支援者の皆様、いつも温かい応援をありがとうございます! そして、この記事で初めて本作を知ってくださった皆様、数あるプロジェクトの中から見つけていただき心より感謝いたします。本作『Witch of Yelekedis』は、輝かしい王道の英雄譚ではありません。本作の深層に横たわるのは「世界の維持・存続」という大義名分の影で、一人の個人の尊厳が徹底的に搾取され、すり潰されていく社会構造の歪みです。その歪みの中心で、心も、体も、居場所も、すべてを奪われた存在。それが始祖の四柱の一角であり、最初に誕生した西のエルフ――「黄金のラドゥイアゴス」です。今回の記事では、自らを「最強で最弱」と自嘲するラドゥイアゴスが抱える、暗澹たる孤独と絶望に触れていきます。世界の存続を支える「インフラ」という名の檻物語の序盤、あるルートの中で東のエルフの外交特使メサキナはこのようなことを語ります。ラドゥイアゴスとは巫覡(ふげき)のような存在であると。ラドゥイアゴスは、世界に満ちる根源物質「マナ」の汚濁を浄化できる唯一の存在。ラドゥイアゴスが機能を停止すれば、マナの汚濁から魔物がひっきりなしに発生するようになり、世界は魔物に呑み込まれ、やがてあらゆる生命は死に絶えるとされています。その圧倒的な希少価値ゆえにラドゥイアゴスは「個人」であることを許されませんでした。現在のラドゥイアゴスは、古城の奥深くに据え置かれた「世界を存続させるための生体インフラ」に過ぎません。徹底的に管理され、生かされ、ただ呼吸を続けることだけを義務付けられた装置。「生かされている」だけの存在。その事実がもたらす絶望的な無力感が、かつての賢者から覇気を奪い、酒へと逃避させ、自暴自棄な言葉を吐き散らす「無気力な抜け殻」へと変えてしまったのです。剥ぎ取られた自認と居場所ラドゥイアゴスの悲劇を語る上で避けて通れないのは、その「身体」と「魂」の不一致、そして社会による暴力的なラベリングです。ラドゥイアゴスは、半陰陽という特異な身体を持って生を受けました。しかし、その魂は紛れもなく「女性」です。若かりし日のラドゥイアゴスが何より愛したのは、女性たちと共に集い、静かに糸を紡ぎ、布を織り上げる時間。その規則正しく右へ左へと滑る杼の音を背景に、談笑を楽しむ空間こそが、ラドゥイアゴスが自分らしくいられる場所だったのです。しかし、その楽しみは「社会」という怪物によって食い破られます。ラドゥイアゴス自身すらも知らなかった「身体的特徴」が発覚するや否や、浴びせられたのは心無い影口と、好奇の目、そして冷酷な排斥。居場所を奪われたラドゥイアゴスは、コミュニティの端で、たった一人で糸を紡ぐようになります。さらに過酷だったのは、外の世界がラドゥイアゴスに「王」としての役割を求めたこと。つまり「男」という役を期待されるようになったことでした。「男ならば、それを証明してみせろ」向けられた悪意は、時に逃げ場のない暴力となってラドゥイアゴスを襲いました。最強の魔道士と謳われながら、恐怖に身を竦ませ、自分の心一つ守れなかったという屈辱。魂を踏みにじられたその夜の記憶は、今もラドゥイアゴスの芯を凍らせたままです。現在、ラドゥイアゴスが独りで外を歩くことは叶いません。今のラドゥイアゴスを支配しているのは、「もう誰にも見られたくない、触れられたくない」という、喉を掻き切るような恐怖心なのです。ラニャーマが呑むべき「毒」主人公ラニャーマがラドゥイアゴスと対峙したとき、そこにいるのは伝説の賢者でもなく、最強の英雄でもありません。酒の匂いを漂わせ、小さな物音に怯え、過去の泥濘から抜け出せない「壊れきった一人のエルフ」がうずくまっているだけです。本作は、プレイヤーであるあなたに、あまりに不躾な問いを突きつけます。あなたは、この歪んだ世界の共犯者となり、ラドゥイアゴスを「便利な装置」として飼い殺し、歪な平和を享受し続けるのか?それとも、世界の破滅を天秤にかけ、ラドゥイアゴスを一人の「個」として救い出すのか?はたまた、ラドゥイアゴスの背負う地獄を肩代わりする道を模索するのか?本作に、好感度を稼げば辿り着ける「安易な正解」など存在しません。ラニャーマが発する言葉の一つひとつが、ラドゥイアゴスの心を砕く楔になることもあれば、ラドゥイアゴスを地獄の底から引き上げる指先になることもあります。時には、ラドゥイアゴスの甘えを冷徹に叩き潰す必要があるかもしれません。時には、共に地獄の底まで沈む覚悟が必要かもしれません。結末の「救い」は、どのようなカタチを取るのか――ラドゥイアゴスが再び陽の光の下で、誰に怯えることもなく糸を紡ぐ日は来るのでしょうか。あるいは、名前も知らぬ誰かのために搾り取られ、枯れ木のように朽ちていくのか……。この物語は、私の個人的な情熱から生まれた、非常に偏執的で、そして切実な叫びです。あなたが、この「最強で最弱の魔道士」の運命を見届ける目撃者となってくれることを、心より願っております。




