
みなさま、こんにちは。Cultiva代表の副田大介です。
前回は、「なぜ日本酒でテロワールを語るのは難しいのか」について書きました。
日本酒は、ワインに比べて原料特性がそのまま酒に現れにくく、麹や酵母、水、人の手など、土地と酒の間に多くの要因が存在します。だから、日本酒でテロワールを語るのは簡単ではないし、否定的な意見も多いということでした。
そもそも、ワインの世界で育ってきた「テロワール(terroir)」という考え方を、そのまま日本酒に当てはめてよいのか。これについては、私の中ではまだ答えが出ていません。
ただ、テロワールについて学んでいくと、日本酒業界でこれまで当たり前とされてきた原料の捉え方について、いくつか疑問が見えてきます。
その一つが、酒米をどのような基準で評価してきたのかということです。

酒米は「扱いやすい米」であることが最重要
山田錦をはじめとする酒造好適米には、酒造りに適した優れた性質があります。
吸水しやすい。蒸した米が溶けやすい。精米しやすい。糖化と発酵を同時に管理する複雑な並行複発酵を安定して行うためには、とても重要な性質です。
『清酒製造技術』
日本醸造協会のページより
「清酒の製造工程は極めて複雑であり、工程管理が酒質の良否に直接影響するため、酒造用としての米の良否の判定も工程管理の難易に関係するところが大きい。」
日本醸造協会の『清酒製造技術』にも、清酒製造は工程管理が酒質に大きく影響するため、酒造用米の良否も工程管理の難しさと深く関係すると記されています。
つまり酒米は、長い間「どういう酒になる米か」だけではなく、「吸水性や消化性など、製造工程上、扱いやすい米か」という視点から評価されてきたということです。
もちろん、それには理由があります。しかし醸造技術や分析技術が発達した現在、扱いやすさだけではなく、酒になったときにどんな違いを生み出す米なのかという評価が、もっとあってもよいと思っています。
少し扱いにくくても、旨味の強い酒になる米。熟成させると面白い米。酒米としてほとんど評価されてこなかった地方品種や飯米。
「良い酒米」を扱いやすさという一つの物差しで決めるのではなく、異なる酒質を生み出す原料として米を見る。そうすると、これまで見えていなかった米の価値が見えてくるかもしれません。
酒米の品種が一部に集中してきたことも、この評価軸と無関係ではないと思っています。
全国で、同じ優れた酒米品種を使うことには大きなメリットがあります。一方で、それぞれの地域にある米を「どんな酒になるのか」という視点から評価しなければ、原料の多様性を酒の多様性につなげることはできません。
Cultivaが「米の違いを、酒の違いに。」と掲げ、山田錦だけでなく、飯米やさまざまな酒米を使ってきたのも、ここが出発点です。
では、品種だけでなく、その米がどこで、どのように育ったのかまで見ようとするとどうなるのでしょうか。同じ品種でも、産地や農家さんが変われば米は変わるのか。
そして、その違いは酒にも現れるのか。
次回は、Cultivaなりの「テロワール」について書いてみたいと思います。



