
麗麗-reirei-の救命関係活動の中でも特に特徴的なのが、ライブハウスでの公演中に行う心肺蘇生トレーニングでしょう。NHKニュースや情報番組でも取り上げられたこの取り組みは、「好き」や「楽しい」から始まるそなえのカタチを示したひとつの例です。
多くの人が救命であったり防災であったりの大切さは何となくわかっている。でもその分野に触れたことがない人からしてみたら、講習へ参加する時間をつくったり、申込みの手間を割いたり、時には費用がかかったり…は、なかなか大変なことです。
救命や防災に携わる人がどれだけ「大切な命を守るため!」と正論を述べたところで、実際の行動に移せる人は少ないものでしょう。
ならばまずは麗麗-reirei-ライブに来てくれる人たちの第一歩を起こそう!
ということでできあがったのが、この『NAGOYA防災ライブ +1』シリーズです。
救命講習もライブハウスも初めての人にはハードルが高い
麗麗-reirei-のライブは「老若男女誰もが楽しめる」を掲げ、下は小学生から上は60歳以上の方まで、幅広い年代の方にお越しいただいています。毎月2回の定期公演では椅子を設置するなど、初めての方でも不安がないよう努めています。
ちなみに麗麗-reirei-のライブ観覧最高齢は91歳(当時)の東海林のり子さん。アナウンサー・レポーターとして活動する中で、90年代からビジュアル系シーンを追い続けている人生の大先輩です。
ライブに通い続けることが元気の秘訣だそうです
ライブを実際に観に来てくださった方は麗麗-reirei-のライブの楽しさ・面白さを実感くださるのですが、その前に大きな課題があります…。
それは、ライブハウスに足を踏み入れるハードルの高さ。
薄暗い空間、狭い通路、壁一面に貼られたポスター、座席指定は無い会場、爆音、振り付けとか知らないと怒られるのかなという不安 etc…
ライブが好きな人からしてみたら普通…そして楽しい空間でも、初めてライブハウスに行こうか迷っている人にはかなりの不安や恐怖を伴うものです。
これって、救命や防災を取扱う講習会なども同じことがいえるのではないでしょうか。
どれだけためになる内容でも、それを学んでほしい人が講習会に来てくれないと始まらない。
受け身で待っているのではなく、対象となる人たちの「日常」にいかに溶け込み、第一歩を後押しできるかが大切です。
そんなビジュアル系バンドの悩みと、救命や防災分野の悩みを踏まえてできあがった『NAGOYA防災ライブ +1』シリーズ。麗麗-reirei-のライブに来てくださる人という限られた属性ではありますが、一般的な啓発の方法では届かなかった層のアクションを確実に引き起こしてきました。
ライブに参加したら学びが起きる
このライブでは救命分野のほか、名古屋市防災危機管理局からの要望等も踏まえ、地震や水害へのそなえにも着目してきました。後に引っ越しをした麗麗-reirei-のファンから「不動産屋さんでハザードマップを見ながら洪水のおそれの説明などを受けた。麗麗-reirei-のライブで聞いたやつだ!と思った」という報告も頂きました。
名古屋市内の全戸にハザードマップと防災ガイドブックが頒布された年(2023年)でした
ライブで披露する楽曲やトークも、すべて防災や救命にちなんだ意味づけがなされた編成。
そして演奏中に誰かが突然心停止となり…で始まる心肺蘇生トレーニングは、「倒れたメンバーを救う」という動機付けがなされたものであり、「見ず知らずの誰か」ではなく「自分が守りたい人は誰か」を皆さんに考えていただくきっかけづくりでもありました。
この回は心肺蘇生練習マネキン10体を使い、ひとり1分ずつ胸骨圧迫を練習(全員参加)
Vol.1でご紹介した『しんぱいそせいのうた』を使ったひとり1分間(全員参加)の胸骨圧迫練習のほか、麗麗-reirei-の楽曲の中から胸骨圧迫に適したリズムの『タマシイデイズ』や『どえりゃ∞INFINITY』を使い、曲が流れる時間中、皆で距骨圧迫をリレーしていく練習も行いました。
小学生ふたり。熱心に取り組んでくださいました。
おそらく全国(世界でも?)でも例のないこの取り組みは、NHKのニュースや情報番組、ラジオでも複数回取り上げられることとなりました。内容の珍しさなどから、NHKのWEBニュース記事の閲覧数が通常の10倍以上になることもあったそうです。
NHKの夕方の情報番組『まるっと!』にも生出演し、10分近い特集を組んでいただきました。
ライブ中に倒れた(演技)近藤りょーじが公共の電波で発信されました
全員が心肺蘇生法を練習しないと次の曲に進まないしくみです
ビジュアル系バンドマンとしてはちょっと変わったテレビ出演…。親は喜んでました(笑)
この『NAGOYA防災ライブ +1』はこれまで5回開催しているほか、屋外イベントや月例ファンイベントでも心肺蘇生やAEDのトレーニングを行ってきたため、麗麗-reirei-ファンの中には約3年で10回近くトレーニングを受けた方も。なかなかの練度です。
月例ファンイベントでの心肺蘇生・AEDトレーニング
意識の変化…そして実際の傷病者対応という成果
2024年1月のライブ後にファンへのアンケートを行いました。
麗麗が2023年9月から2024年1月のライブステージで行った計5回の心肺蘇生トレーニングのいずれかに参加した人の救助に関する意欲を調査したところ、特に「見ず知らずの人を助ける意欲」が37.7%アップしました。
これらのライブステージやイベントに参加したファンがその後、街中で傷病者にたまたま出会い救護を行ったなどの報告が、これまでに6件ありました。
皆、麗麗との救命法トレーニングが一歩を踏み出すきっかけや後押しに繋がった旨を話しており、"推し"から学んだことが良い行動につながることを示す貴重な報告となりました。
また、麗麗メンバーもこれまで2回(プライベートで出向いたライブハウス/プライベートで利用した店舗)傷病者に遭遇し、救護を行うに至っています。
個のスキル向上から地域の仕組みづくりへ
ファンのスキル向上を図ってきたものの、それだけで命を救うことはできません。
例えば、心臓突然死の防止に絶大な効果を発揮するAEDが今や街中の至ることろに設置されていますが、AEDの場所を知らなかったり、AEDがすぐ近くに設置されていないようでは、救命率を高めることはできません。
また、職務上の義務がない人に対して心肺蘇生法等のトレーニングを行い、実際の傷病者発生時の対応を求めるということは、それによって生じるマイナス面にも向き合う必要があります。
麗麗-reirei-はこの点にもフォーカスし、取り組みを継続してきました。
次回は「AEDの設置場所の認識」や「救助者の心的負担のケア」に関する取り組みについてお話しします。



