
今回の活動報告は、新進気鋭の指揮者である大井駿さんからの寄稿記事です。
当日は、チェンバロ奏者として参加していただく大井駿さんから、ヴィヴァルディ、バッハそれぞれの譜面を紹介しつつ、通奏低音とはなにか?というテーマについて解説いただきます。必見です!
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みなさんは、「通奏低音」という言葉を聞いて、どんなものを想像しますか?
通奏低音は、イタリア語でBasso Continuo(バッソ・コンティヌオ)と呼ばれますが、このcontinuoは、英語のcontinueと同じ言葉で、まさに「継続的に演奏される低音(バス)」という意味です。これは、音楽は低音から支えられるもの、という考えからきています。
経済の世界でも、「通奏低音」という言葉がメタファー的に使われます。例えば「現場の労働力こそが産業の通奏低音だ」のような形で用いられますが、経済界などでは、「見えないけどずっと流れているもの」、のような意味合いが強いです。
話を音楽に戻しましょう。音楽における通奏低音とは、簡単に言えば、低音楽器が演奏するパートのことを指します。さらに具体的にいえば、「数字」が書かれた低音パートのことを通奏低音といいます。そして、通奏低音パートには、楽器の指定がないことが多いのです。または、楽器の指定があっても、違う楽器で弾くことも多くあります。低音楽器といえば、チェロやコントラバスなどが挙げられますが、他にもファゴットやテオルボ、さらにはチェンバロなどもその仲間に入ります。
例えばヴィヴァルディの四季の編成を見ると、ヴァイオリン・ソロに続いてヴァイオリンI、ヴァイオリンII、ヴィオラ、そして「オルガンとチェロ」の5つのパートがあります。この「オルガンとチェロ」こそ、通奏低音のことです。楽譜を見てみると、数字が書かれています。この数字は、ハーモニーを表しており、例えば、「ド」の音の上に3と5が縦に並んで書いてある場合は、「ド」の音の3度上の「ミ」、そして5度上の「ソ」を弾きます。基本的にこの3つの音が鳴っていれば何を弾いても許されます。
これらの和音はチェンバロなどの鍵盤楽器や、リュートなどの撥弦楽器によって、即興で演奏されますが、その即興に関してはまた別の回にてご紹介します。
さらには、バッハの二重協奏曲においては、「コンティヌオ」と書かれたパートのみで、楽器の指定は全くありません。しかし、これをどの楽器で演奏するかも、実はセンスが問われるものなのです…
そして今回の演奏会では、ヴィヴァルディの「オルガンとチェロ」パート、そしてバッハの「コンティヌオ」のパートを、チェロ、コントラバス、そしてチェンバロでお届けします。一つのパートを3種類の楽器で演奏し、土台からどのように彩りを添えるのかを、ぜひお楽しみください。
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いかがでしたか?
通奏低音という言葉の向こうに、音楽を支える豊かな世界が広がっていましたね。
次回は引き続き、大井駿さんに「バッハと通奏低音」について執筆いただきます。
どうぞお楽しみに。






