
株式会社宇佐美修徳堂の宇佐美直治さんより、川原慶賀筆《ブロムホフ家族図》修復の進捗について、ご報告をいただきました。宇佐美さんは6月にオランダ・ライデンのオランダ国立世界文化博物館を訪れ、作品の状態調査と日本への輸送準備を行われました。
現地で確認したところ、《ブロムホフ家族図》には、絹の亀裂や欠損、汚れやシミ、彩色の剥離・剥落などが見られ、約200年の歳月による劣化が全体的に進んでいる状態でした。
ライデンでの現地作業では、まず額装の現状を記録するため、修復前の撮影、採寸および損傷調査を行いました。その後、額装を解体して絵画本紙のみの状態にしました。
解体の結果、本紙には裏打ちが施されておらず、絹の裏面から彩色を施す「裏彩色」の技法が、非常に良好な状態で残っていることが確認できました。
続いて、本紙の表面および裏面に付着していた塵や埃を、彩色や基底材である絹に影響を与えないよう、柔らかい刷毛や筆を用いて慎重に除去しました。また、脆弱になっている彩色部分には膠水溶液を塗布し、剥落止め(絵具の安定作業)を行いました。
その後、ダーン学芸員に作業等を確認していただき、日本へ輸送するための梱包作業を行い、ライデンでの作業を終了しました。
今後は8月に作品が京都の宇佐美修徳堂へ到着し、本格的な修復が始まります。
まず、蛍光X線分析などの科学的調査を実施し、使用されている顔料や制作技法について詳しく調べます。
9月からは、絹に付着した汚れやシミを可能な限り除去した後、薄美濃紙による第一回の裏打ちを行います。続いて、胡粉を混ぜた楮紙による第二回の裏打ちを施し、亀裂部分には細く裁断した和紙を貼って補強したうえで、第三回の裏打ちを行います。
裏打ち後は、和紙を張った下地に柿渋を塗布した「仮張り板」(乾燥版)に本紙を張って十分に乾燥させます。
これと並行して、額の組子下地を新調し、楮紙による六種類・九層にも及ぶ下張りを施すなど、日本の伝統的な表装技術を駆使した作業が進められます。
10月末頃には、修復を終えた絵画を下張り済みの額下地の表面に張り込み、裏面には無地の裂を張って京都での修復作業は終了する予定です。
その後、ハウステンボス美術館で最終的な額装の仕上げを行い、すべての修復作業が完了します。
約200年の時を経て、川原慶賀が描いた《ブロムホフ家族図》が、日本の伝統修復技術によって新たな命を吹き込まれます。修復された作品は、2026年11月13日からハウステンボス美術館で開催される展覧会「OTEMAE ― ブロムホフ 茶道を愛した異邦人 ―」で、いよいよ一般公開される予定です。
完成の日まで、ぜひ温かく見守っていただければ幸いです。



