
皆様のご支援により実現した山形公演(10/3~4)について、終演以後さまざまな視点からの振り返りを行ってきました。こちらでは、運営サイドからのレポートをお送りいたします。
今回は、あしプロの理事であり事業評価設計を担っている石幡愛氏によるレポートです。
自由を守ることと、場を守ることーーフェア・クリエーションのために
鶴岡での遠征公演を終えたあと、振り返りの中で印象的な話題がありました。
それは、「自由を担保することとそれゆえにおきるハレーションの間の紙一重に、いかに留まり続けられるか」という、私たちがずっと抱えているジレンマについてです。
遠征公演では、とある出演者が自己判断でホールの利用ルールに触れる行動をしてしまった場面がありました。本人としては「自分が舞台でいかに輝けるか」を考えたからこその行動で、それ自体は表現意欲の現れでした。でも、その判断は、施設への負担や、今後、同様の活動に対する制限につながるリスクも含んでいました。私たちはあらためて、「自由や自律的な判断を尊重すること」と「場や機会を守ること」のあいだで、どうバランスをとるかを考えさせられました。
自由な表現で関係性を引き出すメソッド「動物クイズ」
また、Kickin' Dance Famとの交流からも、多くの学びがありました。あしおとでつながろうプロジェクトでは、舞台上では相手に触れずに表現するというルールを設けています。発達障害や自閉スペクトラムなど、相手との適切な距離感をつかみにくい特性がある人も多く、安心して共にいられる工夫として続けてきたものです。
一方で、Kickin' Dance Famのみなさんは、肘タッチやハイタッチなど、身体的なコンタクトが多く、それらは信頼のサインとして機能していることが見て取れました。身体的なコンタクトに対してあしプロが感じているような危うさを、Kickin' Dance Famではどう考えて対処しているか尋ねるなかで、むしろ「合意されたコンタクトの型」があることで、危うさがコントロールされているのではないかという気づきが生まれました。
信頼のサイン
禁止や静止をできるだけしたくない。でも、どうしてもそうせざるを得ないこともあります。例えば、自分が話をしているのに突然相手に無視されたり割り込まれたりしたとき。そんなとき、「それはダメだよ」ではなく「私は嫌だよ」という伝え方をできたらいい、そんな話も挙がりました。日本の道徳教育の中では、拒否しないことが思いやりであると教えられがちですが、ハラスメントを防ぐためには健全に拒否する力も大切だと感じています。
ルールは、誰かを制限するためではなく、自由な関係を続けるためにある。でも、ルールだけでは守れない自由もある。その間で揺れながら、どう共にいられるかを問い続けることが、私たちが目指すフェア・クリエーションなのだと、あらためて感じました。
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石幡愛(アートマネージャー/事業評価コーディネーター)
東京大学教育学研究科修士課程修了。NPO法人クリエティブサポートレッツ事務局、としまアートステーション構想事務局、墨田区文化振興財団職員を経て、現在は東京藝術大学社会連携センター特任助教として、産学官連携事業のコーディネートを行っています。
私にとってアートマネージャーとは、コミュニティソーシャルワーカーに似た存在です。これまで、教育・福祉領域に基盤を持ち、対人援助の実践研究からアートへと接続してきた経験をもとに、社会的課題とアートを架橋するプロジェクトにおいて、多様な人々の想いを引き出し、対話を重ね、学び合い、共に成長する場を築くことを目指しています。




