
4. 研究結果・考察
①インタビュー調査の結果
医療現場では ACP をがん治療の後期など人生の最終段階で導入されることが多く、その内容は「本人 が何を大切にしたいか」をもとに治療方針を決める重要なプロセスであることが分かった。また、「死 について話すことがタブー視される日本社会の傾向」や、「若い世代が ACP を知る機会の不足」も指摘 された。また、若年層が早い段階で“自分らしさ”や“人生観”を言葉にしておくことの意義につい て共通して語られており、高校生において ACP を実施することの必要性を感じた。 ②質問紙調査の結果 全体の約 7 割が身近な人の死について考えたことがあると回答した一方で、身近な人と死について話 す機会はないと回答した人も約 7 割であった。しかし、身近な人と価値観は共有できていると感じて いる人はおよそ 6 割と半数を超えた。また、自分自身の死生観を「よくわからない」と感じている生 徒も約 6 割であり、多くの高校生が自分の価値観や死に対する考えを深く意識する機会が少ないこと が明らかとなった。(図 1 参照)
③「もしばなゲーム」実践の結果
「もしバナゲーム」のようなカードゲームにより ACP のハードルが下がること、また生き方を考える 哲学的対話ができることを実感した。このことから、ACP は自分の価値観を見つめ、今後の「生き方」 を考える契機となりうるという示唆を得た。
④高校生版「わたしの想いノート」の作成と活用
高校生向けに作成したこのノートは自分の価値観が可視化できるもの、かつ高校生が自分の想いを言 語化しやすい仕様にした。ノート記入者からは、「自分の死について考えたことがなかったが、死につ いて考えることにより、何を大切にして生活したいか、自分についてじっくり考えるきっかけになっ た」「迷ったときにこのノートを見返すことで、決意を新たにすることができると思った」という声が 聞かれ、若年期における ACP の有用性とノートが ACP の入り口として活用できることが推察された。
5. 結論・今後の展望
本研究では、高齢者や重篤患者に利用されてきた ACP が、アイデンティティの確立過程にある高校生 にとって、「生き方」を考える上で有用であることが分かった。また、作成したノートが ACP の入り口 となりえることが示唆された。今後は ACP が、十代の自殺防止に有効的であるかさらに研究を深めて いきたい。



