延岡で「助けて」と言えない子ども家庭を地域で支え続けたい。

宮崎県延岡市で5年以上続けてきた「子ども宅食」。食支援・見守り・相談支援を通じて、「助けて」と言えない子どもと家庭への継続的なつながりを届け続けたいです。

もうすぐ
終了

現在の支援総額

935,500

37%

目標金額は2,500,000円

支援者数

144

募集終了まで残り

6

延岡で「助けて」と言えない子ども家庭を地域で支え続けたい。

もうすぐ
終了

現在の支援総額

935,500

37%達成

あと 6

目標金額2,500,000

支援者数144

宮崎県延岡市で5年以上続けてきた「子ども宅食」。食支援・見守り・相談支援を通じて、「助けて」と言えない子どもと家庭への継続的なつながりを届け続けたいです。

十五章 「行きづらい」

実際に子ども食堂を始めると、想像していたのとは少し違った。

子ども以外の人も多く来た。困ってなさそうな家庭も来ていた。

それでもよかった。子ども食堂は、貧困家庭だけを選別する場所ではない。地域の誰もが一緒に食べられる場所であることにも意味がある。

ただ、本当に来てほしい家庭が来ていなかった。

ある母親に、「子ども食堂においで」と声をかけた。

母親は言った。

「行きづらい」

別の子ども食堂へ行ったことがあるという。

「予約制で断られた」

「遅い時間に行ったら、公民館の靴箱に弁当がぽつんと置かれていて、惨めだった」

「何を話すわけでもなく、タダで食べさせてもらっている気がした」

「子ども食堂って、貧困家庭が行くところでしょって、周りが言ってた」

食事を必要としていなかったわけではない。

必要だからこそ、行ってみた。それでも、支援を受けるために、自分たちが困窮家庭だと示さなければならないような感覚が、母親を傷つけていた。

場所を用意して「来てください」と言うだけでは、届かない人がいる。

支援を必要としている人ほど、支援の場所へ来られないことがある。



第十六章 待ってちゃダメだ

ほどなくして、新型コロナウイルスが広がった。

災害時の地域拠点としても期待されていた子ども食堂は、軒並み開催を中止した。

僕たちの子ども食堂は、それでも活動を続けた。ただし、会食は禁止された。できることは弁当の配付だけだった。

通常の子ども食堂よりも、多くの人が弁当を取りに来た。

「お弁当どうぞ」

「ありがとうございます」

たった、それだけだった。

弁当は渡せた。けれど、家庭が何に困っているのかは分からない。子どもの相談に乗れるわけもなかった。

弁当を手渡しても、関係まではつくれない。

来てもらうのを待っていてはだめだと思った。


「待ってちゃダメだ。こちらから行こう」


2020年12月。コロナ禍の真っただ中で、のべおか子ども宅食を始めた。

最初は十世帯だった。スタッフは二人一組になり、四台の車に分かれた。

フードドライブで寄せられた米、レトルト食品、お菓子、日用品。集まった品を家庭ごとに仕分けし、袋に詰め、車に積み込んだ。

届けるための食料がそろったとき、活動が始まったのではない。

その食料を持って、家庭の玄関まで行くと決めたときに、子ども宅食は始まった。



第十七章 こっちが、すみません

最初に訪問した十世帯のうち、九世帯が似たような環境だった。

真冬なのに暖房がついていない。昼間でも部屋が暗い。それでも電気をつけない。

一軒だけの特別な出来事ではなかった。

玄関が開くたびに、昔の自分の家が現れるようだった。


一緒に訪問した民生委員が、母親の前で言った。

「ここは寒いわね。暗いわね。階段が多くて大変ね」

母親は暗い表情で言った。

「すみません」

自分の暮らしを見られ、評価されたと思ったのかもしれない。

僕は慌てて取り繕った。

「そんなことないですよ。今日は割と暖かいし、お天気もいいし」

母親はもう一度、「すみません」と言った。

こっちが、すみませんと思った。


言った本人に悪気はなかったのだと思う。ただ、見たままを口にしただけだった。

けれど、僕には、中学時代の自分の家を馬鹿にされたように聞こえた。

「そんなことを言ってはダメです。寒くても暖房がつけられない。暗くても昼間は電気をつけられない。だから貧困なんですよ」

その人は、「なぜだめなのか」という顔をしていた。

善意で玄関まで行っても、言葉一つで人の尊厳を傷つける。

あの家が寒いことも、暗いことも、母親が謝ることではない。僕はそれを知っていた。布団をかぶって寒さをしのぎ、夜の七時まで電気をつけてはいけなかった子どもだったからだ。

訪問を終えて車に戻ると、スタッフ同士で話した。

「どこの家庭も厳しい感じだったね」

「意外なものを喜んでくれたね」

「今度は、こんなものを持っていこう」

最初から、次にまた行く話をしていた。

一度食料を渡して終わる活動ではなかった。


次回

第18章「別に」の向こう側

第19章 延岡にも本当のサンタはいるぞ

終章 僕は今日も玄関をノックする

へ続く。

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