日蘭交流の記憶――川原慶賀筆「ブロムホフ家族図」修復プロジェクト

長らく公開されることのなかった一枚の絵があります。 現在、オランダ国立世界文化博物館に所蔵されている、江戸時代に出島で描かれた川原慶賀筆「ブロムホフ家族図」です。この絵は200年間未公開のまま人々の目に触れる機会がありません。私はこの作品を修復し、日本で初めて公開する文化事業に挑戦します。

現在の支援総額

1,090,500

15%

目標金額は7,000,000円

支援者数

32

24時間以内に4人からの支援がありました

募集終了まで残り

53

日蘭交流の記憶――川原慶賀筆「ブロムホフ家族図」修復プロジェクト

現在の支援総額

1,090,500

15%達成

あと 53

目標金額7,000,000

支援者数32

長らく公開されることのなかった一枚の絵があります。 現在、オランダ国立世界文化博物館に所蔵されている、江戸時代に出島で描かれた川原慶賀筆「ブロムホフ家族図」です。この絵は200年間未公開のまま人々の目に触れる機会がありません。私はこの作品を修復し、日本で初めて公開する文化事業に挑戦します。

【ペトロネラ・ムンス ― ティティアとともに日本を訪れたもう一人の西洋女性】

ティティア・ベルフスマは「日本を訪れた最初の西洋女性」としてよく知られています。しかし、実は1817年、ティティアとともに出島へ上陸した西洋女性がもう一人いました。それが、ブロムホフ夫妻の長男ヨハネスの乳母であったペトロネラ・ムンスです。

 私はこれまでペトロネラについて詳しく調べる機会がありませんでしたが、今回、オランダ王立芸術科学アカデミー(KNAW)傘下の Huygens ING が公開している『Digitaal Vrouwenlexicon van Nederland(オランダ女性人物辞典)』を読むことで、その波瀾万丈の人生を知ることができました。

 ペトロネラは1794年、ハーグで庭師の家に十人兄弟姉妹の五番目として生まれました。22歳のときに婚外子となる長男ピーテルを出産します。この出産によって彼女は授乳中となり、ヨハネスの乳母(wet nurse)としてブロムホフ家に雇われました。乳母とは、主人の子どもを自分の母乳で育てる女性です。

 1817年、ブロムホフが長崎出島のオランダ商館長に任命されると、ティティア、幼いヨハネス、そしてペトロネラは「アガタ号」に乗って日本へ向かいます。その際、自分の幼い息子ピーテルはオランダに残し、おそらく祖父母に預けたと考えられています。しかし、西洋女性の滞在は幕府に認められず、出島到着からわずか五週間余りで退去を命じられます。一家は1817年12月、日本を離れることになりました。

 帰国の航海中、ペトロネラは第二子となる娘アントイネッタ・ヤコバを出産します。この娘の父親については現在も判明していません。オランダの研究者の中にはブロムホフ説を唱える人もいますが、アガタ号の航海士であった可能性も指摘されており、決定的な証拠は見つかっていません。

 帰国後、ペトロネラは故郷ハーグへ戻り、1823年には第三子カタリナ・ウィルヘルミナを出産します。この子も婚外子でした。その後1835年、鍛冶職人アドリアヌス・ファン・ウィルヘンブルフと結婚しますが、結婚直前に二人の間に生まれた第四子は出生後まもなく亡くなっています。結婚の際、夫はカタリナを正式に認知しました。

 人物辞典には、夫婦は「無資産(onvermogend)」、つまり財産を持たない状態で結婚したことも記されています。裕福とはいえない生活の中で、ペトロネラは四人の子どもを産み育て、1842年、48歳でその生涯を閉じました。

 興味深いのは、日本人画家たちがペトロネラを繰り返し描いていることです。作品の中では、彼女は必ず青い縁取りの帽子をかぶって描かれ、ティティアと区別されています。また、ブロムホフとの親密な関係を想像させる図像も存在すると、この人物辞典は紹介しています。

ティティアばかりに注目が集まりがちですが、ペトロネラもまた、日本を訪れた最初の西洋女性の一人であり、日本人画家たちの関心を集めた人物でした。

 日本への渡航、鎖国下での退去命令、帰国航路での出産、そして四人の子どもを育てながら生きたその人生は、決してティティアに劣ることのない波瀾万丈の生涯だったと言えるでしょう。

 ペトロネラにも光を当てることで、1817年の出島で生きた人々の物語は、さらに豊かで人間味あふれるものとして見えてくるように思います。

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