「きちんと話を聞いてください。
記者は私に話を聞くこともなく、管理がずさんだったようなニュースにして、
勝手な情報ばかりが拡散されている」
福島県田村市都路、2019年の台風19号の被害で放射性廃棄物のフレコンバックが流出した岩井沢の現場。撮影後に車へ戻る途中で、体格の良い作業着の男性に呼び止められた。
彼は仮置場を管理する地元土建業者の社長だった。
岩井沢の仮置場には2667袋のフレコンが置かれていたが、そのうち15袋ほどが古道川に流出したとみられ、そのうち10袋をが回収された。
「フレコンの山に防護シートをしていなかったため、記事ではずさんな管理が原因で流出したように書かれていますが、そうではないんです。」
これまでは黒いフレコンの山に緑の防護シートかけて保管していたものの、ひと月前から大熊の中間貯蔵への運び出しが始まったため、シートを撤去していたそうだ。
台風対策のために防護シートをかけるにも、専門業者に依頼すると少なくとも2週間はかかるので、急速に勢力を拡大した台風19号に対応できるはずもなかった。
雨が降り始め1時間おきに巡回して見まわり、10月12日夜10時には問題なかったが、その1時間後には仮置場が水没し、近づくこともできなかった。
溢れたのは仮置場に沿って流れる幅40cmほどの農業用水路。
「小さな水路を流れる雨水が1トンもの袋を流すなんて思わなかった」
「管理がずさんのように言われているが、仮置場の土地は私が所有する田んぼを貸しているもの。しかも私の会社が管理をしているのですよ。」
この時、郡山から丸森までの阿武隈川周辺を取材したが、報道される郡山や本宮だけでなく、福島の田村市から宮城県の角田市や白石蔵王に至るまで阿武隈川とその支流では通り過ぎただけでも数十箇所の冠水被害があった。
山の斜面から流れ落ちたり、川底に溜まったセシウムがふたたび拡散された可能性は高い。
飯舘村の仮置場からも、またもやフレコンが流出した。
これは管理する一業者の問題ではない。
放射性汚染物質が残存する限り、今後も自然災害などによる二次汚染は繰り返されるだろう。
(追記)その後、20袋の流出が確認され、19袋は回収された。回収した19袋のうち8袋の中身は無事だったが、残り11袋は破けて、中身が流出した空っぽの状態だったようだ。。
環境省は台風19号の影響で福島県内の仮置き場4カ所から計54袋も河川に流出したことを公表した。
野田雅也(共同監督)