前回の記事では、僕たちGaikaが「外貨を稼ぐ」ためにオーストラリアの古着市場へ挑戦し、仕入れの構造課題や世界中の卸業者との交渉に取り組んでいる話を書きました。しかし、現場を回っていく中で、もうひとつ絶対に見逃せない課題にぶつかりました。それが「衣服廃棄」という巨大な問題です。一見すると外貨事業とは無関係に見えるかもしれません。けれど、僕たちにとっては外貨を稼ぐというGaikaの原点とは切っても切れない文脈の中にあります。Gaikaは「外貨を稼ぎ、日本の未来を創る」ために海外へ出ています。でも、外貨はただの理想論から生まれるものではありません。現場に入り、課題にしつこく向き合い、そこに価値を提供できたときにだけ、外貨が動く。外貨を稼ぐとは、結局その積み重ねでしかありません。オーストラリアでは毎年およそ20万トン以上の衣服が埋め立てられています。1人あたり年間23kgを捨てている計算で、さらに1人年間56着を購入し、平均7回しか着られずに手放されると言われています。便利さや低価格は生活を豊かにする一方で、「買ってすぐ捨てる」という文化をつくり、衣服廃棄は環境負荷の大きな要因になっています。衣料産業は世界のCO₂排出量の約10%を占めており、残念ながらオーストラリアのファッション消費も温室効果ガス排出に確実に貢献してしまっています。政府も問題を重く見ており、2027年までに衣服廃棄の60%(約12万トン)を埋め立てから回避する目標を掲げています。でも、現場を歩いて、多くの人たちと関わって気づいたのは、「環境意識が低いから捨てる」のではないということ。本質はもっとシンプルでした。「捨てない選択肢が少なすぎる」だからこそ、善意に頼る仕組みではなく、誰もが「自然と捨てない」方向に進める仕組みをつくらなければならない。ここに、僕たちの事業としての価値があると確信しました。衣服廃棄には環境問題だけでなく、一時滞在者の生活事情も深く関わっています。留学生やワーキングホリデーの多くは、学期やシフトの切り替わりに合わせて住まいを頻繁に移り、収納は最小限、移動は公共交通機関頼みという現実に直面します。帰国前や退去直前は「試験・アルバイト・引っ越し」が同時並行で進み、衣類の選別や持ち出しに時間を割けません。車がない、寄付する場所が分からない、英語のやり取りに不安がある、こうした小さなハードルが重なるほど、まだ着られる服が「とりあえず捨てる」に傾きます。これは個人の問題にとどまらず、都市全体の循環を阻む構造的な課題です。EcoWearが目指すのは、留学生の事情に寄り添い、「捨てない文化を醸成すること」です。具体的な活動は、大学やカフェ等への回収ボックス設置と無料の出張回収です。開始当初は留学生中心でしたが、現在は永住者や家族にも需要が広がっています。こうした背景のもと、EcoWearは「捨てないことを当たり前にする」ことを目的に、一時滞在者の生活支援と古着回収を掛け合わせた取り組みを始めました。出発点は留学生・ワーキングホリデーでしたが、いまは永住者や家族にも同様のニーズが広がっています。だからこそ、生活の事情に合わせて負担なく衣服を手放せる仕組みを、コミュニティ全体に届く形で整えています。私たちは、衣服を「買って、着て、捨てる」から「買って、着て、循環させる」のサイクルへ。20万トンという巨大な課題を、街ぐるみで少しずつ現実的に動かしていきます。そして、こうして生まれた循環の価値を、そのまま外貨へと変換していきます。捨てられるはずの古着を価値に変え、その価値を世界に届け、外貨として日本へ還流させる。これこそがGaikaが目指す「現場からGaikaを生み出し、日本の未来を創る」挑戦です。株式会社Gaika代表取締役社長 兼 CEO坂本大地






