
人は、誰かと出会い、一緒に時間を過ごすことで、少しずつ変わっていくことがあります。これまで知らなかった考え方に触れる。自分とは違う生活習慣に戸惑う。うまく伝わらず、どうしたらよいか悩む。そして、相手のことを知ろうとする。そんな経験を重ねるなかで、自分の考え方や行動が変わっていくことがあります。Meet Up Home Sendaiで私たちがつくりたいのは、障害のある人と大学生が一緒に暮らす場所です。
でも、目指しているのは、ただ同じ家に住むことではありません。一緒に暮らす日々を通じて、一人ひとりにどんな成長や変化が生まれるのか。今回は、大学生と障害のある入居者、それぞれにとっての変化を考えてみたいと思います。
大学生にとって、何が変わるのか?
障害のある人と関わる機会が、これまであまりなかった大学生もいると思います。初めて一緒に過ごすときには、どう話しかけたらよいかわからなかったり、何を手伝えばよいのか迷ったりするかもしれません。自分ではよかれと思ってしたことが、相手の望んでいたことと違う場合もあるでしょう。そんなとき、相手のことを知らないまま「こうすればいい」と決めつけるのではなく、本人の様子を見たり、希望を聞いたり、別の伝え方を試したりする。
そうした経験から、少しずつ見えてくるものがあるはずです。例えば、相手のことを、自分の思い込みだけで判断しなくなる。自分にとっての「当たり前」が、誰にとっても同じではないと気づく。相手の希望を聞き、自分の考えも伝えながら、折り合いを探せるようになる。困ったときに、一人で抱え込まず、周囲に相談できるようになる。自分とは違う背景や価値観を持つ人と、自然に関わることができるようになる。
もちろん、同じ家で暮らせば、すぐにこうした変化が生まれるわけではありません。戸惑うこともあれば、距離を置きたくなることもあるかもしれません。それでも、一緒に暮らすなかで相手を知り、自分の考えを見つめ直す経験は、大学生活のなかだけでは得られない学びにつながる可能性があります。そして、その経験は、卒業後の仕事や地域での人間関係など、これからの人生にもつながっていくのではないかと考えています。
障害のある入居者にとって、何が変わるのか?
では、障害のある入居者にとっては、どんな変化があるのでしょうか。私たちは、障害のある人を「大学生が学ぶための存在」や「大学生に成長の機会を与える存在」として捉えたいわけではありません。障害のある人も、自分の希望や考えを持ち、自分の生活を選びながら暮らす一人の生活者です。
だからこそ、このシェアハウスで大切にしたいのは、大学生との関わりを通じて、障害のある入居者自身にも新しい選択肢や経験が生まれることです。
例えば、
自分の希望や困っていることを、相手に伝えてみる。
自分に合った伝え方や、相手との関わり方を見つける。
これまで接点のなかった人と、食事や趣味、日常の会話を楽しむ。
自分でできることや、自分で決めたいことを、周囲に知ってもらう。
誰かに助けてもらうだけでなく、自分が誰かの役に立つ経験をする。
もちろん、どんな暮らしや関係を望むかは、一人ひとり違います。みんなと一緒に食事を楽しみたい日もあれば、一人で静かに過ごしたい日もあるでしょう。新しいことに挑戦したい人もいれば、今までの生活を大切にしたい人もいると思います。
大切なのは、周囲が一方的に成長や変化を期待することではありません。本人が何をしたいのか、どんな暮らしを送りたいのかを大切にし、その人自身が選べる機会をつくること。それも、このシェアハウスで実現したいことの一つです。
「支援する人」と「支援される人」だけではない関係へ
誰かを支援するとき、私たちはつい「できないことを手伝う」「困っていることを解決する」という視点から考えがちです。もちろん、必要な支援や配慮は欠かせません。ただ、それだけでは、関係が「支援する人」と「支援される人」に固定されてしまうこともあります。一緒に暮らしていれば、関係はもっとさまざまな形になるはずです。
ある日は、大学生が料理をつくる。別の日には、障害のある入居者が自分の好きなことを教えてくれる。誰かが困っているときには、別の誰かが声をかける。でも、いつも誰かのために何かをしなければならないわけではない。一緒に笑う日もあれば、意見が合わない日もある。それぞれが自分の時間を過ごす日もある。
