LITALICO研究所OPEN LAB主宰の鈴木悠平です。クラウドファンディング公開後、障害や病気のある当事者の方から、たくさんの応援メッセージをいただきました。
今日はそのなかのお一人、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)当事者の佐藤さんからのメッセージをご紹介します!
はじめに:
私は10年ほど前に筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)という病気を発症し、自宅療養者/電動車椅子ユーザーとなりました。
この企画を目にした時に「ほぼ全ての配慮が、自分が求めていて、でもなかなか得ることができなかったものだ!」と思って、本当に感激しました。
と、同時に元々健康なときには社会人向けスクールの運営事業に携わっていたこともあり、また会社を離れた後も疾患啓発関連で大小いくつかのイベント・講演会等を主催する側にまわる機会があり。「こうした配慮には、実はかなりコストがかかる」ことを身をもって実感しています。
また、こうした配慮の必要性というのは、健康な方になかなか伝わりにくいことも痛感しています。
しかし【社会的マイノリティ当事者を取り巻く状況を改善しようとするNPOや企業のサービスが、様々なバリアによりマイノリティ当事者を実質的に排除してしまう】現実に何度もなんどもぶつかって寂しい・悔しい思いをしてきた中で、今回のプロジェクトを知りました。
このプロジェクトが成功裏に終わることを切に願い、また障害や病気を持った人が必要な情報にアクセスする権利があたりまえに認められる世の中になることを願ってこの文章を書いています。
長文になりますが、ぜひ読んでいただきたいです。
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自己紹介:
私は筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者です。
2007年に発症、体調不良が続くも診断がつかず、2009年に当時在職していた職場を休職・復職できずに退職しました(その後2011年にME/CFS確定診断)。
その後フリーランス的な形での短期間就労を目指して療養をしていましたが、体調は悪化する一方で、結局就労はかなわず今でも自宅療養を続けています。
気候条件がよければ月に数度外出が可能ですが、筋力低下等のため外出時には電動車椅子が必要で、家事は全て家族に頼っています。病状は比較的重度の部類に入ります。
今は、体調が落ちて活動を休止していますが、2012-17年までは様々な形で筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の疾患啓発活動を続けていました。
https://cfstokyo2015.jimdo.com/
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筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)という病気について:
ざっくりと説明すると、下記のような病気です。
・原因不明の難治性疾患、根治療法なし
・少し動いだだけで生じる強度の疲労感・倦怠感が主症状(労作後の独特の不調を「クラッシュ」と表現することも)
・その他、微熱、頭痛、筋肉痛、脱力感や、思考力の障害、抑うつ等の精神神経症状などが長期にわたって続き、健全な社会生活が送れなくなる
・一般的な検査では異常が見つからない
(詳細な検査で、脳機能、免疫機能、自律神経機能、内分泌系評価等に異常が見つかる)
・自力で外出困難な重症患者が全体の3割(要補装具・介助、寝たきりに近い患者も)
・患者数は推定12-24万人程度
(患者数参考:2018年度のがんの部位別患者数1位の大腸がんが患者数15万、2位胃がん12万人)
症状を説明するのは難しいのですが、患者さんがよく言うのは
「ほぼ毎日がひどい風邪やインフルエンザにかかったときの具合悪さ・倦怠感・頭や体の動かなさで家事・仕事をやっている感覚(やろうとしてもすぐ動けなくなる)」
というような状態です。
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例えば…ME/CFS患者の置かれた環境:
「社会的マイノリティ」といっても様々な立場の方がいらっしゃるので、私自身の例を取り上げてみたいと思います。
「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」という病気の患者は、下記のような状況下に置かれています。
・病気の原因が未解明、客観的診断基準(血液検査など数値でわかるもの)がない
・病態が複雑なため診断・研究に携わる医師が増えない(全国で10数名)
・鑑別診断できる医師が少ないので、ME/CFSと判明するのに時間がかかる
診断されても、
・疾患・病態の世間的認知が低く、就学・就労の際に必要な配慮が受けにくい
・客観的診断基準がないことなどからME/CFSは「指定難病」になっておらず、医療費や福祉の助成が受けにくい
・障害年金・障害者手帳等取得に必要な診断書を書ける医師が少なく、申請しにくい
根治療法がないので、せめて必要な支援を得てなんとか回復に望みをつなごうと思っても、申請しにいった窓口で「そんな病気には適用されない」などと言われて用紙さえもらえないという笑えない話も多々聞きます(実際に私も経験しました…)。
患者を取り巻くこのような環境を改善していくには、もちろん
・国・地方自治体への訴え
・医師への働きかけ
が必要です。しかし、それだけではなかなか現実は変わっていきません。
本当はもっと幅広く
・学校
・企業・産業医
・社会保険労務士、社会福祉士といった支援者
といった関係者にも直接認知を広め、必要な配慮が得られた事例を増やし、共有していかなければなりません。
