
第3回:大量生産への静かな反乱。地域で完結する「真の循環」
――はじめに
日光商事の川村です。
世の中では「SDGs」という言葉が飛び交っていますが、その本質は何でしょうか。第3回は、初山社長が抱く大量生産社会への危機感と、足利の資源を自ら焼いて「炭」にする、泥臭くも真実味のあるサステナブルの形に迫ります。
「安いから海外へ」が失わせたもの
川村(日光商事):初山社長は、以前から現在のものづくりの在り方に疑問を呈していらっしゃいますよね。
初山(初山染工):ええ。特に平成5年(1993年)頃からの「産業の空洞化」は、日本の技術を根底から壊したと思っています。
多くのメーカーが「中国で作れば安いから」と、利鞘(りざや)を稼ぐために生産拠点を海外へ移しました。その結果、足利のような産地の加工賃が叩かれ、技術を持つ職人が廃業に追い込まれたんです。
川村:それは単なるコストの問題ではなく、文化の断絶でもありますね。
初山:そうです。でも、為替が変わり、輸入コストが上がっている今こそ、自分たちの足元を見直すべきです。私は「地産地消」、つまり自分たちの土地で作り、自分たちの土地で消費するサイクルに戻るべきだと考えています。
足利の「廃棄物」を、自ら焼いて炭にする
川村:その「足元を見直す」という精神が、炭染の原料作りにも表れている。
初山:炭染に使う炭は、自分で焼いています。例えば、市役所が街路樹として手入れした後に捨てられる桜の枝。あるいは、隣町の栃木県鹿沼市で麻農家から出る、本来は廃棄されるはずの麻の殻などを譲り受けています。
炭染用の炭と桜の枝
川村:地元の未利用資源を、職人自らが炭に変える。
初山:人任せにはしたくないんです。自分で焼くからこそ、その炭がどんな性質を持ち、どんな色に染まるかがわかる。手間はかかりますが、これが私なりの「素材への責任」です。
「最後は土に還る」のが、本物のSDGs
川村:最近は「サステナブル」をうたうブランドが増えましたが、初山さんの考えはもっとシンプルです。
初山:今のSDGsは、どこかポーズ(見せかけ)だけになっているように感じます。私たちがやっていることは、必要なものを、必要な人に届け、役割を終えたら土に還って肥料になる。これだけです。
川村:天然素材の炭と布。それだけで完結しているからこそ、不純物がない。
初山:炭染で余った染料や炭は、そのまま肥料として牧草地に撒くこともできます。
人間が無理に手を加えたシステムではなく、自然のサイクルにものづくりを合わせる。それが、120年続いてきた私たちの「答え」なんです。
おわりにーー
効率やコストだけを追い求める大量生産の陰で、私たちが何を失ってきたのか。そして、見せかけではない「本当の循環」とは何か。初山社長の妥協のない姿勢は、これからのものづくりのあり方を深く問いかけています。
次回は、初山社長インタビューの【最終回】です。初山社長との対談を通じて私が強く感じた「本物の価値」について、120年の歴史が教えてくれる、暮らしやビジネスを豊かにするための「知恵」について語り合います。



