
キーボードを打つ手を止め、ふと窓の外へ視線をやると、いつの間にか空は深い藍色に沈んでいました。
現在公開中のスピンオフ。
メロンソーダに落ちたさくらんぼで涙が出るほど笑い転げる、なぎと栞の無防備な日常。
琥珀色の西日のなかでシュワシュワと弾けるその黄金色の時間をテキストに起こしながら、私の心は、どこかひどく締め付けられていました。
彼女たちの他愛のない会話が透き通っていればいるほど。
その笑顔が、眩しいほどに鮮やかであればあるほど。
物語の紡ぎ手である私には、彼女たちがやがて辿り着く「結末」が、
鋭利な刃物のように痛く迫ってくるからです。
あんなにも優しく、太陽のように笑っていた彼女たちが、やがてこの光あふれる世界を投げ打ち、身を寄せ合うようにして向かう暗闇の「駅」。
そこには、生々しく、目を背けたくなるほど激しく切ない痛みが待っています。
美しく笑い合う彼女たちの過去を書き進めることは、同時に、
その残酷な未来へと彼女たちの背中を突き飛ばしているような錯覚を引き起こし、
時折、どうしようもなく息が苦しくなるのです。
「なぜ、そんな痛みを伴う運命を用意したのか」
と、問われるかもしれません。 けれど、誤解を恐れずに言えば、
それは絶対的な「救い」を描くためなのです。
泥だらけになって、すり減って、それでもなお暗闇の底を這いつくばった者だけが、
ようやく見つけることのできる光があります。
すべてを喪失したかのように思える深い夜の果て、冷たい鉄の匂いがする駅のホームのそのさらに奥で、彼女たちを待っているもの。
それは、痛みをくぐり抜けた先にしか存在し得ない、嘘偽りのない「希望」です。
激しく切ない結末の、そのもうひとつ奥底にある静かな夜明け。
それこそが、日々を戦い、傷つきながら現代を生きる人たちにとっての、「真の避難所(オアシス)」になり得ると、私は強く信じています。
僕自身が、激しい痛みと苦しみの先にみた
「物語による救い」
を皆様にも感じ欲しくて。
それがあって初めて「なぎのえき」は完成します。
今はただ、あの眩しかった日々の残り香を愛おしみながら。
彼女たちとともに暗闇のトンネルを抜け、その先にある小さな、けれど決して消えない希望の光を、どうか皆様と一緒に見届けることができますように。