個別に対応してうまく配慮を得られてもその過程が知られなければ、また違うところで新しい患者が同じ困難に直面しなければならないのです。
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「支援を考える」場に、当事者が参加できない:
私の場合は、自分自身の職歴から比較的企業人事といったあたりと接点が多かったり、異業種のコラボレーションの取り組みを目にする機会も多くありました。外部のセミナー・イベントに参加したり、キャリアコンサルタントの資格取得のスクールに通ったりして、情報収集をしたり人脈を広げていくことが認められやすい環境で働いてきました。
そのため、病状が安定し、電動車椅子を入手したあたりから「ME/CFSの現状改善につながりそうな」イベントを探しはじめました。都内のアクセスのよい場所に住んでいるため、実際に行ける範囲で行ってみたいイベントが数多く見つかりました。
しかし、月に最大数回しか外出ができない体調調整の難しさもさることながら、それ以外の様々な理由で「申し込みができない」ことが多々ありました。
・人数限定のため、当日ドタキャン不可
→電動車椅子と体力低下のため、雨・雪の日は外出が難しい。また気温・気圧等の変化で前日まで体調がよくても、当日の天候次第でどうにも外出できないことがある。
・会場もしくは移動途中の駅にエレベーターがない・階段/段差がある
→筋力低下と動いた後の症状悪化(極度の筋肉痛・倦怠感・風邪様炎症感等が発生)のため徒歩移動だけでなく階段昇降が困難。
・音響環境がよくない
→強い自律神経失調から多少聴覚過敏があり、負荷がかかると強くなる
・途中退席NG
→電車移動や講座聴講程度の負荷でも、突然調子が悪化することがある
・写真撮影NG/手元資料なし
→内容によってはやむを得ないとは思うが、動くと症状が悪化し目がかすんだり、認知機能が落ちて言葉が頭に入りにくくなる(外国語を聞いているような感じ)
手書きが筋力的に厳しいので、PC等を持参してメモしやすいようにはしている。しかし後で質問するときなどのために、退室前に削除するならOK等だとありがたい
体調の急変がありうるので、できるだけ負荷の少なく、途中退席・休憩が可能な状況が望ましい
いつも気になる講演・イベントを見つけたときには実際に申し込む前に、まずイベントの申し込み条件をチェックし、会場と会場までの移動区間のバリアフリー状況を確認します。問題がありそうな場合には電話やメールで問い合わせをし、了承を得てから参加申し込みをするようにしています。
しかし、問い合わせをした際に「こんなに外出が困難なのに、なぜここまでイベントに参加しようとするのか?」といぶかるようなそんな反応を受けたことも一度ではなかったのが事実です。
なんでもかんでもすべてが整っていてあたりまえ、と思っているわけではありません。
冒頭に書いたように、自分自身が講座運営に携わっていたのでそうした配慮に相当のコストがかかることも知っています。また会場費を抑えるために公共の施設を予約すると、施設が古かったりと意外とエレベーターを備えていないことが多いことも、発症後に講演会等を開催してわかりました。
また、もしかしたら今までは「当事者支援」のイベントに「重度(電動車椅子使用など)障害者」が来ることが少なかったのかもしれません。
それでもなんらか「マイノリティ支援」をうたっているイベントで、バリアフルな状況になっているのを目にすると、とても複雑な気持ちになります。
「なぜ当事者が参加できない状況になっているのだろう」、と…。
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今回のクラウドファンディングへの想い:
そう思っていた中で、このクラファンを知りました。
「株式会社LITALICO」さんという、すでに障害のある方の就職支援や子どもの発達を支援する教室の運営といった分野でのファーストランナー的存在である会社が今回のクラウドファンディングを実施していると知り、とてもうれしくなりました。
(別の見方をすると、クラウドファンディングでの費用建が必要な程度にまだメジャーではない、とも言えますが…)
今回のプロジェクトを見ると、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)患者の私ひとりに取ってみても、掲げられた5つの配慮のうち4つが「私のための配慮だ!」と思えるようなものになっています。
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①社会的マイノリティ領域への興味・関心の輪を広げる
②遠方の方も聴講ができるようオンライン受講制度
③障害・病気による聴講の困難さへの環境整備
④経済的に困難な方向けのスカラーシップ制度
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最近はデジタルデバイスも発達してきました。音声の文字書き起こしや、動画配信等も10年前よりずっと手軽にできるようになっています。
2020年のオリンピック・パラリンピック東京開催に向けて、障害者スポーツやその競技者の環境が以前より多く取り上げられるようにもなっています。
今回のクラウドファンディングが成功し、その取り組みが多くの方に知られることによって、マイノリティのための合理的配慮がより「あたりまえ」のこととなり、主催者側にとっても負担が軽いものになっていくことを、心から願っています。
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佐藤さん、応援のメッセージをありがとうございました!
佐藤さんのように、外出や受講に困難のある方もオープンにアクセスできる知のコミュニティづくりに向けて、ぜひともクラウドファンディングをご支援ください。
どうぞよろしくお願いいたします。
https://camp-fire.jp/projects/view/132015