※今回の文章には、出産・育児・LGBTQ+に関する内容が含まれます。読むのがつらい方は、どうか無理せず、ここで読むのをやめてくださいね。私には、この作品を作るにあたって、どうしても入れたい物語がありました。それは、同性同士で子どもを持とうとしている方や、すでに育児をしている方々の物語です。「妊娠・出産・育児」というテーマは、「男女」や「異性間」だけのものではありません。今も、そしておそらく昔から同性カップルで子育てをしている方はいます。OrgofAでは、2020年に『ひびそい』、そして2023年には『虹より高く、あざやかに』という作品で、LGBTQ+当事者の声や、「結婚の自由をすべての人に」訴訟について描いてきました。その人たちの物語を、なかったことにしたくない。そんな気持ちから、作・演出の髙橋正子さんに「同性間で子どもを持つことの物語も入れてほしい」とお願いしました。今の世の中、インターネットで調べれば、いろんな情報が出てきます。たとえばGoogleで「同性 子ども」と検索すると、最初に出てくる文章にはこう書かれています。「日本では同性婚が法的に認められていないため、同性カップルが子供を授かるにはさまざまな課題があります。しかし、養子縁組や里親制度、生殖医療を活用することで、子供を迎え入れることは可能です。精子提供を利用すれば、遺伝的につながりのある子供を持つこともできます。」「さまざまな課題」この言葉だけでは言い尽くせないような、もっと深い感情が、そこにはきっとある。そう想像するのは、難しいことではありません。2025年2月、髙橋正子さんと一緒に、『虹より高く、あざやかに』でもご一緒した中谷衣里さんと、そのパートナーの方にお話を伺いました。子どもを持つまでの流れや、その過程で直面するハードル。精子バンクの利用へのハードル。 SNSを通じた精子提供の現実。法的に認められていないことによる社会的な困難。当事者同士の間にすらある不寛容さ。心ない言葉。そして、今まさに育児をしている同性カップルからのお手紙。2時間ほどの取材で、そのすべてが実感とともに私たちの中に流れ込んできました。取材が終わったあと、1時間ほど私たちはそのカフェから動けずにいました。何を描くべきか。どう表現すべきか。悶々と考え込んでしまったのです。──さぁ、どうしようか。 でも、絶対にいい作品にしよう。そう決めて、二人で店を出ました。この作品は、札幌に暮らすたくさんの方々の言葉でできています。それは、この作品が「今」「私たちが」「生きている」ことに視点を当てている、ということでもあります。いつかこの作品が古くさくなって、「令和ってこんな感じだったんだ〜。今じゃ考えられないよね」なんて言われる日が来るとしたら、少しでもその未来に近づけるように。そんな想いが込み上げてきた、取材でした。





