
1.はじめに
《四季》の「春」は3つの楽章で構成されていますが、第3楽章はその締めくくりにふさわしい、活気にあふれた音楽です。今回は、春の喜びを身体全体で感じるようなこのフィナーレについてご紹介します。
2.春の祭り、喜びの舞踏
この楽章は、舞曲風のリズムが特徴です。曲の冒頭から、軽快な足取りを思わせる音型が繰り返され、人々が輪になって踊るような光景が浮かびます。
この部分はソネット(詩)では「羊飼いたちが春の訪れを祝い、祝祭的に踊る」と描かれており、自然と人間の調和がテーマとなっています。
独奏ヴァイオリンには細かい音の装飾が多く、軽やかで跳ねるような動きがあります。弾いていると、自然にリズムに乗って身体が動くような感覚になります。
3.技巧と感情の両立
第3楽章は、テンポも速く、細かな音の動きも多いため、演奏技術としてはなかなか難しい部分もあります。それでも単なる技巧の誇示にならず、あくまで「踊り」や「喜び」の音楽として伝わってくるのが、ヴィヴァルディの素晴らしいところです。
演奏者にとっても、「うまく弾く」こと以上に、「どう楽しさを伝えるか」が問われる楽章と言えるかもしれません。
4.小池彩夏のコメント
この楽章では、春のエネルギーが身体を通して弾むような感覚を覚えます。激しいリズムの中にも、音の粒や表情を丁寧に描くことで生命の輝きを表現したいと思っています。嵐のような勢いの裏にある温かさや喜びを、音で伝えることが目標です。自然が踊るような一体感が心地よいです。
5.次回予告
次回は再び大井駿さんからの寄稿記事です。
ヴィヴァルディとバッハ──ふたりは一度も会わなかったのに、音楽ではしっかり“響き合っていた”。
大井さんがその意外で胸躍る関係を、物語のように解き明かしてくれます。お楽しみに!






