
ティティアには三つの「はじめて」があります。
一つは、日本を訪れた最初の西洋女性
二つ目は、ピアノを日本へ持ち込み、演奏した最初期の西洋女性
そして三つ目は、抹茶をいただいた最初の西洋女性
日本で現存する最古のピアノは、シーボルトが持ち込んだものとされています。しかし、シーボルトよりも前に、日本へピアノを持ち込んだ女性がいました。それがティティア・ベルフスマです。
下関の大年寄で阿蘭陀宿をつとめた伊藤家のコレクションの中に、スクエア・ピアノを弾く女性を描いた細密な白描画(写真)が現存しています。そこに描かれているのが、ピアノを弾くティティアと思われる女性です。
ティティアの来日は1817年。
シーボルトの来日は1823年です。
つまり、ティティアはシーボルトよりも先に、西洋の音を日本へ運んできた女性であった可能性があります。
さらに興味深いのは、彼女の書簡に見られる一節です。
彼女の書簡より——
年配の紳士が正装で現れ、藺草の敷物に跪き、緑の飲み物が入った小さな黒い椀を差し出した。三度回し、頭を下げ、両手で。通訳が言った。「これは敬意です。ゆっくり受け取ってください。」その所作は、音のない舞のようだった。静けさは深く、ペトロネラさえ息を止めていた。苦いが、温かい。彼は語らなかったが、私は招かれていると感じた。耳ではなく、心で。——
この「緑の飲み物」は何だったのでしょうか。これは抹茶であった可能性が高いと考えています。もちろん、書簡に「抹茶」と明記されているわけではありません。
しかし、小さな黒い椀、緑の飲み物、三度回して両手で受ける所作、そして静寂の中でいただく様子。そこには、茶道の一服を受けた情景が重なります。
日本を訪れた最初の西洋女性。
日本にピアノをもたらした女性
抹茶をいただいた最初の西洋女性。
ティティア・ベルフスマという存在は、日蘭交流史の中で、まだまだ語られるべき余白を持っているように思います。



