先日、また別の公開研究会があった。

非常に多くの学びがあったので、また私から見えた世界を書かせてもらいたい。

私は中学校2年生の数学の授業を見学した。単元は確率であった。

本授業を見学し、私が学んだのは次の３点である。

１．実験や試行を実際にするからこそ、生徒はその問題を考えたくなるし、楽しく学ぶことができる。

♯授業後のインタビュー生徒も「実際の試行や実験があるのが楽しい」と話していた。

２．樹形図や場合の数を順々に書いていくという泥臭い作業があってこそ、正しい解答を知ったときに感動や驚きを抱くことができる。

♯授業後のインタビュー生徒も「いろいろやってできなかったものが、悔しさから印象に残る」ことや「試行錯誤をしたからこそ、正しい解答に感動した」とも言っていた。

３．生徒が考えたくなるような価値のある問いが提示されることは重要である。

筆者から見た授業の概要は以下である。

授業冒頭、すぐに「2人のじゃんけんであいこになる場合と、3人のじゃんけんであいこになる場合はどちらが起こりやすい？」という発問が提示される。

＃この問いは問題を理解するのは容易だが、直ちに答えが求まるほどには簡単すぎず、むしろ挑戦的な難易度である。日常でもたびたび経験する場面であり、非常に考えたくなる問いである。そして、実際に考える中で場合の数のカウントや確率の定義、同様に確からしいなど重要な要素にぶつかる。

教員が数人の生徒に意見を尋ねると、各々「2人！（T「なんで」）直観！」、「同じ」と答える。教員が「3人だと思う人？」と尋ねると多くの手が上がる。教師が「なんで？」と尋ねると、ある生徒は「3人だとグー・チョキ・パーの場合もあいこになる」と答え、またある生徒は「経験的に大人数の方があいこになりやすいから」と答える。教師はそれらの答えを確認し、「20回ずつやってみよう」と言い、授業は実際の試行に進んだ。

＃この試行も重要であると感じた。実際にやってみることで、大体の感覚をつかむことができる。また、計算で求めた値との近さやズレを感じることができ、計算結果を脱文脈的な値ではなく、実際の起こりやすさの感覚を伴った解答として、計算結果を捉えることにつながるだろう。

教室の座席は最初から4人班のまとまりで配置されており、その4人でじゃんけんとカウントを行っていく。カウントが済んだらスプレッドシートに自分たちの班の数字を入れ、自動的に全体の数字の合計が更新されていく。

最終的には、2人の場合で200回中あいこが87回、3人の場合で76回と2人の方が少し多い結果となった。これを受け教師は「じゃあ、2人でやったときの方があいこになりやすいのかな？」と言うが、すぐさま生徒が「いやいやいや、、」と反応し、「試行の回数が少ないし、計算で求めた方が良い」と理由を言う。

そこで教師は「大丈夫です、プリントを準備しています」と言い、余白の大きくとられたプリントを配布し、計算により求めるよう促す。生徒たちはプリントを受け取ると。樹形図を書いたり、それぞれの場合を表で書いたりと各々検討している。

ある班では、「グー、チョキ、パーが出ている場合は何通り？」「3通りじゃん。グー・チョキ・パーで。」「いや、グー・チョキ・パーの場合もあるけど、グー・パー・チョキの場合も、、」「6通りか、直さないと。」といったやりとりも見られた。やはり友人に説明する中で考えが整理されたり、誤りに気付くことは多い。

♯やはり4人班の形で授業を受けるのは、その形態をうまく使える授業形態（探究的な課題を中心都市、自由な相談や援助要請の文化がある）とであれば良いと感じた。学校で友達に囲まれているのに、その友達と学びの場で関われないのは不自然な気もする（もちろん、4人グループでも個人での探究は可能である）。また、自分の考えを抱ける課題や安心して質問できる空間であれば、一人で考え続けるよりも、友達に説明したり質問したりしながら学びを進めるのが自然でもある。

「はー、じゃあどうでしょう。そろそろ答え、出てきましたかな？」と教師が全体に発言し、机間指導中に撮ったノートの写真をスライドに提示し、そのノートを書いた生徒に全体に説明してもらう。内容が複雑なだけにいきなりの説明は難しいが、その生徒は何とか説明しきった。

♯ある程度複雑な事象を生徒が全体に対して「発表」するのは難しいものである。今回の生徒は公開研究会という極度の緊張の場でありつつも、見事に説明をし終えたが、自分の考えを「まとめて発表」するのではなく、少しずつ説明（「まず〇〇と考えて」（周り：うんうん）、「次に〇〇しました」（周り：「ここまでついていけてる！」）「で、〇〇と考えて」（周り：うんうん）・・・）するのが、発表者が緊張せず、自分の考えを素朴に発表し、周りも理解が追い付きやすい形かもしれない。ただし、仮に理解が追い付かなかった生徒がいても、その後のグループに戻った場面で、グループのメンバーに聞き、理解できる場面も多い。

教師はこれを受け、「あいこの秘密（何人でも確率は一緒）を知ってしまった、、、」と言いいつつ、4人の場合はどうなるかなと、次の発問「4人でじゃんけんを一回行う。あいこになる確率は次のうちどれか？①1/3，②2/3，③1/2，④1/4」と提示し、生徒は各々考える。生徒に聞くと、②が多いようである。おそらく2人、3人の場合であいこの確率が1/3だったから、それよりは多くなるだろうという推測であろう。教師が「じゃあ、これも計算してみてください」と言い、各々個人とグループと入り混じって検討が進む。

検討では樹形図を書いて考えている子が多い。そして、中には樹形図をある程度書いてから、同じパターンが現れると考え、省略した樹形図を書く子もいる。

ある程度、検討の時間をとったのち、「じゃあ、ちょっと良いですか？」と教師が全体で考えを共有する時間とし、「この班、答えが割れてるんだって」とあえて答えの値が一致しない班の考えを共有する。最初にある生徒が自分の考えを説明する。その後もその発表した生徒と異なる考えの生徒のノートが写され、考えが共有される。

ここで終了時間となり、一区切りとする。しかし、答えが提示され、完結しなかったからこそ、授業後もある生徒のもとに集まり各々自分たちの考えを述べ、相手の考えを聞く自発的な探究が続いていた。

♯この授業後に探究が続く姿は教師として嬉しいものである。生徒が知りたいという気持ちを持ち、自分たちで探究を続ける姿はまさに教師が目指したい姿であるだろう。

あくまでもこれは筆者から見た授業であり、また、授業の本の一部であるが、それでも多くを学ばせていただいた。