そこにあるのは、決まった役割だけではなく、一人ひとりの個性や希望、得意なこと、苦手なことです。誰かを支援するために一緒に暮らすのではなく、一緒に暮らすなかで、必要なときに支え合う。そんな関係を育てていきたいと考えています。
成長は、特別な体験の中だけにあるのではない
私たちはこれまで、大学生が障害のある子どもたちと過ごす体験や、ワークショップを通じて、さまざまな気づきが生まれる場をつくってきました。初めは戸惑っていた大学生が、相手の様子をよく見るようになる。自分の関わり方を振り返り、別の方法を考えるようになる。そうした変化は、実際に人と関わることで生まれてきました。
では、その経験を一日限りで終わらせず、毎日の暮らしの中に置いたら、どうなるでしょうか。朝の挨拶をする。食卓で何気ない話をする。掃除の分担について相談する。相手の生活習慣を知る。うまく伝わらなかったことを、もう一度話してみる。一つひとつは、小さな出来事です。けれど、そうした日常の積み重ねによって、昨日まで知らなかった相手が、少しずつ身近な存在になっていくかもしれません。
障害について知識を得ることだけでなく、目の前にいる一人の人を知ること。相手のことを知るだけでなく、自分自身の考え方や行動にも気づくこと。私たちは、そうした変化が生まれる環境を、シェアハウスという日常の中につくりたいと考えています。
一人ひとりの変化が、暮らしの外にも広がっていく
この家で生まれた経験が、シェアハウスの中だけにとどまらない可能性もあります。大学生が、大学の友人に暮らしの話をする。地域で出会った人と、これまでより自然に関わる。障害のある入居者が、新しい人間関係や活動に興味を持つ。そうした変化が、家の外にも少しずつ広がっていくかもしれません。もちろん、一緒に暮らしたからといって、誰もが同じように変わるわけではありません。すぐに大きな行動を起こす人もいれば、考え方が少し変わるだけの人もいるでしょう。
それでも、これまで接点のなかった人と出会い、関わり、自分の世界が少し広がることには意味があると考えています。社会が変わるというと、大きな制度や仕組みを変えることを想像するかもしれません。
でも、その前に、一人ひとりの中で変わるものもあるはずです。「障害のある人」とひとくくりにするのではなく、「あの人は、こんなことが好きなんだ」と知る。「どう接すればいいかわからない」と距離を置くのではなく、「まずは話してみよう」と思える。そんな小さな変化が、家の中から大学へ、地域へと広がっていくことを願っています。
変化を急がず、一緒に暮らすことから始める
Meet Up Home Sendaiは、2027年4月に、まず大学生3人の暮らしから始まる予定です。そこから生活を整え、住人同士の関係を育てながら、障害のある入居者を迎える準備を進めていきます。
最初から、理想的な関係ができあがっているわけではありません。お互いを知るまでに時間がかかることもあるでしょう。思っていたような変化が、すぐには見えないかもしれません。
だからこそ、私たちは、目に見える成果だけを急ぐのではなく、日々の暮らしの中で起きたことや、住人それぞれの声を大切にしていきたいと思っています。どんなことができるようになったのか。どんな考え方に気づいたのか。どんな関係が生まれたのか。そして、どんなことが難しかったのか。うまくいったことも、うまくいかなかったことも振り返りながら、この暮らしが一人ひとりにとってどんな意味を持つのか、確かめていきます。
私たちが目指しているのは、大学生だけが成長する場所でも、障害のある人だけが何かを得る場所でもありません。一緒に暮らす一人ひとりが、自分らしい生活を大切にしながら、お互いとの出会いを通じて新しい可能性に出会える場所。そんな日常を、住人と一緒につくっていきたいと考えています。
この家で、どんな成長や変化が生まれるのか。その過程も含めて、これから活動報告を通じてお伝えしていきます。Meet Up Home Sendaiの挑戦を、ぜひ応援していただけたらうれしいです。



