2019/10/04 00:38
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薬を否定も肯定もできない。その不確実性に耐えることしかできないんです
ジャーナリスト 月崎時央
◆ゆっくり減薬のトリセツ を作ったわけ
冊子『ゆっくり減薬のトリセツ』は症状がすでに安定している人に減薬を進めるための冊子ではありません。
向精神薬をたくさん服薬していて、そのために調子が悪いのかもしれないと感じた人が、できるだけ慎重に薬の調整をするための経験者の試行錯誤をまとめたものです。
とりあえず私がこの冊子をクラウドファウンディングで自費出版したのは、できるだけ目の届く範囲で情報を発信したかったから。私は知らないところで情報が独り歩きするかもしれないマスメディアで結構長く仕事をしてきたけど、もうそれは引退でいいかなあと思って・・・。
約30年前きょうだいが精神病になって以来25年間、精神疾患というのはどの診断名がついても大変な慢性疾患で一生薬は飲まなきゃいけないらしいと信じていた。そういう気持ちで精神保健福祉の取材をしてきたし、精神医療改革も私なりに支援するみたいな立場にいた。
だけど4年前に、重症の精神疾患だったという方が薬をやめて今元気になっていることをわりと長時間丁寧に話してくれて、私の頭の中に、すごいパラダイムシフトが起「薬が逆効果のこともある?」
「止められる人がいる?」「治っている人がいる?? 」そしていっぱい薬の本を読んだ。海外ではずっと昔に言われていた向精神薬の問題。
全然知ろうともせずにスルーしてきたジャーナリストとか名乗ってたおバカさんな私。
それから向精神薬や減薬のことを取材するようになったら、今度は「薬は全部毒だ!」と言う人に会うことになった。そういう中には「薬を飲んでいる人は弱い人、甘えている人だ」とまで言う人も時々いる。
それを聞くとそれまでの人生でであった私の大切な友達、薬を飲みながら結婚した仲良しのご夫婦、結婚して可愛い赤ちゃんを授かった当事者の方とか、みんなの顔が思い浮かんで「そんなこと言わないでほしい」と思った。
3年前に、きょうだいにうっかり減薬を勧めてしまったら強いベンゾジアゼピンを一気断薬して、大混乱になり、きょうだいが医療保護入院で2ヶ月近く拘束されるという酷い目にあった。人生で最悪の事件の1つだ。
でも、きょうだいは元どおり多剤を飲んで、退院後復帰しなんと今は元気に週5で働いているのです。
だから薬が本当にどんな効果とリスクを持っているのか、取材すればするほど本当によくわからないのです。
1つだけわかるのは人によってすべてがすごく違うということ。
そして薬で症状が悪化している人は確実にたくさんいて、その人は慎重にやれば減薬してかなり回復する可能性があると私は思っているのです。
「私は一気断薬してもちょっと離脱があっただけで大丈夫だったから薬なんて早くやめるにこしたことない。さっさとやめなさい」とかいう人もいれば「医師のいうことを聞いて1つの薬を一気にやめたら身体中に激痛が起き立つことも辛い。再度服薬しても効かない寝たきりになりそう」という方もいる。
そういう中で、「早くやめた人が偉い」とか、「やめられないのは根性がないからだ」とか、「離脱なんで気のせい」とか、またもやいろんなことを言う人が存在することは悲しいな。
私は真逆に見えるかもしれない薬を巡るその一つ一つの話ってみんな本当だと思う。その人にとっての真実。人は自分の経験でしかものを判断できないことが多いから、身体感覚に関する判断はその人の感じ方を含め固有のもので一律のメジャーでは計れない。
私はジャッジできないし。1つ1つの物語を丁寧にそのまま聞くことしかできない。
「早くやめてすっきりしたんです」という人には「そうですかよかったですね」といい、「離脱が起きないように5年計画で減薬します」という方には「そうですか。大変丁寧な計画ですね」とどちらにも敬意を表する。だってどちらも本当にすごいよね。
そして自分が世の中に何かの情報を発信するときには、できるだけリスクの少ないことを発信したいと思う。なぜなら、本当に薬の影響は千差万別で薬の調整に1つの方法論はなさそうだし、今の所、薬のネガティブな影響を誰が強く受けるのかが予測できないから。
だからとにかくもし減薬するなら「ゆっくり計画的に」をコンセプトにしたい。計画なら途中で変更も可能だし。
◆ 異なる意見を持つ人も安心して薬のこと回復のことを語れる場に
そして薬についてどんな意見を持つ人も、一緒に互いの異なる経験を認め相手を尊重しながら、対話し合える場を作りたいと思う。
だって、みんなあんなに辛い思いを乗り越えてきた仲間だからさ!11月3日はそんな場にしたい!よかったらみんなで来てね。
https://camp-fire.jp/projects/view/178024