
前回、よろず小屋を「山の暮らしにふれる入り口」にしたいと書きました。この小屋を考えるとき、私たちがイメージした、二つの場所があります。
一つは、早川町内の多くの家に残る、小さな農作業小屋や納屋です。
そこでは、農具や山仕事の道具を置き、壊れれば修理する。収穫した豆や穀類を広げ、山菜を塩漬けにして保存し、味噌を仕込む。

作業の合間には、自家製のお漬物や煮物が並び、お茶飲みをする。作業もすれば、おしゃべりもある。
季節が変われば仕事が変わり、小屋の使われ方もそれに合わせて変わっていく。
一つの目的のためにつくられた場所ではなく、その時々の暮らしに必要な、よろずの仕事を受け止める、素朴で実用的な場所です。

もう一つは、集落で共有していた場所です。
水車小屋、豆腐小屋、共同水場、共同の釜場など、早川の集落には、それぞれの家では持つことが難しい設備を、集落で共有する場所がありました。
いつも大勢が集まって共同作業をしていたわけではなく、必要な人が順番に使う場所でした。そこで顔を合わせ、使い方を教え合ったり、一緒に手入れをしたりすることもあったのだと思います。

一軒の家では持てないものを集落で持ち、互いに使えるようにする。そこには、暮らしに必要なものを集落で共有し、支え合って使う「共同」の形がありました。
家々の農作業小屋が持っていた、さまざまな仕事を受け止める「よろず」の性格。集落の小屋や作業場が持っていた、一軒では持てない設備を皆で持ち、使い合う「共同」の性格。
私たちがつくろうとしている「山の共同よろず小屋」には、この二つの場所の姿を重ねています。
山から採ってきたものを、選り分け、洗い、必要な処理をし、保存する。
秋には干し柿を作り、冬になれば味噌や寒ざらし大根を仕込む。
正月前には餅をつき、蕎麦を打つ。

季節や、その日に集まった人たちに応じて、いろいろな仕事や学びを受け止める場所。
そこにあった、暮らしのさまざまな営みを受け止める場所と、一軒では持てないものを共有する仕組みを、今の暮らしに合った形でつくり直したい。
そして、一緒に手を動かし、知恵や技術を学び合う関係にもつなげていきたい。それが、私たちの考える「山の共同よろず小屋」です。
次回は、このプロジェクトの原点ともいえる、とある小屋での体験について書きたいと思います。



