
みなさま、こんにちは。Cultiva代表の副田大介です。
本日から何回かに分けて、「テロワール」について私が考えていることを書いていきます。
Cultivaでも、「酒米テロワール」というコンセプトで酒造りをしています。
Cultivaの考える酒米テロワールのイメージ
テロワールとは、もともとワインの世界で使われてきた言葉です。
原料となるぶどうが育つ土地の土壌、気候、日当たり、地形、農家の栽培法などが、ぶどうの品質、そしてワインの風味に影響するという考え方です。
自然的な要因だと考えられているテロワールですが、ぶどうの栽培やワインの醸造、そして評価する人々の嗜好等の人的要因も大きく関わっています。
地域によっては畑単位まで細かく区分され、特定の産地と品種の組み合わせが、その土地のワインを特徴づけるものとして認識されています。
ただ、日本酒でテロワールを語ることには、実は否定的な意見も少なくありません。実際に私もこれまで多くの否定的な意見を見てきました。
その理由の一つは、日本酒では、原料の特徴がそのまま酒に現れるわけではないからです。
ワインの原料であるぶどうには、もともと糖や酸、そして特徴的な香りがあります。
一方、日本酒の原料である米は「穀物」です。米にも品種による成分や食味の違いはありますが、「果実」であるぶどうほど、原料そのものに分かりやすい香りや味があるわけではありません。
だからこそ、日本酒では、麹菌の力を借りて、米のデンプンやタンパク質を分解しながら、同時に酵母によるアルコール発酵を進めます。いわゆる「並行複発酵」です。
さらに、大量の仕込み水が加わり、製麹、酒母造り、温度管理など、人の手によるさまざまな操作が入ります。
つまり、
土地が変わる
↓
原料の品質が変わる
↓
酒の品質が変わる
という単純な関係ではありません。土地と酒の間に、非常に多くの変数が存在しています。
そしてもう一つ。
原料を研究してきた私が、日本酒のテロワールを考えるうえで大きいと思っているのが、「米を蒸す」という工程です。
ワインでは、ぶどうをそのまま醸造に用いるため、ぶどうに存在する微生物が、そのまま発酵系へ持ち込まれる余地があります。
一方、日本酒では、麹米にしても掛米にしても、まず米を蒸します。
そのため、米や人間を介して蔵の外から入ってきた微生物と、実際の醸造に関わる微生物との連続性は、ここで一度大きく断たれることになります。
だからこそ日本酒では、酒蔵の中に存在する酵母や乳酸菌などの「蔵付き微生物」が、土地や蔵の個性を考えるうえで注目されてきたのではないか。
これは、私自身がとても興味を持っているところです。
こうして考えてみると、日本酒でテロワールを語ることが難しい理由はいくつもあります。
・穀物ゆえ、原料そのものの特徴が見えにくい。
・麹や酵母、水、人の手など、多くの要因が酒質に影響する。
・米を蒸すことで、蔵の外から醸造への微生物の連続性も弱くなる。
でも、難しいことと、存在しないことは別です。
私は、この複雑さの中にある違いを、米を中心に見ていきたいと思っています。では、日本酒における原料から見たテロワールとは、そもそも何なのでしょうか。
次回は、私が考える「日本酒におけるテロワール」について書いてみます。



