
前回の記事で、アニマルウェルフェアの改善は畜産動物の苦痛軽減以外にも、さまざまなメリットがあることを説明しました。
アニマルウェルフェアは政府や生産者だけが取り組むべき課題ではありません。
私たち消費者の行動も、畜産のあり方を変える大きな力になります。
ここでは、畜産動物を救うために、日常生活の中で私たちができることをご紹介します。
◆アニマルウェルフェアについて知り、周囲の人にも伝える
大切なのは、まず「知ること」です。
畜産動物が実際に、どのような環境で飼養されているのかを知ることが
よりよい選択をし、行動を起こすための第一歩となります。
日本では、アニマルウェルフェアはまだ広く知られているとは言えません。
家族や友人など周囲の人に話し、1人でも多くの人が知ることで、社会の意識を少しずつ変えていくことができます。
◆アニマルウェルフェアに配慮した商品や認証商品を選ぶ


韓国で販売されている卵には、にわとりの飼育環境を示す番号が印字されている(たけえり撮影)
消費者の選択は、生産のあり方に大きな影響を与えます。
アニマルウェルフェアに配慮した商品を選んで購入することで、そのような取り組みをしている生産者や企業を支援することができます。
例えば、平飼い(ケージフリー)卵や妊娠ストールを使用していない豚肉、放牧牛由来の牛乳、過密飼育されていない鶏肉などがあります。
また、「動物に配慮して生産された」と認証された商品を選ぶのも一つの方法です。
日本には、アニマルウェルフェア畜産協会によるアニマルウェルフェア畜産認証や、山梨県によるやまなしアニマルウェルフェア認証があります。(しかし、まだ十分に普及しているとは言えません。)
消費者がアニマルウェルフェアに配慮した商品を手にとるようになれば、 生産者は、畜産動物がより快適・健康に過ごせるようにするための設備に投資しやすくなります。
さらに、こうした商品の需要が高まれば、アニマルウェルフェアに配慮した畜産に挑戦する農家が増え、今よりもっと多くの動物が救われることになります。
◆畜産物の消費を減らす
本物のお肉そっくりの植物肉(たけえり撮影)
アニマルウェルフェアを向上させようとすると、従来のように限られた場所で大量の動物を飼養することは難しくなります。
消費者側も、畜産物の消費量をある程度減らすことが求められます。
畜産物の消費が減れば、アニマルウェルフェアは向上し、飼養される動物の数も減ります。
すなわち、苦しむ動物を減らすことにもつながります。
また、動物のえさを大量に生産する必要がなくなるため、環境負荷も軽減されます。
畜産物を食べなければ、苦しむ動物はゼロになります。
しかし、それは多くの人にとってハードルが高いかもしれません。
まずは無理のない範囲で、少しずつ消費量を減らしてみるのはいかがでしょうか。
◆食べ物を無駄にしない
アニマルウェルフェアを考える上では、食べ物を無駄にしないことも重要です。
世界では多くの動物が食用に飼育されています。その一方で、大量の食品が廃棄されています。
肉や卵や乳製品が無駄に捨てられるということは、本来失われる必要のなかった命が無駄になっているということでもあります。
また、動物を育てるために、環境に負担を掛けて生産した飼料も無駄になります。
私たちは「命をいただいている」という意識を持ち、必要な分だけ生産し、必要な分だけ購入し、できるだけ無駄にしないよう心がけることが大切です。フードロスの削減も、動物への敬意につながります。
◆企業の取り組みに関心を持ち、意見する

AIで作成
近年、世界の多くの企業がアニマルウェルフェアへの取り組みを進めています。特に、ケージフリー卵の使用を宣言する企業が増えています。
このような動きの背景には、消費者や投資家の関心の高まりがあります。
スーパーや飲食店、ホテル、食品メーカーなどの企業は、日々大量の畜産物を使用・販売しています。
こうした企業の取り組みに注目し、消費者として応援し、必要に応じて「アニマルウェルフェアに配慮した畜産物を調達してほしい」といった意見を伝えることも、企業の行動に大きな影響を与え、動物に優しい食品の需要を大幅に増やす(動物に優しくない食品は淘汰される)ことにつながります。
◆政府にアニマルウェルフェア関連の法整備を求める
アニマルウェルフェアの改善には何といっても、国による制度づくりが最も必要です。
世界では、アニマルウェルフェアに配慮した飼養方法や屠畜方法を法律で定めている国も多くあります。
狭いおりでの飼育の禁止、麻酔下での外科処置の実施、長距離輸送の制限、屠畜前の気絶処理の義務化など、動物の苦痛を減らすためのルールを法制化するよう、政府に地道に求めることが大切です。
また、農家がアニマルウェルフェアに配慮した畜産へ移行するための支援や
卵の雌雄判別技術といったアニマルウェルフェア関連技術の開発・導入を後押しする政策も必要です。
私たち市民が関心を持ち、声を上げることは、こうした制度づくりを促すでしょう。
◆絵本を読んで共有する!

私が今回出版する絵本を読んで、是非多くの方に感想を共有していただきたいと思っています。
この絵本が広く読まれることで、少しでも多くの人が畜産物の生産背景に思いを馳せ、アニマルウェルフェアについて考えるかもしれません。
そして、スーパーで平飼い卵を選んだり、企業に意見を届けたりするなど、何らかのアクションにつながる可能性もあります。
消費者の意識が変われば、農家は動物に優しい飼養環境の整備に投資しやすくなります。
その結果、より多くの畜産動物が、少しでも良い環境で生きられるようになるかもしれません。
この絵本が、アニマルウェルフェアについて知り、考え、行動する人を増やすきっかけになれば嬉しいです。
畜産動物のアニマルウェルフェアの改善は、特に日本においては大きな課題の一つです。
しかし、このように私たち一人ひとりにもできることがあります。
こうした小さな行動の積み重ねが、畜産の未来を確実に変えていきます。
私たちが毎日食べている卵や肉、乳製品。その背景にある動物たちの暮らしにも目を向けながら、より良い社会を考えていくことが大切だと思います。



