
ブロムホフコレクションには、利休好と思われる桐木地丸卓が含まれています。
丸卓は、天板・地板ともに円形で、二本柱によって支えられた小棚です。千利休が好んだと伝えられる棚の一つで、炉・風炉のいずれにも用いられます。利休好の丸卓は、桐木地で仕上げられ、二本の柱が天板と地板の内側に付き、地板の裏には三つ足を備えるのが特徴です。
桐木地の白木のまま仕上げられた姿には、余分な装飾を排し、素材そのものの美しさを生かす利休の美意識が表れています。また、二本柱という軽快な構成は、台子のような重厚さとは対照的に、簡潔で伸びやかな印象を与えます。
ブロムホフコレクションに伝わる丸卓は、鰭板の一部に破損が見られるほか、天板裏には三本の角材が取り付けられています。これらが製作当初の構造なのか、あるいは後世の補強なのかは今の段階では不明ですが、約二百年にわたって伝えられてきた歴史を物語る痕跡でもあります。
私は遠州流を学んできたため、千家に伝わる棚物については、これまであまり深く接する機会がありませんでした。利休好丸卓も、よく見かける棚の一つという程度の認識でした。しかし今回調査を進めるうちに、江戸時代の利休好丸卓の現存例(表千家・三井記念館等)は決して多くないことに気付きました。
もちろん、これは私の調査の範囲での認識です。もし江戸時代の利休好丸卓の現存例や資料をご存じの方がいらっしゃいましたら、ぜひご教示いただければ幸いです。
さらに、この丸卓の存在は、ブロムホフが収集した茶道具が、当時長崎で行われていた千家系の茶の湯と深く関わっていたことを示す重要な資料でもあります。十九世紀初頭の長崎では、千家系の茶の湯が広く行われていたことがうかがえ、ブロムホフ自身も、そうした茶の湯に接していた可能性は極めて高いと考えられます。
この一基の丸卓は、長崎における茶の湯の広がりと、ブロムホフが触れた日本文化を静かに物語る、貴重な歴史資料といえるでしょう。
日本では使い続けられるうちに失われた実用の丸卓が、海外へ渡ったことで約二百年後の今日まで伝わっています。
※写真はオランダ国立世界文化博物館(NMVW = Nationaal Museum van Wereldculturen / Wereldmuseum)蔵 丸卓
「OTEMAE~ブロムホフ・茶道を愛した異邦人~」展プレスリリースhttps://www.huistenbosch.co.jp/.../pdf/260728_pr20.pdf
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