不思議なことに、
みゆこがお肉になって来た時、
もう生きてるみゆこは居ない現実に
悲しい気持ちも、ごめんねという気持ちも湧きませんでした。
冷たい奴だなーと思いますか??
私が感じたのは、
たぶんお肉屋さんとして芽生えた使命感でした。
400キロ以上のお肉を前にして、
「やるしかない!」
「やりきったるぞ!」
気合と覚悟で身が引き締まる思いでした。
そう、生きてるみゆこは居ないけど
目の前ではみゆこが私を待って居るのです。
みゆこをさばいていく間、
私がどんな気持ちで、
何を考えて、
何を感じながら包丁を握って、
文字通り「力いっぱい」みゆこに向かっていたか
もし良ければ想像してみてください。
私は枝肉を前にして、悲しい気持ちにはならなかったけど
何も感じていなかったわけでもありません。
長女の私の性格が関係するのかは分かりませんが、
この子を絶対美味しく食べてもらうんや!
という使命感と
この子はどこに出しても恥ずかしくない子です!
という謎の母性をビンビンに感じながら
慎重かつ大胆に
さばき続けること約12時間。
日付が変わる直前までかかってやっと長い1日が終了。
思い通りに包丁が入ってくれない時も、
何回包丁を通しても骨がビクとも動いてくれない時もありましたが、
もー嫌やー!
じゃなくて
みゆこ〜お願い〜、と一緒に解体を進めているような、不思議と優しい気持ちでみゆこと向き合いました。
そして大方の脱骨を終えたその晩。
あぁー疲れたー!
とゲッソリしながらアカップルさんが撮ってくれたみゆことの写真を見返しました。
ここで初めて。
泣いちゃいました。
みゆこが居なくなって悲しいんじゃなくて。(居るしね笑)
他の誰の元でもなくて、
私の元へ来てくれたこと、
まだまだ技術は追いつかないのに
気持ちだけで進んでしまう私の
はじめての一頭になってくれたことに
写真を見ながら「ほんとにありがとう、あんたはええ子やな」って思えてきて...
しかも、みゆこはなんと"A5ランク"という最高の格付けまで背負ってきてくれたのです!!
みゆこをさばけて良かった。。。
めでたしめでたし。
じゃないんです!!!
さばいて感動して泣いて終わってる場合じゃないんです、私!!笑
リアルな話、
売らないと!!ですよ!
美味しく食べてもらえなきゃ、
私がどれだけ綺麗にさばけたところで
何の意味もありません。
みゆこをさばき始めたこの日から、みゆこの素晴らしさ、みゆこを育ててくれた竹内牧場さんの素晴らしさを伝えていくため、
私とみゆこの二人三脚が始まったのです。