
軒下にはカマキリ。
父は、「今年は雪が積もるな。」と言っていました。
家の軒下には、毎年カマキリの卵がありました。
茶色の小さな卵のかたまり。
秋になると、父はそれを見上げて、よく言っていました。
「今年は雪が積もるな。」
卵の位置が高い年は、雪がたくさん降る。
低い年は、あまり積もらない。
子どもの私は、「そんなことまで分かるんだ。」と、不思議な気持ちで父の話を聞いていました。
今なら、天気予報も、スマホを開けばすぐに分かります。
でも父は、
空を見て、
山を見て、
虫を見て、
季節を感じていました。
カマキリは、ただそこにいるだけなのに、
父にとっては、冬を知らせてくれる大切な存在だったのかもしれません。
そして今思うと、
あの家は、人だけではなく、
虫たちにとっても、安心して命をつなげる場所だったのでしょう。
私がつくりたい場所も、そんな場所です。
人が帰ってくる。
子どもが遊びに帰ってくる。
春にはツバメが帰り、
夏には三毛猫がごはんを食べに来て、
秋にはカマキリが軒下を選ぶ。
そんな、人も、鳥も、虫も、猫も、
みんなが安心して帰ってこられる場所を、
少しずつ育てていきたいと思っています。
本当に作りたいのは、カフェではありません。
人も、鳥も、虫も、猫も。
みんなが安心して帰ってこられる、現代人のための縁側です。
丈右ヱ門



