想定が頭をよぎる。まあ、とはいえ「置いて行くなんてこともないだろう」と最果てのゲートにつくと、そこには数人の職員の姿。ちょっとホッとして「さあ、入れてくれ!」「着いたよ!」と汗をふきふき伝えると「もうドアはクローズ。開けることはできない」と、愕然とする言葉が、彼らの口から出てきました。
そんなことってある?オレ500回は飛行機乗ってる気がするけど、こんな目にあったことないよ?だいたい、カウンターでチェックインして、出国して、データ残ってるでしょう?いなくなるわけないじゃん!遅れたのは全部不可抗力でまったく悪くないのに!と怒りまくるも、彼らは少し遠くを見ながら「もうドアはクローズ。開けられない」を繰り返すのみなのでしたー、、(後編へ続く)。