
今日から7月!梅雨明けが待ち遠しい日々ですね。
今日は国際的な動きからヘアロスを考える話題をお届けします。
2025年5月24日、スイス・ジュネーブで開かれた第78回世界保健総会(WHA)で、ひとつの決議が採択されました。
「皮膚疾患を、世界的な公衆衛生上の優先課題として位置づける」
全加盟国が賛同したこの決議は、こんな言葉を含んでいます。「皮膚疾患は最も目に見えやすい健康状態のひとつであり、スティグマ(社会的偏見)・差別・精神的苦痛をもたらすことが多い」
この情報を読んだ瞬間、胸の奥に何かが刺さった気がしました。これは、ヘアロスも含まれる話だ、と。

「見た目の問題」ではなかった
円形脱毛症、先天性乏毛症、抜毛症。これらはすべて、皮膚疾患です。でも長い間、日本社会はこれらを「外見の悩み」として扱ってきました。保険適用なし。ウィッグの助成対象外。学校でのサポート体制もほぼゼロ。
「命に関わらないから」「美容の問題だから」という理由で、制度の外に置かれ続けてきた。でも実際は違います。
2021年にASPJが実施した実態調査(n=651)では、抜毛症当事者の43.6%が希死念慮を経験していることがわかりました。円形脱毛症でも22.5%。これは「外見の悩み」で片づけられる数字ではありません。

子どもたちのことが、まだ見えていない
ただ、私にはずっと気になっていることがありました。これまでの調査は、大人の当事者が中心でした。子ども自身が、学校でどんな経験をしているのか。保護者が、どれほど孤立しているのか。そこはまだ、データとして存在していない。
体育の授業でプールに入れなかった日のこと。
写真撮影の日だけ学校を休んだこと。
修学旅行の準備で、夜中に泣いた保護者のこと。
これは個人の体験談として存在しますが、「社会課題」として可視化されてはいません。
数字になっていないものは、制度を動かす根拠にならない。
だから私たちは今、子どものヘアロス実態調査を準備しています。子どもたちが学校でどんな壁にぶつかってきたか。保護者がどれほどの孤立と経済的負担を抱えてきたか。それを当事者自身のデータとして積み上げ、白書として社会に出したい。
データがあれば、制度は動く。大分市では2024年、全国初の「疾患名を問わない子どものウィッグ助成制度」が生まれました。当事者が議員に直接働きかけ、データと声で動かした結果です。
WHOの決議が示す「方向」
今回のWHO決議は、単なるシンボルではないと思っています。決議は各国に対して、皮膚疾患への対応強化、サーベイランス(実態把握)の整備、医療アクセスの改善を求めています。日本も加盟国として、この流れの中にいます。

「皮膚疾患は公衆衛生課題である」という国際的な認識が確立された今、日本の制度的な空白は、見て見ぬふりができない段階に来ています。ヘアロスも、皮膚疾患のひとつです。この流れの中に、確かに位置づけられています。
▶ 参照:2025年WHO・WHA決議(EB156(24)) 皮膚疾患はスティグマ(社会的偏見)・差別・精神的苦痛をもたらす公衆衛生課題として、全加盟国が対処を決議。
https://www.dermatol.or.jp/medical/news/11788/
https://www.who.int/news/item/26-05-2025-progress-for-ntds-two-resolutions-adopted-at-wha78

今年9月は8家族23名の子どもと保護者が集まります。
この合宿は、子どもたちの居場所であると同時に、当事者の皆さんのニーズや困りごとを深く見ていくスタート地点でもあります。「あの子が笑っていた」という記憶を、「こういう困難があった」というデータに変えていく、最初の一歩です。
世界が皮膚疾患を公衆衛生課題として認めた今、日本でヘアロスの子どもたちが制度の外に置かれ続ける理由はなくなりつつあります。
その未来を、データで作っていきます。
文:みつこ



